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慰安婦論30):「従軍慰安婦」等の表現に関する質問・政府答弁のAI分析

令和三年四月十六日提出
質問第九七号
提出者 馬場伸幸


1) 質問主意書(令和三年四月十六日提出:馬場伸幸衆議院議員・日本維新の会)

「従軍慰安婦」等の表現に関する問題の解決は、重大かつ喫緊の課題である。

平成四年の政府調査等では、慰安婦に関して軍や官憲による強制連行を直接示す資料は見つかっていないにもかかわらず、これまで「従軍慰安婦」の用語は、千田夏光氏の著書(昭和四十八年)以降世の中で広く使われており、その結果、あたかも女性たちが強制的に連行され、軍の一部に位置付けられていたとの誤った理解を日本国内のみならず国際的にも与えてしまっているとの問題があり、今後、政府としてこの用語を用いることは適切ではないと考える。その意味で、本年二月八日の衆議院予算委員会で加藤官房長官「近年、政府においては、慰安婦という用語を用いており、従軍慰安婦という用語は用いておりません」と答弁されたことは高く評価する。

また「いわゆる従軍慰安婦」の用語も、平成五年八月四日の河野官房長官談話をはじめ広く使われている。菅内閣が同談話を継承して、そこで表現されているお詫びと反省の気持ちを引き継ぐことは十分理解するので、同談話そのものを見直すことは求めないが、「従軍慰安婦」の前に「いわゆる」を冠することは、先ほど述べた誤った理解を正すことにはならず、むしろ間違った印象を更に広めてしまう懸念があり適切ではないので、今後この用語を政府として用いることは適切でないと考える。

以上を踏まえ、次の事項について質問する。

一 政府として、平成五年八月四日の河野官房長官を継承するのか、改めて政府の基本的立場を示されたい。
二 政府はなぜ平成五年八月四日の河野官房長官談話において、「従軍慰安婦」という用語を使用したか
三 「従軍慰安婦」という用語に、軍より「強制連行」されたかのようなイメージが染みついてしまっていると考えるが、近年、政府としてこのような「従軍慰安婦」という用語を使用していない理由は如何。
四 今後、政府として、「従軍慰安婦」「いわゆる従軍慰安婦」との表現を用いることは、不適切であると考えるが、政府の見解は如何。従軍慰安婦という用語を使用しない場合であっても、例えば、軍や軍からの要請を受けた業者との関係を明らかにせずに、単に女性たちが「慰安婦として従軍させられた」といった表現を用いる等、「従軍」と「慰安婦」を組み合わせた表現を使用することも不適切であると考えるが、政府の見解は如何。


2) 政府答弁(令和三年四月二十七日閣議決定)

衆議院議員馬場伸幸君提出「従軍慰安婦」等の表現に関する質問に対する答弁書
内閣衆質二〇四第九七号
令和三年四月二十七日
内閣総理大臣 菅 義偉

衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員馬場伸幸君提出「従軍慰安婦」等の表現に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員馬場伸幸君提出「従軍慰安婦」等の表現に関する質問に対する答弁書

一について 政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話(以下「談話」という。)を継承しているというものであり、談話について見直すことは考えていない

二について お尋ねについては、談話作成のプロセスを含め、様々な情報が存在するものの、政府として、談話作成時の意思決定の詳細について、これ以上明らかにすることは困難である。

三について 「従軍慰安婦」という用語については、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示す記述が政府が発見した資料の中になかったこと等から、誤解を招くおそれがある。

四について 政府としては、「従軍慰安婦」という用語を用いることは適切ではない。また、「いわゆる従軍慰安婦」という用語についても、誤解を招くおそれがあることから、政府としては使用しないこととしている。御指摘の「従軍」と「慰安婦」を組み合わせた表現についても、同様に誤解を招くおそれがあることから、政府としては使用しないことが適切であると考えている。

いずれにせよ、引き続き、政府としては、国際社会において、客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成され、我が国の基本的立場や取組に対して正当な評価を受けるべく、これまで以上に対外発信を強化していく考えである。


