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アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【その壱】愛は行動よ。私たちは愛する力を持って生れて来た。それでも、筋肉のように鍛えなくちゃいけないの。 ①

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あらすじ(Season1ネタバレ)
美人だけど無愛想で恋愛経験無しの女の子、神月夕陽こうづきゆうひ。そして、どうしようもない女ったらしだけど、根は純情で一途な超絶イケメンの色男、門真敏生かどまとしき
二人は何を隠そう、海上自衛隊が誇る期待の若手精鋭・戦闘機パイロット。空母「ながと」戦闘飛行隊の設立で出会い、編隊コンビを組むことになった二人は、すったもんだの時を経て、晴れてプライベートでも恋人同士に。お互いの両親の公認も得て幸せ絶頂だが、恋愛初心者の夕陽には新たな不安も出てきて―。パイロットカップルの二人が織りなす、ハートフルなスカイラブストーリー。

【その壱】愛は行動よ。私たちは愛する力を持って生れて来た。それでも、筋肉のように鍛えなくちゃいけないの。 英国人女優 オードリーヘップバ―ン ①


 数年ぶりの電撃的な里帰りから戻って、早くも一週間が過ぎようとしていた。

 今日は、久しぶりに「ながと」飛行隊にお鉢が回ってきたアラート任務。艦載飛行隊であるため、通常時はアラート任務からは外れているが、「ながと」がメンテナンスで入渠中の時は、空自との調整で任務が割り当てられることになっている。

 この日は菅沼、滑川組と共に、6時間毎に5分待機(指令が出てから5分以内に発進する)と1時間待機を交互に回すことになっていた。

 任務とは言っても、スクランブル指令が出るまで、ひたすらに待機するのみ。国境線を目の前にした北海道や沖縄の部隊と比べたら、冷戦時代とは異なり、首都圏の部隊は滅多にスクランブルは掛からない。

 また、さすがに24時間、ずっと緊張状態を保てるわけなど無いので、5分待機組は耐Gスーツにハーネスなどの装備を付けたまま、1時間待機組は装備を外した状態で、皆、待機室で音楽を聴いたり読書したり、思い思いの時間を過ごしている。
 菅沼と滑川は向かいのソファで、装備を付けたまま、将棋指しに興じている。

 夕陽は、といえば、いつものように、任務前にPXで購入した愛読のファッション誌を眺めていた。

 ちらっと横目で、隣に座る敏生の様子を窺う。
 
 彼もまた、いつものように、英語の勉強がてら、洋書のペーパーバックを読み耽っている。出会った当初はチャラチャラとしたイメージしかなかったので、読書中の寡黙な姿にかなりのギャップを感じたものだったが、彼の人となりを知った今では当たり前の光景。

 かっこいいな。

 つい彼の真剣な横顔に見惚れてしまい、いけない、と雑誌に視線を戻す。あの里帰り以来、更に好きが強くなった気がするが、今はアラート任務中。惚けてる訳にはいかない。

 気を取り直し、パラパラとページをめくっていると、女子旅特集に目が止まった。

 あ、下関だ。ええー? ここ、翌日に敏生と行ったところだー。

 数日前の記憶をなぞる。

〝関門海峡、初めてきたけど、壇ノ浦も巌流島もここだったんだね。感動〟

 感慨深げに手摺に身を乗り出す敏生。

〝祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす〟

 説明するまでもない有名な一節を諳んじる彼。
 夕陽はクスリと笑うと、彼に倣い、手摺に身を乗り出した。

〝おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ〟
〝お、覚えてるねー〟
〝うん。受験勉強もあったけど、こういう土地柄だから、平家物語は好きだったわ〟

 彼にそっと抱き寄せられ、肩に頭を預ける。

〝この波の下に都はあったのかな?〟

 水面を見つめながら、彼が呟く。

〝きっと、ね……。そう思いたいわ〟

 キュッと彼の手を握る。まさか二度と帰らないと誓っていた故郷で、小さい頃から慣れ親しんだこの景色を、彼と一緒に眺めることができるなんて。いつも以上に気持ちがはしゃいでしまう。

