ライン随想録 緑の国・ニッポン
1999/01/11 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより
随想録
数年前、フランスのニースでアジア開銀総会があり、そこに参加する機会があった。
たしか太平洋に浮かぶ「西サモア」の代表であったと思うが、「我々には美しいさんご礁ときれいな太平洋の海原(うなばら) がある。
この美しい自然をそのまま維持することが大切で、開発とか経済成長のためにこれを失うくらいならば、経済など成長しなくとも良いと考えている」と演説した。
聴いていた人々は一瞬静まり返ったが、そ の直後拍手が沸きあがり、満場が大きな拍手で一杯になった。
開発のための集まりに、堂々とこれに反対する考えを述べたものである。
先進工業国に追いつき、追い越せ、この掛け声のもとにわが国日本は 経済成長の道をひた走り、その過程で大きな犠牲をはらい、大切なものを失ってきた。
「水俣病」がそれであり、「四日市公害」、「大気汚染」 、「水質汚濁」、「騒音公害」など、枚挙のいとまのないほどの問題が生じたことを記憶されているかたも多いだろう。
幕末・明治初期、当時の日本人が欧米列強の進出の前に愕然とし、 すみやかに国を富まして、軍備を増強し、なんとかして対等の立場に立ちたいと考えたのも無理からぬものがある。
また、第二次大戦の敗戦か ら一致協力して立ち上がり、早く経済をゆたかにするためには何をしなければならないか、皆で考えたときに、少々の摩擦には目をつむり、 効率的な経済成長を遂げなければならないと考えたのも理解できなくはない。
ただ、第二次大戦後の経済成長が始まったとき、スエーデンなど北欧の国々は冷徹に日本の公害の行方を見据え、かなり早い時期 から経済成長と環境問題のバランスに強い警告を発していたことが今になって思い出される。
ヨーロッパの国々では、チェルノブイリの原発事故が近隣の諸国に 深刻な環境汚染を引き起こすという事実、またたとえば、スイ ス、ドイツ、フランスなどの上流地域におけるライン川の水質汚濁が 下流のオランダに大きな影響を与えることなど、国と国、また 民族と民族が近くに接して暮らしているため、他国の環境汚染に対し 極めて敏感である。
今でこそ日本も中国大陸からの酸性雨の影響を心配したり、ロシアのタンカーが転覆して、原油汚染が日本海沿岸地域に広がったりするのを見て、他人事とはいえないと感ずるようになってきた。
しかし、ごく最近までは島国日本が他国との間で、環境汚染の面で係わり合いを持つことがあろうとは考えていなかったのだろう。
今は違う。
オゾン層の破壊、CO2濃度上昇などで、地球温暖化が進むと、南極の氷が溶け出して、海水面が上昇し、水面に没し てしまう島が出始めることが懸念されている。
地球環境に十分配慮しないと、人類はとりかえしのつかない事態を引き起こしてしま うのではという心配が人々のこころに広がり始めているのではな かろうか。
資源を大切にし、環境に十分配慮するとなると、これからはそう高い成長は望むべくもないのだろうか。
また、少子化、長引く不 況の問題もこうした環境の観点からみると、無理をせず現状のまま甘んじていていいのではないかという誘惑にかられる。
ただ、こうした敗北主義から抜け出すには、低公害・環境配慮の面で、今後日本産業、日本の社会・組織が世界の模範となるような技術・システムを構築していけるか否かにかかっている。
丁度、 日本のメーカーが低公害の自動車を世界に先駆けて生産していっ たように、日本の技術が環境対策の面で進んでいることが立証されれば、グローバル市場で優位に立てるはずで、これが経済の伸びを支えることにもなろう。
これは、「言うは易く、行うは難し」の 典型的な例のような気がする。
ただ、日本は比較的狭い国土で、 過密な人口を抱えているため、これまでも公害・環境面で真剣な 対応を迫られてきたということを逆手にとって、ぜひとも工夫に工夫を重ねていきたいものである。
ごみを減らし、環境に配慮した 社会システムを作ることも日本人のもっとも得意とするところと胸 を張りたいと思う。
このたび、広島市長選挙に立候補している、友人の前衆議院議員、 秋葉忠利氏は98年12月4日週の「アキバ・ウイークリー」 で、
これからの社会は「成長・開発」型から「成熟・安定」型に移行していきます。
そのひとつの象徴がごみです。
広島とほぼ同じ規模だった]戸Sなリサイクル社会でした。
昨今ではこ のような社会をゼロ・エミッションの社会といいますが、この視 点から社会を見直す努力も必要です
と述べておられる。
極めて 正鵠を得た洞察と思います。
環境問題を真剣に考えると、ごみ発生の問題、その処理の問題、 リサイクルの問題など、複雑・多岐にからまる諸条件を一つ一つ 解きほぐしていかなければならなくなることに気づく。
これは人の 生き方の問題、家庭のあり方、仕事の進め方、政府・地方公共団 体の役割、すべてにかかわる問題のようである。
環境問題が国民の各層、とりわけ若者層に強い関心を呼んでいる ドイツでは「みどりの党」が躍進に躍進を重ね、現シュレーダー政権の連立与党に参加していることは多くの方がご存知だろう。
「グリーン」の問題は単に“一部の活動家がWWFやグリーンピー スの寄付集めのために過激な行動に走っているものよ”と嘲笑していればすむことではないようである。
実は、われわれの日常の「一挙手一投足」すべてが環境問題 にかかわっているのである。
新車を買うべきか否か、車をやめて電 車・汽車にすべきか、何を食べ、何を着るか、家は、旅行は、 …のすべてである。
どなたか、「緑の党・ニッポン」を作ってくださる方は、 おられないのだろうか。