3) 分析と背景

馬場伸幸衆議院議員の質問主意書と、それに対する政府の答弁書は、慰安婦問題をめぐる日本政府の歴史認識、特に用語の使用に関する姿勢を明確にする上で重要なやり取りとなりました。以下に、その論点と背景、そして政府答弁が持つ意義を詳述します。

質問主意書の主な論点と意図

馬場議員の質問主意書は、以下の点を中心に政府の見解を質し、今後の政府の対応を明確にさせようと意図しています。

  • 「従軍慰安婦」用語の不適切性の主張:

    • 質問者は、「従軍慰安婦」という用語が、1992年の政府調査で「軍や官憲による強制連行を直接示す資料は見つかっていない」にもかかわらず、その用語が「強制連行」を示唆しているかのような「誤った理解」を国内外に与えていると指摘します。

    • この誤解を防ぐため、政府がこの用語を用いるべきではないと明確に主張し、加藤官房長官(当時)が「慰安婦という用語を用いており、従軍慰安婦という用語は用いておりません」と答弁したことを高く評価し、この方針の維持・徹底を求めました。

  • 「いわゆる従軍慰安婦」用語への懸念:

    • 1993年の河野官房長官談話で使用された「いわゆる従軍慰安婦」という表現についても、「いわゆる」を冠しても「誤った理解を正すことにならず、むしろ間違った印象を更に広めてしまう懸念がある」として、不適切であると主張しています。

    • 河野談話の内容(お詫びと反省)自体は継承することを理解しつつも、談話内で使用された「用語」に焦点を当て、その見直しを求めました。

  • 政府への確認と今後の姿勢の明確化要求:

    • 質問一河野談話を政府として継承するのか、改めて政府の基本的立場を示すよう求めました。

    • 質問二:河野談話でなぜ「従軍慰安婦」という用語を使用したのか、その理由を問いました。

    • 質問三近年「従軍慰安婦」用語を使用していない理由(誤ったイメージとの関連)の確認を求めました。

    • 質問四今後、「従軍慰安婦」や「いわゆる従軍慰安婦」の使用が不適切であるという見解の引き出し、さらに「従軍」と「慰安婦」を組み合わせた他の表現(例:「慰安婦として従軍させられた」)についても不適切とするかどうかの踏み込んだ見解を求めました。

質問主意書は、これらの問いを通じて、政府の公式見解として「従軍慰安婦」および類する表現の不適切性を明確にさせ、今後の政府の統一的な用語使用の方針を確立することを強く意図していると言えます。

政府答弁の主な内容と評価

政府の答弁書(菅義偉内閣総理大臣署名)は、馬場議員の質問に対して、以下の通り回答しました。

  • 質問一(河野談話の継承について)

    • 「政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話(以下「談話」という。)を継承しているというものであり、談話について見直すことは考えていない。」と明確に回答しました。これは、河野談話の「お詫びと反省の気持ち」を政府が今後も引き継ぐという従来の立場を再確認するものです。

  • 質問二(河野談話での用語使用理由について)

    • 「談話作成のプロセスを含め、様々な情報が存在するものの、政府として、談話作成時の意思決定の詳細について、これ以上明らかにすることは困難である。」と回答しました。これは、当時の意思決定の詳細については、これ以上踏み込んだ説明はしないという姿勢を示しています。

  • 質問三(近年「従軍慰安婦」を使用しない理由について)

    • 『従軍慰安婦』という用語については、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示す記述が政府が発見した資料の中になかったこと等から、誤解を招くおそれがある。」と回答しました。これは、質問者が指摘した「誤解を招くおそれ」を政府が公式に認め、それが用語不使用の理由であると明確にしました。

  • 質問四(今後の用語使用について)

    • 「政府としては、『従軍慰安婦』という用語を用いることは適切ではない。」と断言しました。

    • 「また、『いわゆる従軍慰安婦』という用語についても、誤解を招くおそれがあることから、政府としては使用しないこととしている。」と述べ、「いわゆる」を冠した表現も不適切であるとしました。

