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ライン随想録 我々が恐れるべきものは恐れる心それ自身だ

1999/02/09 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより

随想録 

「我々が恐れるべきものは恐れる心それ自身だ」
これは1930年代、アメリカの大統領・フランクリン・D・ルーズベルトが行った著名な演説の一節である。
大不況の折アメリカでは、恐怖が恐怖をよび、ス パイラル的に経済、社会が悪化していった。
ルーズベルトは悪循環を断ち切るた めに、この言葉を語ったのであろう。
”What we should fear is fear itself. ” この言葉は平成大不況のもとで萎縮している現在の日本にそのまま当てはまるであろう。
でもここでは、経済の話しに深入りはしない。

メンタル (心)の側面とパフォーマンス(結果)にはかなり微妙な関係があることには多くのかたが先刻ご存知のことだろう。
たとえば、テニス・ゴルフのようなスポーツ。
結果を出そうとあせるとかえってうまく行かないことが多い。
テニスでもごく簡単なボレーがあがると「これで楽 勝」と思い力が入ってネットにかけたりする。
ゴルフでも1打、2打がうまく行 くと、これでパーは堅いと力んでしまい、3打目をチョロしたりすることがよくある。
日本人はスポーツの選手に「がんばれ、がんばれ」と力を入れるよう声をかけるが、アメリカ人は”Take-it-easy” とリラックスするように声をかける。
日本ではスポーツの時に、選手がガムを噛んだりすると不真面目だ、不見識 だと観客は怒るが、アメリカにおいてはガムは緊張を解きほぐす手段として多くのひとに受け入れられているようだ。
オリンピックなどで、日本選手がメダルをいくつ取るかに、関心がいつも集まるが、その選手が自己最高の記録を更新するような時には絶賛をあたえるのが正しいような気がする。

「恐れるべきものは恐れるこころそれ自身だ」、と言うことは人間の病気とその反応にもあてはまるのではないだろうか。
昔から、「病(やまい)は気から」と 言われている。
病気に対する心配そのものが大きなストレスとなり、これが体調そのものをさらに悪化させてしまうということが良くあるだろう。
心配によるス トレスが自律神経、ホルモンのバランスを崩しかえって病状を悪化させてしま う。
エドガ-・アラン・ポーの「大渦巻き」で九死に一生を得た主人公が一夜に して髪の毛が真っ白になったことをご記憶のかたが多いだろう。
「ガン」を宣告され自暴自棄となって死期が早まったり、前倒しの抗がん剤服用で体調がかえって悪化し、命をちぢめてしまうのはいかがなものかと思う。

パソコン利用でも、本来楽しかるべき通信・交流が機械の故障、誤作動の心配などからストレスを感じている人も多いに違いない。
初心者のひとが他の慣れた人に迷惑をかけるかもしれないことで心配でびくびくするようなケースも少なくないようである。

恐怖心がわれわれの生活を我々の体を覆い尽くしてしまわないようにするにはどうしたら良いのだろうか。
これには常々、「心のゆとりを持つようにすること」 「気分転換をたくみに図るようにすること」「逆張り、衆にむれない態度をとる こと」といった精神構造をもつようトレーニングすることが大切ではないかと思う。

1930年代のアメリカでは株が暴落し失業者が町にあふれたために、それほど 実害の無かった一般の人々までが、財布の紐を堅くし、これが一層不況を深刻化した。
これを避けるためにルーズベルト大統領が異例の呼びかけを行ったのであろう。
今の日本でも、仕事を持ち収入が安定している人々は、住宅金利も低くなっていることだし、住宅・マンションの取得をする良い機会と思う。
みなの心に 不安と心配が広がっているような今の時期こそが、後になって住宅価格が底値で あったと思い出すに違いない。
最近、失業した際の補償付きの住宅ローンが売り出されていると聞いているが時宜をえた優れた商品だと思う。

