ライン随想録 Portable telephone
1998/1/21 ライン随想録 スイス・バーゼルレポートより
随想録
昨97年1月のはじめ、ちかごろ都ではやるものと称して「携帯電話」の話を書いた。
ぴーぴー、人前で鳴って迷惑だと言う点を強調 したように記憶している。
それを書いて2か月後にスイスでの仕事 の関係でエリクソンの携帯電話をなかば強制的に保有させられこと になるとは、想像もしなかった。
いまは充電がやや面倒であるが、いつも電話を携帯している。
仕事 の関係で、そう頻繁ではないが、昼休みに早くオフィスへ帰って来てくれという電話が掛かる。
面倒な点はあるが、使いようによって は仕事、プライベートの用事のため、有効に使うことも可能である と思うようになってきた。
仕事中、通常電話を掛けていると、緊急の通話が携帯で掛かってく ることがある。
また、家でパソコン通信、ファックスなどで通常電 話がふさがっていると、携帯に急ぎの通話がかかってくることがあ る。
気が付かなかったが、携帯は2本目の予備電話の要素もあるの である。
ひとに携帯電話の使い道を聞くと、いろいろな病気を持っている人 が、家族、医師とのホットラインに使っているケース、小学生の子 供が塾からの帰りに親と連絡するケース、若い女性が夜、駅から家 族の迎えを頼むケース、配達が届け先の留守の場合に帰宅後の連絡 を待つケースなど便利な使い方があるようだ。
先日、パリのオルリ空港に着いたとき、ダウンタウンまで行くバス の中で、ホテルに着く前にレストランに直行するための予約ができ 便利であった。
また、ひとと待ち合わせをするときにも相手に自分の携帯電話番号 を教えておけば、遅れる場合や行き違いになったときに、相手の動 静を公衆電話と携帯との交信で確認しあえる。
二人ともが携帯を持 っている場合には、たとえば夕方6時ごろ、新宿付近でという約束 だけをしておき、その時に相手の都合を聞きながら、時間・場所を 特定できるという便利さがある。多忙で予定がなかなか確定しない 人には便利であろう。
駅で電車を待っている時間、町で疲れたのでベンチに座り休んでい るとき、携帯を持っていると電話を掛けるタイミングがかなり広が ることが分かる。
家との連絡では予定が変わるときに連絡すること が役に立つ。
知人と会食の席にいたときに、奥さんが車で迎えに来ていて、会の終わりごろ、下から携帯で呼び出しているのには、驚 いた。
到着したので、早く出てきなさいというわけである。
ただ、スイスと日本の仕様が違うので、一時帰国、出張で日本に行 くときには、エリクソンをスイスにおいておき、東京でドコモを一 時使用するのであるが、そのたびに切り替えることになり実に不便だ。
東京で2週間ほど使用し、また停止してくる手続きが必要にな っている。
早く、世界仕様のものが出てこないかと思う。
エリクソ ンは日本・東京で使えないが、香港や多くのアジアの国では使える と聞く。
欧州では携帯電話はそれほど、普及していないので、それほど気に ならないが、東京では電車の中、駅のホームでもピーピーとうるさ い。
しだいに、人が周囲にいようがいまいが、気にせずに携帯電話を使用するひとの比率が大多数になり、これを甘んじて受け入れな ければならないのがやや不満であるが現実のようである。
それでも、わたしは一人で運転しているときには、携帯がなってもとらないで、自動録音モードにしておいて運転し終わってから、ゆ っくりと聞く。
この自動車と携帯電話の組み合わせであるが、わた しの場合、ひとを車で迎えに行くときに、車の中から今おたくの前に着いていますので出て来てくださいと連絡するのに便利だ。
家内が助手席に乗っているときには、あと2-3分で着きますので、家から出て来ておいてくださいと走行中にお願いすることも可能だ。
パーティーなどに呼ばれて、交通渋滞などで、時間に遅れそうなときなどに、助手席の家内から主宰者側に連絡しておけるのは助か る。
また、まだ経験はないが、自分の車が故障を起こし、スイス自 動車クラブに修理の援助を求めるときなど、近くに公衆電話が無いおりには、携帯は便利と思う。
また、われわれのようにスイス・フランス・ドイツの三国国境地帯 に住んでいるものには、それぞれの国の公衆電話のカード、コイン が異なっていて、それぞれを持っていることが面倒なときには、携帯電話を持っていて、動き回ると便利である。