今後、私は在外日本人が投票を許される比例区 でこの新政党にぜひ一票を投じたいものと思っている。
老齢プログラマの所感
環境問題は、かつては国内問題でしたが、今では国際問題なっています。
井浦さんの随想録は国際問題になり始めた時期だったようです。
環境問題を歴史的に捉えてみると以下のようだと思います。
明治から昭和初期には以下の問題が発生、社会的に問題が認識されました。
・足尾銅山鉱毒事件、日立鉱山亜硫酸ガス事件、浅野セメント粉じん被害
・大気汚染と水質汚濁
不十分ながらも、対策が徐々に進められるようになりました。
環境問題認識までの時代と言えるでしょうか。
1960年代から1970年代は、日本は高度経済成長期を迎え、その一方で深刻な産業公害問題が発生しました。
四日市ぜんそくや水俣病などの公害事件が社会問題となりました。
産業公害の時代です。
1970年代以降、環境保護のための法整備が進められ、環境庁ができました。
国内の環境問題は徐々に改善されました。
同時に地球規模の環境問題への関心も高まりました。
環境保護対策の時代でしょうか。
1980、90年代は、地球温暖化やオゾン層破壊などの環境問題でした。
日本も積極的に取り組むようになり、1997年京都議定書が採択されました。
環境問題の国際化の時代でしょうか。
2000年代以降、国内外での環境問題に対して一層の取り組みを進めました。
特に、気候変動や生物多様性の保護に関する国際的な協力です。
グローバルな視点での環境対策の時代ではないかと思います。
現在、日本では、環境問題は国際的な課題として認識されています。
例えば、海洋プラスチックごみ問題や気候変動への対応などです。
国際社会と連携して取り組むべき課題が多く存在します。
補足
上の記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の住職の遺作「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さり、今は住職の息子によって公開されています。
当時、このようにお世話になったことを思い出し、復刻していました。
ある日突然、「ライン随想録」の目次が検索で見つかるようになりました。
しかし、ここから記事へのリンクが途切れています。
これが理由で、今まで検索しても表示されなかったのかもしれません。
そのため、復刻作業は今までどおり続けることにします。

【ライン随想録】
ライン随想録 緑の国・ニッポン(本記事)
ライン随想録 インターネットと私(その4) モービル通信環境など
ライン随想録 ハウスキーピングの工夫
ライン随想録 ヨーロッパとミネラル・ウォーター
ライン随想録 ROM(Read Only Member) 対策
ライン随想録 インターネット・三種の神器
ライン随想録 Portable telephone
ライン随想録 人事を尽くして天命を待つ
ライン随想録 スイス・日本サイバーグループへ入会されませんか
ライン随想録 金融・意識改革
ライン随想録 つれづれわぶる人
ライン随想録 修学院離宮と秋の京都・97
ライン随想録 母親がいつも言っていたこと
ライン随想録 やさしい欧州通貨・ユーロのはなし
ライン随想録 随想録清潔好きの国・スイス
ライン随想録 地震・台風・・災害ニッポン(その2)
ライン随想録 地震・台風・津波高潮・火山噴火の日本(1)
ライン随想録 欧州結婚事情
ライン随想録 賢い旅行情報の集め方
ライン随想録 ヨーロッパのひまわり
ライン随想録 歯の健康維持について
ライン随想録 QE2航海記・その6 食事と会話
ライン随想録 QE2航海記・その5 スコティッシュ・キッパー
ライン随想録 QE2航海記・その4 QE号・カラオケ大会は大盛況
ライン随想録 観光立国・ニッポン
ライン随想録 ロンドン・ヒースロー空港
ライン随想録 QE2航海記・その3、豪華船のあらましと船上セミナー
ライン随想録 QE2航海記-その2(大西洋上およびスイスから)
ライン随想録 クイーン・エリザベス二世号航海記-その1
ライン随想録 内なる国際化
ライン随想録 欧州人の休暇の取り方
ライン随想録 欧州盆栽事情
ライン随想録 ビジ・カジ
ライン随想録 旅行、お好きですか?
ライン随想録 たまごっちパート2
ライン随想録 結婚まえの同居
ライン随想録 外国語学習と日本人
ライン随想録 イギリス人とフランス人
ライン随想録 ちかごろ・みやこではやるものータマゴッチ
ライン随想録 最後の授業
ライン随想録 海外日本食事情
ライン随想録 荷物なくしたことありませんか
ライン随想録 フランス・リモージュ地域
ライン随想録 駅前・放置自転車
ライン随想録 インターネットと私(その3)ブラウザー
ライン随想録 インターネットと私(その2)電子メール
ライン随想録 インターネットと私(その1)概況
ライン随想録 ヨーデルテープありますか
ライン随想録 危ない目にあったことありますか
ライン随想録 スイス・ドイツ語
ライン随想録 人の行く裏に道あり花の山
ライン随想録 円高はこわくない
ライン随想録 規制緩和本当にお好みですか
ライン随想録 中世都市バーゼルの路面電車
ライン随想録 エジプト旅行と体調
ライン随想録 ごみ処理とリサイクル
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートお願いします! いただいたサポートは全て『「思い出の場所」の記事とGoogle地図を関連付けるWeb地図アプリ』のLancersでのプログラミングの外注に使わせていただきます。
よろしくお願いします。