スポーツでのメンタル面での克服には「自分が全力を出しきれば結果は一切問わない」という強い意志が必要であろう。
ゴルフでも、テニスでも、また他のスポ ーツでも、一打一球に一喜一憂しないことが大事と思う。
わたしのような素人ゴルフは一ラウンドのうちに、かならず8つや10のミスショットが起こる。
ひとつミスが出てもこれに怒ったり、悔やんだりせず、10予定されたミスの一つが たまたま出たものと割り切るようにしている。
良いスコアがたまたま一部に出ても、これを続けることの難しさを常に思い起こすようにしている。
若い人と一緒 にゴルフに行くと、ひとつのミスショットにくさって、ミスを続けたり、投げやりになったりする人が少なくない。
ミスをしたときに、「遠くの山をみなさい」 とか「今日の天気はよいですな」などと話しかけて上手に気分を転換するように 勧めている。

病気などにより体調が落ちてくると、人々は気持ちが暗くなり悪いほう悪いほうを予想して往々にして悪循環におちいってしまう。
気分を転換するといってもそう簡単ではないだろう。
きれいごとかもしれないが、病気への恐怖、死への恐怖 ということは健康なとき、正常なときにどれだけ燃焼し尽くして人生を送ってき たかということに関連しているのではなかろうか。
自分で完全に燃焼し尽くして 人生に取り組んできたと考えている人は比較的余裕をもって人生の終末期を迎え ることができよう。
遅かれ早かれ誰しもが、病気なりで死を迎えることになる。
自分の病気だけにこころのすべてを奪われないで、体調・体力に少しでも余裕が 残っていれば、社会のため他人のためお役にたつことはないか考えてみることも 大事なのではなかろうか。

わたしは過去15年間ほど、パソコン通信、コンピュータ通信を楽しんできた。
ここ数年年配の方々を含め多くの方々がこうした交流の輪に新規に参加していただくようになっている。
そのような初心のかたがたの心には、新しい取り組みに対する「不安と恐怖」が交錯しているように思えてならない。
機械の故障、誤作動、他人に対するエチケット不足などが不安の根底にあるように思う。
この点もわたしは実に「おおらかに」構えている。
とくにインターネットの世界では異な った機種、異なった言語のコンピュータがグルーバルな網のもとで交信してい る。
こうしたところでは、一部で文字化けを起こしたり、予想したものが届かな かったり、誤作動で二重に送信されたりすることはいたし方がないと思う。
そう した一部の問題をおぎなってあまりあるほどのすばらしさをインターネットの世界はもち合わせている。
きわめて重要な情報交換は電話・FAX・手紙により補完 することが大事と思う。
初心者のかたはリップサービスだけかもしれないが、正常な交信ができないのではないかという「不安と恐怖」がいつもつきまとうと語 りかけてくる。
できることならば、こうしたインターネット交信の世界では誰で もが「二重のハードとソフトのシステム」(いわゆるパラレルラン)を構築する のが良いと思っている。
そうした安全ネットをつくったならば、あとは「おおら かに」構え、細かいことに「エチケット」を押しつけてくるいわゆる「教え魔」 には耳を貸さないようにすることが必要のようだ。

ここでも、「われわれが恐れるべきものは恐れる心それ自身だ」ということが当てはまると思う。

老齢プログラマの所感

今では、ストレスは健康に悪いことは良く知られています。
日本では、労働省が1995年から1999年にかけて「労働の場におけるストレス及びその健康影響に関する研究」を行ったとのことです。

ルーズベルトの「恐れるべき唯一のものは、恐れそのものである」は、1933年の彼の最初の就任演説で、当時のアメリカが大恐慌の真っ只中にあった状況で述べられたものですね。
恐怖がどれほど大きな障害となり得るか、この言葉にはそれを克服する力が内在していることを彼は認識していたのですね。
現代においても、このメッセージは多くの人々にとって重要な教訓となると思います。

補足

上の記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の住職の遺作「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さり、今は住職の息子によって公開されています。
当時、このようにお世話になったことを思い出し、復刻していました。

ある日突然、「ライン随想録」の目次が検索で見つかるようになりました。
しかし、ここから記事へのリンクが途切れています。
これが理由で、今まで検索しても表示されなかったのかもしれません。
そのため、復刻作業は今までどおり続けることにします。


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