余韻を残す~伊与原新著『月まで三キロ』
映画にしてもドラマにしても、
物語には必ず結末がある。
ハッピーエンドなのか?
バッドエンドなのか?
どちらかを視聴者や読者にゆだねるという結末もある。
映画でいえば、
『卒業』や『クレイマークレイマー』
(どちらもダスティーホフマン主演)
古いTVドラマだけど、
『高校教師』(真田博之・桜井幸子主演)みたいな、
最終的に、ハッピーエンドなのか、
バッドエンドなのか、読者にゆだねる終わり方。
最近の映画やドラマは、こういったモヤモヤ感は、
少ないような気がする。
制作された当時の時代背景が影響しているとも思う。
ただ、今の時代だからこそ、
こういう余韻が残る作品は、
想像力を掻き立てる事を考えるなら、
必要なものであると思う。
作者は読者に主人公のその後をゆだねる。
これは、読者への挑戦状でもある。
読者の感情いかんで、作品のイメージも価値も変わってしまう。
ただその部分も含めて、作品を考えてもらえるのは、
作者冥利に尽きるのではないだろうか。
伊与原新著『月まで三キロ』を読んだ。
表題作を含めて6編の作品集である。
6作品とも主人公たちのその後を読者にゆだねる作品。
要は、余韻を残してある作品ともいえる。
このような作品は、読み終わった後、
脳内はフル回転となる。
その後の主人公たちに想いを込めて、
想像力を巡らせる。そして自分の中へ印象を焼き付ける。
その作業を6回繰り返す。
そんな読み方が新鮮であり、
読み終えた感想を他の読者と話したい気分となった。
そんな事を思っていて思い出したのが、
『卒業』であり『クレイマークレイマー』だった。
高校生の頃見た映画なのだが、
一緒に映画を見た友達と、主人公の二人は幸せになったのだろうか?
想像力を働かせて、話をした記憶がある。
当然、想像上でしかその後は語れないので、
決着はつかないのだが。
実は、この『月まで三キロ』は、
読書に目覚めた、愛娘のおすすめの作品。
『新潮文庫の100冊』に入っている作品でもある。
娘は何を思ってこの作品をおすすめしたのか?
読んでみて思ったことは、
作品の中の主人公たちのその後を、
話したかったのではないか?いや、そうに違いない。
何故なら、私もそう思ったからだ。
まだ、娘とは主人公たちのその後を話してはいないが、
娘の想像を聞いてみたくなった。
まさに、作者の思惑通りの展開なのだろうが、
不思議と悔しいとは思わない。
まさに、この作品が素晴らしいということの証であるといえる。

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