18本のBL小説を読んだレビュー
皆さんいかがお過ごしですか?私は、私です。
突然ですが、自分が開催している小説企画に参加してくださった小説のレビューします。
「ふと、振り返るとそこには」の書き出しと
「過去回想や回帰なし」のストーリー展開で
19人の作家が書く3000〜5000字のブロマンス〜BL
小説を読んでいると、物語の中盤で「そういえばあの頃も今と同じ風が吹いていた〜」なんてくだりをよく読む。
そこから人物の過去回が始まり、物語は核心に迫っていく。
みんなあの日の俺、好きだよなぁ、思い出とか過去の傷とか突然の失踪とか。
それがどれだけ物語を深めるか、よくわかった上で一回、その回想回帰をかなぐり捨てて地獄の縛りで小説を書く企画を開催。
なんと18人も挑戦してくれました。
※これはあくまでも個人の感想です。
自分の表現が上手くやれたか?の答え合わせではありません。
人にはそれぞれの経験値による判断や解釈があります。
そこから生まれる新しい視点、読み方、読者の人生背景。
世に作品を放つと、色んな判断基準を持つ読者の解釈で、あなたが作った物語に更に背景が付いていく。
それが「顔の見えない、人に読んでもらうこと」の面白みだと私は思います。
ここから書くレビューは参加してくださった作家さんに向けて書いていますが、これを読んで作品が気になった人のために、タイトルをクリックすると小説に飛べるようにしています。
『似てない兄弟』現代ヒューマンドラマ
木野山キノ さん!
一時期流行った決まり文句と言いますか、オタクのお決まりコメントで、絶対に好き同士なのにお互い気付かない展開に対して「お前ら結婚しろ!」というのがあった。
BLにおいてはブラコン至上主義(兄貴に盲目すぎるデカい弟推奨派)の私が思うその一言に対するレスポンスは、結婚?それが何?一択である。
結婚イコール家族になるってことだとすれば、私の好きなカップリングは生まれた時から達成している。
やから「あ、すいません。結婚しなくても私の好きなカップリングは生まれた時から家族なんで!と、誰にかは知らんが手刀切って余裕をぶっこき通り過ぎていた。
だが、キノさんの『似てない兄弟』を読んで、この解釈はちょっと違うかと思い直した。
そう、BLのブラコンにおける兄弟は、あくまでも片思いから恋愛関係を経て、結婚に至り家族を再構築せねばならないのだと。
しかもさ、この話のタイトルを読めば分かるだろうが、「似てない」ということは皆なまで言わずもがな、血筋がないということ。
一つ屋根の下で好きな人と家族ごっこやぞ?どないしたらいいねんそんなん。脳みそと下半身が夢で膨らんでパーンして終わる。結婚に至るまでの過程、美味しい。
とりあえず、今まで聞き捨てたセリフを拾うところから始めよう。
幸太、誠ニ!お前ら結婚しろ!!
『繋いだ手は嘘なんかじゃない』ヒューマンドラマ
syo⭐︎さん!
痛々しい家族間の執着問題に救いの手を差し向ける人の話を読む時、私は人がこの話をどの目線で読んでいるのかが気になってしまう。
作者のsyo⭐︎さんは傷ついた少年に手を差し伸べて保護をする「おじさん」の目線で書いているが、手を差し伸べられて保護をされる「エイク」に感情移入する人も多いはず。
私はといえば、おじさんからエイクを奪い返しにきた終盤の父親の登場に「おとん、どないしてん?お前にも何があったんや?」と謎の飛び火をする注意力散漫の目線で読む困ったちゃん。
みなまで語れないが、こんな話の第三者はその人自体も問題を抱えている…と顎に手を添え読むのをやめて気がつく、これはBLやからそんなポッと出のおっさんは愛し合う2人の間を邪魔する悪もんとしてスッパリと読んでいいのよと。
過去回帰を封じて書くと、登場人物の背景のヒントが削がれて今目の前にあるリアルが嫌というほど浮き上がり、さらに背後で動く人間の生臭い息まで感じてしまうから、全ての人間が気になってくるからいつもに増して無視できないし、これも作家さんの構想の手腕と言える。
執着しあう関係がBLの世界では良きとされている節もあるが、おじさんとエイクの互いを思うが故の最後の決断は唸る、これは自分の為に人を思える人間の英断。
そんで、エイクのおとん。辛いんやったらなみさん話聞こか?