車で五分も走り、フ ランスに行くと携帯の電波域がフランス・テレコムに変わり、スイスまでの国際電話になる。
わたしのゴルフ場がフランス・アルザス にあるので、ゴルフのあと遅くなる旨家に連絡するときに携帯は便 利だ。
会議中には原則、スイッチをきるが、もしきり忘れたときには、失礼といって、室外に出る。
参加メンバーが同意すれば、会議中に外 部の部下などに携帯で問い合わせることなども技術的には可能であ る。
携帯と通常電話が同時に使える場面では、携帯は割高なので使わない。
わかいひとのなかには、通常電話を解約して、携帯電話だけに するひともいるらしい。
わたしの場合には、携帯の方が音声が悪い ので、通常電話は解約しないで使っている。
しかし、国外に住んで いるため、通常はアイドル化している東京の通常電話は止めて、携帯だけにすることもいいかなと考えている。
携帯電話の電話番号をどのように人に与えるかは、業務上の大切な 配慮である。
仕事の上では、通常電話に録音機能があり、緊急の場 合、秘書が電話を取ったり、秘書に電話が掛かるので、連絡が付 く。
それでも、携帯へのアクセスをどの程度許すかは大事なもの で、わたしはある程度限定的にしている。
携帯はわたしの場合、自 分から掛けるのが4に対し、掛かってくるのは1くらいである。
このように、携帯電話は忙しい現代の生活を支援するものではある が、ないで済ませることができれば、そのほうが良いと思う。オフ ィスと家に行ったりきたりする時、外出のおりに、電話を携帯して いるか否か、いつもチェックしていなければならない。
また、常に 携帯の充電状態をチェックし、機能するよう維持しなければならな い。わたしの場合、背広のうちポケットに入れているが、机のかど などに打ち付けて壊したりしないように注意しなければならない。
私用と公用の電話の使い分けもかなりわずらわしい。
今のところ、携帯電話とハンド・ヘルド・コンピュータを接続し た、携帯端末はコストの面から折り合わないため、利用する気はな い。
オフィス、家でもコンピュータを使っているので、旅行先まで アクセスする気にはなれない。
昨年、はじめて携帯電話を持ったときには、歩いているときにも、 胸のポケットにある携帯電話と世界とが結びついているようで静か な興奮を覚えたように記憶している。
しかし、仕事を辞めた場合には、自分のお金で携帯電話を買うことは無いと思う。
便利さとこころの平安の間にどのようなバランスを保つか、古くて新しい課題の ように思えてならない。
老齢プログラマの所感
1998年、当時は携帯電話の最盛期でした。
今では携帯電話はすっかり見なくなり、スマホに代わってしまいましたね。
お陰で井浦さんが書いていらっしゃる生活習慣が変わり、電話ボックスや公衆電話がなくなって町の風景が変わりました。
更にスマホに変わり、一部の人しか使わなかったパソコンをほぼ誰もが使うようになりました。
当時、井浦さんは「仕事を辞めた場合に は、自分のお金で携帯電話を買うことは無いと思う」だそうですが、今じゃ後期高齢者の老人も自分でスマホを買う時代になりました。
世界の後進国と言われる電話が使えなかった地域でも、携帯が使えるようになって世界が変わりました。
井浦さんの、当時は新鮮だった感覚も、「昔はそうだったね」と振り返る話題になってしまいました。

補足
上の記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の住職の遺作「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さり、今は住職の息子によって公開されています。
当時、このようにお世話になったことを思い出し、復刻していました。
ある日突然、「ライン随想録」の目次が検索で見つかるようになりました。
しかし、ここから記事へのリンクが途切れています。
これが理由で、今まで検索しても表示されなかったのかもしれません。
そのため、復刻作業は今までどおり続けることにします。

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