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ライン随想録 スイス発・気球による初の世界一周

1999/03/22 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより

随想録

1999年3月1日、Breitling Orbiter 3号は多くの見送りを得て、アルペンホルンの奏でられる中、スイス・グリュエール近くのシャト・デーを世界一周の旅に出発していった。
当時、ローザンヌ在住であったスイス日本サイバーグループの増本博さんがこの出発式に参加され貴重な映像を提供してくださった(巻末URL 参照)。
Breitling Orbiter プロジェクトは過去2回とも失敗し、このほかにもVirgin Atlantic ブランソン社長の気球など、これまでにいくつもの、世界一周への挑戦失敗があった。
このBreitling Orbiter 3号の挑戦もうまく行けば良いのにと期待を込めてはいたが、誰も必ずしも成功への確信はなかったに 違いない。
私も3月1日に、このプロジェクトの推進本部のホームページ(URL は巻末)に"成功を祈る"とメッセージを書きこんでおいた。
Breitling Orbiter3号は、偏西風に乗って順調な飛行を続け、約3週間後の 3月20日、GMT12:00ごろアフリカ上空、マリまたはモーリタニアで、世界一周 を達成することが確実となった。世界初の快挙である。

これまで、マゼランの世界一周、飛行機による世界一周、ヨットによる世界一 周などいろいろな記録があったが、この気球による世界一周は風任せの飛行でエコロジー上にも極めて興味がある。
このBreitling Orbiter プロジェクトは英 国・スイスのジョイントプロジェクトとも言うべきもので、気球製作は英国、ブリストルのCameron Balloons社、精密時計・精密機器の世界的なメーカーであるスイス・Breitling社が中核的なスポンサーである。
Breitling社の同プロジェ クト・ディレクター、Stefano Albinati はプレスからどれほどの費用が掛か ったかと聞かれるといつも「このプロジェクトはわれわれの夢であった」とのみ 述べて、詳細をあきらかにしなかったと言う。
パイロットは、スイス人、 Bertland Piccard と英国人 Brian Jones で、約1万メートルの上空で約7- 8度の寒さに3週間も耐えなければならない。

今回確実視されている初の成功のかぎは、中国が上空通過を認めたことと、燃料に灯油でなく、液体プロパンを使ったことによると言われている。
Breitling Orbiterの前2回に失敗は97年1月の地中海への墜落、98年2月のミャンマーでの墜落であったが、このときは中国の承認が得られず、回り道をしようとして気流の不安定なミャンマーで不時着した。
Piccardはこのため、3度目の挑戦 のため直接中国まで出向き、事前に上空通過の許可を取り付けている。
燃料の液体プロパンは灯油より重いが燃焼のための信頼度が確実に高いという。
今回はこ の液体プロパンを前回より20パーセントも増大し、100Kg入りの容器を28 個も搭載している。

気球には精密なエレクトロニクスの粋を集めた航路誘導装置、ジュネーブの本部との交信のための人工衛星コミュニケーション装置を搭載し、この電源として 20個の太陽光発電装置を気球に貼り付けてあるという。
風任せの気球飛行とは 言え、高度を保つための燃料、位置確認、交信のための各種機器の搭載・維持・ 管理が不可欠のようである。
このプロジェクトは当初からInternet Home Page で詳細が発信され、世界中の人々との間でインターアクティブな交流がなされていたことも興味深い。

日ごろ、騒ぐことの少ないスイスのプレスもこのプロジェクトの成功にはかな り大きなスペースを割いて報道しており、地元では静かな興奮の輪が広がっているようである。
ここで面白いのは、公的な支援が全くないこと、スイスの分をわきまえ、英国とのジョイント・プロジェクトとしていることである。
それにも増して、この気球プロジェクトには、太陽電池、偏西風まかせ、といった「環境に やさしい」と言った点が多くのひとの心を捉え、「夢」を膨らませるものらし い。
これが「21世紀」を展望する大きなテーマになることに皆が気づき始めた のかもしれない。

それにしても、気球内のパイロットのPiccard, Jones 両名は風邪ぎみで、 髭ぼうぼうであるという。
食べ物も新鮮な食料は一週間で底をつき、乾燥食品の みでがんばっているらしい。
トイレはあるが、シャワーはないという。
早く、成功の内に地上に降り立ち暖かいシャワーでも浴びさせてやりたいものである。

(注:以下のリンクは途切れています)
増本さんによるシャトーデー出発の光景。3月1日。http://plaza6.mbn.or.jp/~denji_ken/home.html

Breitling Orbiter 3 Official Homepage
http://www.breitling-orbiter.ch/breitling/breit98/eng/index.html  

老齢プログラマの所感

井浦さんは、このような挑戦をする人々やプロジェクトがお好みらしい。
後に立ち上げられた日本エンジェルズ・フォーラムは、そのようなお気持ちを具体化したものでしょうか。
このようなプロジェクトは多くの人をワクワクさせます。

「日本にベンチャーを応援する人はいない、シリコンバレーに行くしかない」とは当時よく聞いた話です。
井浦さんは、日本にもこのような人を応援したい人(エンジェル)がいるはずと思ってメーリングリストで呼びかけ、日本エンジェルズ・フォーラムを立ち上げられたのですね。
日本に新しいビジネスを始めようと言う人に対する応援の仕組みを根付かせてくださったのは井浦さんだったのですね。

補足

上の記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の住職の遺作「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さり、今は住職の息子によって公開されています。
当時、このようにお世話になったことを思い出し、復刻していました。

ある日突然、「ライン随想録」の目次が検索で見つかるようになりました。
しかし、ここから記事へのリンクが途切れています。
これが理由で、今まで検索しても表示されなかったのかもしれません。
そのため、復刻作業は今までどおり続けることにします。


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