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書評 翆雨の人 科学技術って何だ

五十路のおじさん、ばっどです。

翆雨の人
伊与原新

「藍を継ぐ海」で直木賞を受賞された著者の受賞後第1作。
著者の講演会で購入してサインもいただきました。。

お話もすこしさせていただけました(喜)

女性科学者(研究者)の嚆矢であり、猿橋賞にその名を遺す猿橋勝子氏をモチーフとした伝記フィクション。
この本を機に猿橋氏を知った方も多いと思われるが、自分もその一人。

猿橋氏は何かを作り出したりするというより、キッチリ調べるエキスパートになった方。
その来歴は「そうじゃないほうのSF作家」である著者こそが描くべき人物という印象です。

伊与原作品はどっちかというとパーソナルなモヤモヤのお話が多い印象。
そこに「八月の銀の雪」中の一遍、「十万年の西風」。
社会問題にタッチした内容に、ばっどは「お?」と感じていたのですが、本作はそこからさらに「科学の何たるか」に踏み込んだようなお話。

人の生きようを科学で彩るのではなく、人を通じて科学とは何か、人にとってどうあるべきかを問いかけてくるような内容です。

猿橋氏は科学者としてアブラが乗り切った時期に、その力を核兵器問題にぶつけることになります。
キッチリ測定して、隠さずに示すことで人々に判断の根拠を持ってもらう。
これは非常に大事なこと。

福島第一原発の処理水を海洋放出する際、「それはエエのか」ということが世間でも議論になりました。
マスコミの報じ方は「IAEAの基準以下だから大丈夫」と言い方でしたが、定量的に「自然界の水に対して、少なくとも数値的にはこうだから大丈夫なはず」という、科学的なデータがあればマシだったのかもしれません。
それでも前例のないことなわけで、100%安心と言えないことも併せ伝えるべきでしょう。
定量的なデータに基づく。わからんことはわからんという。
これをトバして「安全・安心」という説明をしても、人の気持ちに届かないことが多いはずです。

科学の力をひとの幸せに使うということは皆考えているのかも知れません。しかし誰が幸せになるのかと、何が幸せなのかは立場によって少しずつ変わると思います。
行政側の人は科学的な事実を曲げたり隠したりだけはしないようにして欲しいなと、原発再稼働とかリニアのトンネル工事とか見てると思ってしまう。
本作を読んでその思いを強くした次第なのです。

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