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ライン随想録 ヨーロッパとミネラル・ウォーター

1998/2/23 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより

随想録

1989年に始めてスイス・バーゼルに来たとき、勤務先の産業医 ドクター・ノールのところに、健康診断にいくように言われた。
無事診断も終わり、帰ろうとすると、「ミスター・イウラ、水を毎日 たくさん採りなさい、一日1リットル以上は必要です。
ミネラル・ ウオーターはなおさらよい。
室温での水が良く、アメリカ人のよう に、冷やしたり氷をいれたりしてはいけない」とのはなしであっ た。

奇妙なことをいわれるものだと思った。
日本で医者から水を飲むよ うに言われたことはなかった。
そう言われて、あたりを見渡すと、 スーパーでは、フランスでも、スイスでも大量の各種ミネラル・ウ オーターが1リットル瓶で売られているし、勤め先でも、ミネラ ル・ウオーターが無料で希望するひとに提供されている。
なぜ、多 くの勤め先で水が勧められているかというと、従業員の健康維持の ために会社側から提供するものとしては極めて割安のものというは なしであった。
なぜか、ミネラル・ウオーター産業の陰謀ではない かと思われるような普及ぶりである。

日本に一時帰国したときに、従来からのホームドクターに「スイス では水をたくさん採るようにいわれました」というと、「水を採りすぎて悪いというはなしは聞いていませんから、良いのではないですか」と、プラスにもマイナスにもならないような話であった。

ただ、日本でも尿酸値が極端にたかまることによって発作がおきる 「痛風」では、医者は大量の水を採って尿酸を排出することを勧める。
発作が起きていない通常のひとも、常時水分を多めにとること によって老廃物を体外に流し出しておくことは、悪いことではなさ そうな気がする。
老人になるととくに睡眠中に血液の濃度があがるので夜中にトイレなどに起きたり、一時目覚めたときに水分を採るよう勧める医者が多いようだ。
若いひとにとっても水分補給は悪 かろうはずがない。
いまでは運動などで汗を大量にかくときなどには十分に水分を補給するようにと勧める人が多い。

そうこうしているうちに、職場でも、家でもこまめに水分を採るよ うになってきた。
車で旅行に行くときも、飛行機で移動するときも、小型のミネラル・ウオーターの瓶をいつも荷物にしのばせておくようにしている。
航空機のなかは予想以上に乾燥しているので、 水分を常時補給することがこのましいような気がする。

食事のときにも、ガス入りのミネラル・ウオーターを飲んでいる と、ビールの代わりになる。
午後から仕事があるときなどはビジネ スランチのときに、ワイン、ビールよりも、ガス入りのミネラルウ オーターにとどめておく方が良いときが多い。
日本から来たお客さ んを食事にご案内すると、ガスなしのミネラルウオーターを好まれ る人が多いが、ヨーロッパに長く住んでいる人はガス入りを好む人が多い。
ガスなしでは水道水と見分けが付かないこともその一因と聞いているが、ガス入り・炭酸水の爽快感が好まれるのであろう。  

スイスでも、国境を越えたフランスのスーパーでもミネラルウォー ターのブランド、選択の幅が多いのに驚かされる。
エビアン、ヴィ ッテル、ビシーなどの名前だけでなく、ガス入り、ガスなし、弱塩分入り、塩分控えめ、など5種類も6種類もバラエティーがある。
わたしの住んでいるところのスーパーでは、たとえば1本80ラッ ペン(70円くらい)の1リットルプラスチック瓶入りミネラル・ ウオーターは空き瓶を返しに行くと50ラッペン(40円くらい) を戻してくれる。
コインで受け取ることもできるが、レジに持って いくと、代金からその分を差し引いてくれる。

通常、ミネラルウオーターないし、フィルターで漉した水を飲んで いるが、水道水を飲むことも短期間であれば特に問題を生じないと 思われる。
日本から旅行に来た人は、スイスで一週間程度水道水を 飲みつづけてもとくに問題はないように思う。
ただ、長期滞在して いると、水道水に含まれる石灰分は気になり、フィルターで漉すか、自分の好みのミネラルウオーターを買い求めたほうが良いよう な気がする。

衛生状態にいまひとつ信頼がおけない地域を旅行するときには、ホ テルの水道水を飲まないで、必ずミネラルウオーターを買い求めて 飲むようにしている。
ヨーロッパの他の地域に行くときでも、できるだけ自分の好みに近いミネラルウオーターを常時買い求めて置い ておくことにしている。

人間の身体のおおくの部分は水分からなっており、われわれには健 康維持のため、水分補給が不可欠のようである。
最近日本でもミネラルウオーターがかなり普及して来ていると聞いている。自分の飲 む「水」の質と量についてもっともっと関心を持ったほうが良いよ うな気がするがいかがなものだろうか?

老齢プログラマの所感

水をたくさん飲むようにというのは、1970年代にアメリカから始まった考え方のようです。
医療専門家や栄養士が体の水分バランスを保つ重要性を強調したのが始まりで、それが世界各地に広まったようです。

日本でこの考え方が普及し始めたのは2000年代後半から2010年代にかけてのようです。
健康志向の高まりやヘルスケアの重要性が広く認識されるようになり、水分摂取の重要性が強調されるようになったのですね。
2008年に厚生労働省が「水分摂取のガイドライン」を発表し、1日に1.5リットルの水を飲むことを推奨しています。
また、企業や学校でも水分補給の重要性が強調され、水筒の普及や水の自動販売機の設置が進みました。

当時の日本ではまだ水分補給の重要性に関する認識は不十分でした。
最近20年ほどで水分摂取の重要性が広く認識されるようになりました。
井浦さんがお医者様から言われた15年以上も後の話しです。
すぐに世界中に知られるものも多くなった今でも、普及するのに時間がかあるものもあるのですね。

補足

上の記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の住職の遺作「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さり、今は住職の息子によって公開されています。
当時、このようにお世話になったことを思い出し、復刻していました。

ある日突然、「ライン随想録」の目次が検索で見つかるようになりました。
しかし、ここから記事へのリンクが途切れています。
これが理由で、今まで検索しても表示されなかったのかもしれません。
そのため、復刻作業は今までどおり続けることにします。


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