〝あ。でね、あそこに小さく見える島が巌流じ……〟

 言い掛けて、突然、彼に唇を塞がれた。舌を絡めとられ、激しく貪られる。奇襲攻撃に驚いたが、夕陽も彼の背中に腕を回すと、迎撃した。

 お互いを求め合う情熱的なキス。昨日、実家で何も出来なかった反動だろうか。やがて、どちらからともなく離れると、こつんと額を合わせた。

〝もう……。ここ、お外だよ?〟
〝夕陽の故郷で、無性にマーキングしたくなった。下関のみんな、俺が夕陽の恋人なんだぞー、って〟
〝もー。しょうがないな〟

 ため息をついて見せるも、彼の気持ちが嬉しくて仕方がない。目を瞑り、そっと唇を差し出しておねだりすると、再び彼の唇が乗ってくる。

〝……好きだ、夕陽。たまらなく好きだ〟
〝あたしも大好き、敏生。ずっと、ずっと一緒だよ?〟
〝当たり前だ。一生離さないからな〟
〝うん。約束〟

 小指を絡めながら何度も何度もキスを繰り返す。その後もお互い、ラブモード全開で、とても満ち足りた1日になったのだった。

 えへへ。あの日は敏生といっぱいキスしちゃったな。

 思わず顔がにやけてしまい、慌てて取り繕って周りを窺う。良かった、誰にも見られていなかった。

〝一生離さないからな〟

 脳裏にこだまする彼の甘い囁き。
 そういえば。

〝絶対に誓います! 必ず娘さんを幸せにします! 夕陽さんと一緒に頑張ります!〟

 彼が父親の和博に向かって放った言葉。あれは一体、どういう意味だったんだろう。

 あの時は敏生への感動と、両親と和解できた安堵感でただただ、胸がいっぱいだったのだが、改めて思い返してみると、父親の「どうか娘を幸せにしてやって欲しい」との言葉も相まって、まるで結婚の申し込みのシチュエーションだった。

 敏生、もしかして、あたしとの結婚を考えてくれている?

 自分が異性と付き合っている、というシチュエーションだけでもいまだに信じられないのに、ましてや結婚だなんて。

 だが、もしそうだとしたら、嬉しくないわけがない。
 今となっては敏生のいない未来など考えられない。ずっとずっと一緒にいたい。それが夕陽の偽らざる気持ち。

 敏生だって、一生離さない、って言ってくれたし。きっとそうだよね。
 
 うん、と頷く。

 だが、もし自分の思い違いだとしたら? 夕陽から結婚の二文字を口にした瞬間、彼の気持ちが離れて行ってしまうかもしれない。

 確かめたいけど怖い。恋愛初心者ゆえの自信の無さ。

「イデア、どうした? さっきから変だぞ。体調でも悪いのか?」
 向かいに座っている菅沼が訝しげに聞いてくる。まずい、挙動不審を見抜かれていた。

「ん? 夕陽、体調悪いのか?」
 菅沼の言葉に、隣に座る敏生が本から顔を上げて、覗き込んでくる。

「あ、いえ、な、何でもありません!」
 慌てて両手を振り否定する。

「本当?」
 敏生が夕陽の額に手を当てる。

「うーん。まあ、熱は無さそうだけど、どこか調子が悪いならちゃんと言いなよ?」
「うん。ほんと大丈夫だから」

 あなたのせいよ、とはさすがに言えない。表情に出すまい、と再びファッション誌をめくるが、一度思考のループにハマった状態では全く頭には入ってこず、悶々とした状態が続く。

 よし、アラート明けに美鈴ちゃんに相談に乗ってもらおう、と考えていると、コンコン、と壁をノックして、その美鈴が待機室に入って来た。

「美鈴ちゃん!?」
「夕陽さん、今1時間待機ですよね?」
「そうだよ。どうしたの?」

 いつになく、深刻な表情を浮かべている年下の親友。

「明日、アラート明けで申し訳無いんですけど、夜お時間いただけませんか?」
「何だ? 女子会か?」
 横から敏生が口を挟む。

「そういうノリでは無いというか、佐那さんがちょっと参ってそうで……」
「佐那ちゃんが?」

「ながと」管制隊員の伊吹佐那二等海曹。夕陽のひとつ年下で仲良しの一人。常に明るくノリの良い性格で、落ち込んでいるところを見たことが無い。
 夕陽がちらっと敏生を見ると、彼はうん、と頷いた。

「俺は大丈夫だから行っておいで。佐那が参ってるなんて余程だろ」
「ありがとう、敏生」
「ありがとうございます、門真一尉。じゃあ夕陽さん、お店はContrail取っておきますね」

 隊の女子会で良く利用する、女子率ほぼ100パーセントのおしゃれなお店だ。美鈴はぺこりと頭を下げると、待機室を出て行った。自分の悩みを相談するつもりが、逆に相談を持ち掛けられてしまった。

