- 著者
- 伊与原新
- 発売日
- 2021年6月24日
- ページ数
- 368
全6編を収録したこの短編集は、それぞれに多彩な魅力に富んでいて、単行本発売以来、どれも人気を集めています。いわばハズレのない短編集なのですが、とりわけ人気の高いのは「エイリアンの食堂」。 舞台はつくば市にある食堂。ここは妻を亡くした男が切り盛りする定食屋なのですが、「エイリアン」とは、そこに来る風変わりな女性客。毎晩決まった時刻に来店しては、ひとりで定食を注文する。男の一人娘の鈴花はひそかにあだ名をつけるのですが、はたしてこの女性の素顔とは。作品のごく一部をご紹介します――。 プレアさんはもとの澄まし顔に戻り、ルーペのひもを首にかけた。 「(前略)これさえあれば、わたしは、どこにいても大丈夫」 「どこにいても?」 「そう。ジャングルでも砂漠でも、工場のラインでもネオン街でも。このルーペをのぞけば、そこにわたしの本当の居場所が見える。これをもらった頃のわたしに戻れる。わたしがわたしでい続ける勇気をくれる」 毎晩ひとり、定刻に定食だけを食べて帰る「プレアさん」は、世間的には孤独な女性にみえます。でも、読み進めるうちに、「ある情熱」が彼女の芯に燃えているのがわかってくる。そして、すべてが明らかになるとき、登場人物たちはみな、今まで想像もしなかった関係性のなかに、自分を発見することになるのです。 他の5編もふくめて、人物たちの変化に心うるおう物語ばかりです。お楽しみください!