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ライン随想録 ヨーロッパ小国の知恵に学ぶ

1999/03/31 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより

随想録

日本にいるときには良くわからなかったが、最近ヨーロッパの人口の少ない 国々のなかにはきらりと光るものを持っている国が多いような気がしている。
オ ランダ、ベルギー、スイス、デンマーク、ノルウェーのような国である。
日本ではヨーロッパの大国、ドイツ、フランス、英国、イタリアなどにすぐ目が行きがちである。
もちろん、ヨーロッパの大国の重要度は否定しないが、これら小国の人々の生き方にももっともっと着目すべきだと考えはじめている。

ヨーロッパに比較的長く住んでいると、あまり日本では関心を払われていないベルギー、オランダのような人口の少ない国々が近隣の国々からまずは尊敬の念をもって受け入れられている様子がおぼろげながら浮かび上がってくる。
アムステルダムや、ブラッセル、ブルージュのような都市はヨーロッパ近代化の光とし て、英国、フランス、ドイツに先駆けて輝いたところのようだ。
そこに住んでいる人々も市民社会を早くから形成させ、平等主義の下で、近代化のさきがけになっていった。
とくに、ブラッセルは欧州連合の拠点として、ヨーロッパ統合の核になっているところが興味深い。
欧州の高速道路を走っていると、欧州連合の象徴である星型の輪のマークをつけて走っている車には、ベルギー車、オランダ車 が断然多い。
ベルギー、オランダからみるとフランス、ドイツなどはまだまだネ ーション・ステートの後遺症を引きずっている国々と見えるのかもしれない。

スイスもそうであるが、ヨーロッパの人口の少ない国々は自分の国の中だけで閉鎖的な枠の中にとどまっていては、快適かつ豊かに生きることができないことを肌で感じてよく知っているようだ。
周囲の国々のひとに理解され、愛されて、 自由な貿易・人的な交流をすることが自分の生活水準を引き上げる道につながることを早くから気づいているようである。
この点では、アメリカ合衆国、わが国日本とは若干異なっていると言えよう。

自由に貿易をし、人的な交流をし、そこで競争に勝ち抜いていくには、文化、 教育、物とサービスの輸出のあらゆる分野で皆にアピールできる独自性を持たなくてはならない。
天然資源がほとんどない小さな国々がヨーロッパで生き残るた めに人々はこれまでいろいろ知恵をしぼって来たに相違ない。
スイスでは古くは、頑健な体をもった傭兵を輸出し、いわゆる出稼ぎ大国の異名をとってきた。
他の国にはないアルプスを観光の目玉として、スイス・ホスピタリティーを織り込んで、スキーなどの誘致に熱心に取り組んできた。
最近では、時計産業に加え、製薬業、バンキングが重要な稼ぎ頭となってきている。

ベルギー、オランダは古くから西ヨーロッパの中核的な位置付けと良港を持 ち、物流の拠点としての重要さを握っている。
それにアメリカ、日本からの投 資・出資をこころから歓迎し、全欧州への進出拠点として各国からの製造業・サ ービス業の参加を歓迎している。
つまり、欧州統合と世界規模の交流の拠点とを目指しているといえるだろう。
外国人がベルギー、オランダで労働許可を取得するのは他の国々とくらべはるかに容易と聞いている。

日本では、未だネーション・ステートを念頭において、人口の多寡によって、 一流国とか二流国とか定義して、その中の何処に自分を位置付けるかなどと考えているうちに、ベルギー、オランダなどの国は一皮も二皮もむけて、グローバル な競争の下でしっかりと自分を位置付けようと変化を遂げているようだ。

数年前ベルギーに旅行したときに、ホテルの掲示板に「ベルギーはヨーロッパ のサンド・バッグだ」と書いてあった。
ナポレオンと英国が戦ったワーテルローの戦いは、フランスでも、英国でもなく、ベルギーが戦場となった。
自分の国でいくら気をつけていても、大きな国の軍隊が次々とやってきてサンド・バッグの ように叩きのめしていくことの繰り返しであったという。
ベルギーが他の国の動向にも強い関心を払わなければならなかった理由が窺い知れる。

ヨーロッパの小国は自分の存在感を示し、世界にアピールし、主導権を握る ため、普遍的な考え方・理念を考案し、これを広く伝播しようとの努力を続けてきた。
これは小国だけにとどまらず大国も中規模国もみな必死に取り組んできたことのようであるが、とくに小国が生き残りをかけて熱心に取り組んできたもののようだ。

宗教と政治・経済の分離、市民社会と平等主義、省エネルギーと地球環境に配慮した生活、自由貿易、社会福祉の理念などは、これら人口の少ない国々がとくに熱心に発信しつづけて来たものであろう。
これらの理念は十分21世紀にも通用する理念であると思う。

わが国日本は21世紀にむけて、あらたに発信できるような理念・文化をどれだけ持ち合わせているだろうか。
日本は米、独、仏、英、伊、のような大国の動向にのみ目を奪われることなく、ヨーロッパの小国の生き方をじっくりかみ締めるべきだと思う。
それが日本の21世紀に生き延びる道につながるのではないかと今考えはじめている。 

老齢プログラマの所感

ヨーロッパの小国については名前は知ってても知らないところばかりです。
日本でも家族や知人がいない県は詳しく知る機会がありません。
ましてやヨーロッパです。

しかし、中国の丹東という北朝鮮との国境を鉄道で渡った対岸の町は行ったことはありませんが、良く知っています。
親しい友人の出身地だからです。
申し訳ありませんが、行ったこともない、誰も知る人とも関係のない土地を知ることは難しいです。

今まで知らなかったところでも、Wikipediaで検索し、Street Viewで街を歩き、AIに「歴史や特徴を教えて」と聞けばすぐに基本知識は入手できます。
すぐに、誰よりも良く知るところになります。

Google Geminiに「『ベルギーはヨーロッパ のサンド・バッグだ』と言われるようになった背景のエピソードはありますか?」と聞くと「この言葉は土嚢の意味であり、ベルギーの人々にとって屈辱的な意味合いを持つため、近年では使用されなくなりました。」と返ってきました。
「ボクシング練習の砂袋かと思っていたのですが、間違いでしたか?」と聞き直すと「間違いではありません。中立国であったにもかかわらず侵攻を受け、国土が戦場となりました。ヨーロッパの国々にとって、戦争の「防御壁」のような役割を果たしてきたので、もう一つの土嚢の意味でヨーロッパのサンドバッグと呼ばれたのです。」
良い知識が得られますね。
更に「中立国だったのに侵攻を受けた理由」や「侵攻を受けないための知恵」などを聞いてみたいです。

蛇足ですが、Google GeminiとMicrosoft Copilotの両方から教えてもらって比べてみると良いようです。

補足

上の記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の住職の遺作「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さり、今は住職の息子によって公開されています。
当時、このようにお世話になったことを思い出し、復刻していました。

ある日突然、「ライン随想録」の目次が検索で見つかるようになりました。
しかし、ここから記事へのリンクが途切れています。
これが理由で、今まで検索しても表示されなかったのかもしれません。
そのため、復刻作業は今までどおり続けることにします。


【ライン随想録】
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