『振り返んな』青春
炭素/肺とダイヤモンドさん!
おいハヤト。自分、若いのにいい奴すぎんか?
ソウタ、お前もお前やで?もっと貪欲になってええねんで?
私は大人のジトジトしたしがらみ系恋愛には腕を振り上げて「モタモタしてたら墓場やぞ!」と追いかけるスタイルをとっているが、青春もののはっきりしない関係性やもどかしさには登場人物にの心の中に直接語りかけるお節介ババァに成り下がる。歳をとるって厄介ね。
おばちゃんもね、自分のエゴより好きな人の現状やこれからを優先して引き下がる若者好きなのよ?でもな、ここで堂々滾って推しでもしたら、青田買いって言われかねんから黙ってんねん。
そんなおばちゃんから若い2人に2つだけ言いたいことがある。1つ、若い恋愛はとにかく走れ!
赤信号?アホかそんなん青春の前でただの赤く光る棒や!そんなんに気ぃ取られてたら好きな男の棒をられるぞ!ここで振り返ったら、一生しがらみだらけの恋愛してまうおっさんBLが出来上がるんやぞ!
おばちゃん、靴買うたるわ、あれか?あれがえぇんか?瞬足か?
立ち止まるなよ、駆け抜けろよ、でもここでもう1つ大人になる君らに言わなあかんことがある。
王道のBL好きな人は過去のしがらみとか、ここで走れずに2人で心中するようなドロドロ固執が好きな人も一定数おる、いや大多数かもしれん。
それも踏まえて進路を考えなさいよ、おばちゃんからは以上です。
『めぐりくるはる』職業モノ/ヒューマンドラマ
きさらぎ冬青さん!
BL企画を立ち上げて、少しずつだが作家さんが様子見を始め出した頃。
多分、最古参の参加者であるかし子嬢に「私の作品、ちゃんとBLなのかな?」と聞かれて答えた。
「作中に男がいて重い感情抱いてたらBL、そもそも、この企画の前提にBLがついてるから読者は勝手にそう読むからいける」
今思えばトチ狂った極論だが、書いた作者がBLのつもりでなくても読者はなんかいい感じの男が数人いてわちゃついてたらBLに読んでくれるし、作者の意図しないところで読者の脳内でカップリングが成立していることもなくは無い。
それが二次創作の域なんですが、きさらぎさんの今回の作品もそうゆう解釈で読むと二度三度美味い。
ちょっと要素が薄いかな?と思っても、読者は手持ちのBL醤油をさっとひとかけ「ウホ、おじいちゃん先生との老い楽の恋も美味いでヤンス!あ、物語には関係ない舞台端に金髪碧眼のイケメンの気配…?乱世!乱世!」
はっきりとカップリングが分かるものだけがBLではない。
作者も書かない舞台端のモブまで妄想出来る作品がBLの良作とも言える。
何しか美味しいBL飯は作者の表現力による没入感でも決まる。きさらぎさん、ごっつぁんです!
『歳月』ヒューマンドラマ
星屑さん!
ショートショートなら思い出なんかいらんけど、文字数がそれなりにある話には思い出はちょっと欲しい。
しかも回想回帰無しで恋愛ものを書くのはけっこう大変なんですよね。
だが、星屑さんは10分しか記憶を保持できない主人公の苦悩を描いた「メメント」のような繰り返しを使うことで打破し、時代年表のように物語を展開しながら登場人物の切ない片思いの一生を描いた。
みたいな感じでコメントをしたが。
実は読みながらずっと私の脳内ではTHE虎舞竜のロードが流れていた。
もしや14章くらいまでこのテンポでいくのか、星屑さん。私、タイラーに感情移入して泣いちゃう。
何度も繰り返される「ふと、振り返るとそこには」で書き出されていく、主人公のタイラーのランスへの秘密の思慕より、振り返るたびに結婚、子供とランスが手に入れていく人並みの幸せが、昔はやったちょっとずつ近づいてくる系のホラーも連想される。
ここでうっかり、ふと振り返るとそこには、死んだはずのランスが一番輝いていた頃の姿で立っていて…とロマンチックに進めばいいけど、今回の企画は回想回帰はなしだっけ?それにしても虎舞竜でネタ古いな。
追加してくれた後書き記事に、星屑さんも書いてましたが、私も思い出引きずり倒しているな。
『The Missing Piece』ヒューマンドラマ
トカゲ🦎さん!
