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わたしの本棚/伊与原新作品

小説『オオルリ流星群』に出合って以降、伊与原新さんの本を何冊か読みました。読んだ順に感想を書いていきます。


1、月まで三キロ

私は短編集というのがあまり好きではない。長編に比べると、没頭する間もなく終わってしまう印象があるからだ。ただ、伊与原さんの小説で多くの人がおすすめしていること、そしてまたもやタイトルに魅かれて手にすることになった。どうやら自分は月や星に弱いらしい。

本には6つの物語が収められている。1つめが、本のタイトルにもなっている『月まで3キロ』である。何もかも失った男が偶然乗ったタクシー。ラストに向かって浮かび上がる真実に胸が苦しくなった。静まり返った夜道から慟哭が聞こえてきて、自然と涙がこぼれる。1つめにして心を掴まれてしまった。

どの物語も器用な生き方のできない人物たちが登場し、ネガティブ人間には共感度が高い。ラストで少しだけ希望が差す終わり方も好み。『エイリアンの食堂』では、恋愛感情が動くのかが絶妙なところで示されないのだが、余韻だけでなんだか幸せな気持ちになる。そしてラストの『山を刻む』は、読み手の想像を見事に裏切るラストでとても爽快な気分になる。やられた。

月や雪、宇宙の話を、ままならない人生に落とし込んだ物語は、心に温かく沁みこんでいく。自然と何度も読んでしまうのだった。

2、ブルーネス

東日本大震災後に地震研究所を辞めた主人公・行田準平が、どこへ行っても異端児扱いされる面々と出会い、あるプロジェクトに挑む物語。約450ページ(文庫本)の長編で、地震や津波に関する専門用語が飛び交うにも関わらず、知識のない私でも読み進められる力強さがある。登場する研究者たちの熱量が伝わってきて、そのシーンが頭の中で想像できるからだろう。

こうなるとドラマ好きの血が騒ぐ。例えば“ゴットハンド”と呼ばれる照井は間違いなくでんでんさんだし、血気盛んな汐理はファーストサマーウイカさまで脳内変換。自分は無力だと打ちひしがれていた研究者が、「津波監視システムを実現させる」という目標を達成するために、ときに挫折を味わいながら情熱を傾ける。実験に実験で手に汗握る場面も多く、いい日曜劇場ができると思う。ただ、映像化が難しいかもしれない⋯⋯。

3、藍を継ぐ海

この作品も短編集で、5つの作品が収められている。どれも地域性の高い内容で、九州在住の私は「夢化けの島」と「祈りの破片」に強く惹かれた。文化や研究は決して脈々と受け継がれているわけではなく、途切れた糸を手繰り寄せていく出会いや執念によって、再びスポットが当てられることもある。そんなストーリーだった。

特に後者は、よからぬ事件でも起きるのかというミステリアスな要素を入口にしながら、原爆投下直後の長崎で、研究、というより記録することで後世に伝えようとした人間の熱意が、時代を超えて継承されていくという物語。まさにその現場を生で見ているような気持ちになった。あとがきで、実在の方から着想を得て書かれたと知って納得した。

5つとも地域の文化や歴史を丹念に調べ、取材しなければ書けないもの。作者自身の熱意がとても伝わってくる作品である。

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以上、3冊を読みました。そして今、『八月の銀の雪』を読んでいます。本当は『宙わたる教室』を読むつもりだったのですが、いまだにドラマの印象が強いため、もう少し時間を置いてから(笑)。


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