 うーん、これじゃ、あたしのことはまた今度かな。

 自嘲気味にため息をつくと、再びファッション誌を手に取った。

 結局、今回はスクランブルが掛かることも無く、24時間の待機任務を終えた。隊舎でシャワーを浴びてから、敏生と待ち合わせて一緒に彼のアパートに戻る。

 待機中は仮眠も取れ、リラックスしていたつもりでも、半分の12時間は装備を着けっぱなしで、緊張状態には置かれていたので、眠りも浅く、やはりぐったりだ。
 彼と少しでもイチャイチャしたい思いはあったものの、この時ばかりはお互い睡眠欲が勝り、アラームを掛けてベッドに潜ると、抱き合ったまま、夕方まで泥のように眠った。

 ピピピッ、ピピピッ、とアラームが鳴り、目を覚ますと、敏生は既に起きていた。

「おはよう。お目覚めですか、姫」
「うん……。おはよ、敏生」
「美鈴との約束は1900ひときゅうまるまるだったよね?」
「うん。まだ眠い……」

 軽く目を擦る。美鈴との約束の時間まで、まだ3時間ある。

「小腹空いたんじゃない? オニオングラタンスープ、作ったんだけど」
「ええっ? それはすごい! 飲みたーい!」
「はは。じゃあ、おっきしましょうか?」
「だっこー」
「甘えん坊の夕陽、可愛すぎ」

 敏生が目尻を下げながら夕陽を抱え起こす。恋人としての甘え方にもだいぶ慣れてきた。
 テーブルの前に、彼に後ろ抱きにされる形で座る。おやつタイムの、いつもの食べさせ合いっこモード。彼はスープの浸み込んだパンをスプーンで小さく掬うと、夕陽の口元に運んでくれる。

「ん~~~! 美味しい!」
「へへ、ありがとう。夕陽の可愛い笑顔、いただきました」

 普段は夕陽が料理担当を譲らないのだが、敏生の自炊力も相当なもの。期待に違わずとても美味しい。
 食べさせ合いっこをしながら、時折キスを交え、幸せに浸りながら平らげると、あとはお出掛けの準備だ。敏生とのデートではないので、化粧も手早く、軽めに済ませる。

 今日の場所は二駅先の海老名の駅前。お店までは敏生が車で送ってくれた。

「じゃあ、終わったら迎えに来るから連絡してね」

 女子会の時は何かあったら直ぐ駆けつけられるようにと、送迎はもちろん、いつも近場で待機してくれている彼。

「うん、いつもありがとうね。でも、なんだろ?」
「恋愛相談じゃないの? 佐那は確か商社マンの彼氏がいただろ」
「良く覚えてるね」
「夕陽から聞いた話はちゃんと覚えてますよ」
 そういえば前に話したんだった。いつだって自分と真剣に向き合ってくれている彼。

「えへへ。大好き、敏生」
 ぎゅっとハグすると、小さく手を振って車を降りた。


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#02 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【その壱】愛は行動よ。私たちは愛する力を持って生れて来た。それでも、筋肉のように鍛えなくちゃいけないの。 ②|京
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#04 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【その弐】女はティーバックみたいなもの。熱湯につけられるまで、あなたがどんなに強いか知ることは無いのです。 ①|京
#05 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【その弐】女はティーバックみたいなもの。熱湯につけられるまで、あなたがどんなに強いか知ることは無いのです。 ②|京
#06 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【その弐】女はティーバックみたいなもの。熱湯につけられるまで、あなたがどんなに強いか知ることは無いのです。 ③|京
#07 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【その参】愛とはお互いを見つめ合うことではなく、共に同じ方向を見つめることである。 ①|京
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#10 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【その肆】結婚を成功させるには、いつまでも同じ人と、何度も恋に落ちることである。 ①|京
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#14 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【その伍】閑話休題 友情は翼のないキューピットである。 ①|京
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#26 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【その玖】良い結婚ほど素敵で、友好的で、魅力的な関係、結びつきや仲間は存在しません。 ①|京
#27 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【その玖】良い結婚ほど素敵で、友好的で、魅力的な関係、結びつきや仲間は存在しません。 ②|京
#28 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【その玖】良い結婚ほど素敵で、友好的で、魅力的な関係、結びつきや仲間は存在しません。 ③|京
#29 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【エピローグ】王であれ農民であれ、家庭に平和を見出すものこそ最も幸福である。 ① (残り4話です)|京
#30 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【エピローグ】王であれ農民であれ、家庭に平和を見出すものこそ最も幸福である。 ②(残り3話です)|京
#31 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【エピローグ】王であれ農民であれ、家庭に平和を見出すものこそ最も幸福である。 ③(残り2話です)|京
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#33 アホウドリの空_Season2〜自衛隊ラブストーリー〜【エピローグ】王であれ農民であれ、家庭に平和を見出すものこそ最も幸福である。 <Grand finale>|京