    • さらに、「御指摘の『従軍』と『慰安婦』を組み合わせた表現についても、同様に誤解を招くおそれがあることから、政府としては使用しないことが適切であると考えている。」とし、広範囲にわたる「従軍」と「慰安婦」の組み合わせ表現を避ける方針を示しました。

    • 最後に、「客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成され、我が国の基本的立場や取組に対して正当な評価を受けるべく、これまで以上に対外発信を強化していく考えである。」と、今後の対外発信の強化に言及しました。

この質問主意書から見える背景と意義(AI分析)

この質問主意書と政府答弁は、慰安婦問題における「用語」という、歴史認識論争の核に関わる側面に焦点を当てた、極めて戦略的なやり取りであったと言えます。

  1. 用語を巡る論争の背景: 慰安婦問題においては、「従軍慰安婦」という用語が、被害の強制性や軍との一体性をどの程度示唆するのかを巡って、長年論争があります。政府は、狭義の「強制連行」(軍や官憲が直接、物理的に誘拐するようなケース)を示す資料はないという立場を取っており、「従軍」という言葉が軍との一体性や強制性を過度に強調すると考える立場からは、この用語を避けようとします。馬場議員の質問は、この政府の立場を明確に引き出すことを意図していました。

  2. 政府の用語の変遷と確定の動き: 政府内でも、時期によって「従軍慰安婦」「いわゆる従軍慰安婦」「慰安婦」といった表現が使われてきました。この質問主意書が出された2021年頃は、「慰安婦」という用語に統一する方向性が強まっている時期でした。質問者は、この流れを加速させ、公式な政府方針として確定させることを狙ったと言えます。

  3. 国内外への影響: 「従軍慰安婦」という用語が国際的に広く使われ、日本が女性たちを軍が強制的に性奴隷にしたというイメージに繋がっているという問題意識は、日本の国際的な評価や歴史認識問題に直結するため、政府の用語の定義は重要な意味を持ちます。質問者は、政府が用語を明確にすることで、国内外の「誤解」をただし、日本の名誉に関わる問題の解決に繋がると考えています。

  4. その後の閣議決定への直接的影響: この質問主意書を受けて、政府は正式な検討を行い、答弁書を出した約3ヶ月後の同年7月、改めて「『従軍慰安婦』という用語については、誤解を招くおそれがあることから、政府としては使用せず、『慰安婦』という用語を用いることが適切である」とする閣議決定を行いました。これは、この質問主意書が、政府の用語に関する方針を明確にする上で直接的な契機の一つとなったことを示しています。

分析的視点から

この質問主意書は、慰安婦問題における「用語」という、歴史認識論争の核に関わる側面に焦点を当てた、戦略的な質問と言えます。

  • 「従軍慰安婦」という言葉が持つ特定のイメージ(質問者の考える「誤解」)を明確に指摘し、政府にその用語を使わない理由を問い質すことで、政府自身にその「誤解」を認めさせ、用語を使わない方針を再確認させる構造になっています。

  • 河野談話の内容は尊重しつつも、用語の変更を求めるというアプローチは、歴史認識問題における政府の基本的立場(談話の継承)を尊重する姿勢を見せつつ、特定の表現を排除しようとする政治的な意図が明確です。

  • 「いわゆる」という言葉の持つ曖昧さがかえって「誤解」を広げると指摘する部分は、用語が持つ社会的な影響力に対する質問者の認識を示しています。

  • 最後に「従軍」と「慰安婦」を組み合わせた他の表現についても不適切とするか問うている点は、用語排除の範囲をどこまで広げるか、政府の言葉遣いを徹底させようとする意欲がうかがえます。

このように、この質問主意書は、慰安婦問題における用語の使用を巡る論争を背景に、特定の用語が持つとされる「誤解」の問題を前面に出し、政府の公式方針としてこれらの用語の不適切性を明確にさせ、今後の政府の対外発信における用語使用をコントロールしようとする、政治的な意図を持った問いかけであると分析できます。そして、実際にその後の閣議決定に影響を与えた点で、一定の政治的効果を上げた質問であったと言えます。ただし、「慰安婦」という言葉自体が、強制性や軍との関連性を否定するものではないという政府の従来の立場は、この答弁書においても維持されています。

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