トカゲさんの小説を読みながら、そういえばあんまり洋楽って過去をつらつら歌ったりしないよなぁ?と気がついた。
小説の設定が雨のロンドンで、登場人物が理想の『音』を探しているからそれに引っ張られた部分もあるが、洋楽のいいところは、過去に起きた過ちや最低な奴を歌っていても、今現在の自分がその人や思い出にぶつけたい感情を言葉にした“今“の歌になっていること。
対して日本の歌はちょっと思い出に引っ張られたおセンチな歌詞が多かったり、別れても好きな人の歌が多い。
天下のミスチル様だって別れた女に「今以上に綺麗になってないで」と嘆く世界線の中、欧米諸国は「俺と別れたお前は綺麗だ」と誇る。辛い過去の清算の仕方が見事に違う。
普段のトカゲさんの小説を読んでいないから分からないが、設定や背景に合わせて文体や思考まで合わせているならすごい模倣力やなぁ。
とか意気揚々と言うて「あ、なみさん。トカゲはいつもこんな感じでやらしてもうてますぅ〜」て返されたらカッコ悪いな。思ってちょっとコメントでは黙った。
でも、レビューをするに際し改めて読むと、やっぱ細かい描写がきちんと書き込まれている。
そう、イギリス英語はエレガントやけど鼻につくよね、とか、ロンドンといえば雨と霧、その湿っぽさと作中の選曲がまたいいんだわ。
何が言いたいかって、小説にも理想の『音』がちゃんとあるってことです。
数田朗さん!
本気の絶望中の人は、普段は馴染みにくいドストエフスキーや太宰治がすらすら入ってくるらしい。
目には目を歯には歯を、冷奴には醤油をと言うように、真逆のものより似通った感情の方が救いになると絶望ソムリエの頭木裕樹さんがおっしゃっていた。
だから落ち込んでいる人を励ますと言う行為はとても難しいし、自分も同じくらい絶望した記憶がある人は下手な共感をせず寄り添える。
そしてこんな時に一番やっちゃいけないのが「私なんかね〜」「そうそう職場の先輩が」と話を奪うこと。
この『Go.』の主人公は好きだった人に彼女が出来て約束をすっぽかされ事実上の失恋をした“僕“がひょんなことから路上でポジティブな言葉を売る男、奏司と出会う。
最初は彼が色紙に書いた文字達に反吐が出たが、飾らない素の文字で書かれた“愛“の色紙に目が行く。
私が一番心を打った部分は、奏司が僕にとる対応。
根掘り葉掘りとも聞かず、程よく話させ自分が思ったレスポンスを誠実に返す。
売られている言葉はよくあるテンプレのポジティブな言葉かもしれないが、奏司が僕に返す言葉は全て飾らない彼の愛のある言葉。
優しさよりも思い遣り、これを書いた数田さんも明けない夜を何度も乗り越えた人なんだろうなぁと感じた。
ちなみに私が露店で文字を売るなら「イチモツ」と「パンティ」です。これも飾らない私の心ですから。
『なだらかな奈落』人間ドラマ
岡埜由木古(旧:偏光)さん!
過去を回帰せずに過去を書く、岡埜さんはいち早く今回のお題の縛り部分の抜け道を見つけてタイムマシーンに乗って行った。
そう、そうなのよ。
続きもん(先月書いてくれたお話の続き)をどうしても書きたかったら、そもそも舞台を過去にすればいいんですよ!そのためならドラえもんの一匹や二匹探せるわけで。
まぁ、岡埜さんのようなしっかりしたのび太くんがいたらドラちゃんも暇でしょうが、まんまとタイムマシンに乗って大学時代まで遡り、登場人物の馴れ初めを書いたんですわ!
まぁそこまでは参加の際にコメントでやり取りしていたんで「来るな」と時空の狭間を私は見つめ、投稿日当日はしかと待ち伏せていたわけですが、読み始めたらまぁ、すっかりやられました。
何にて完全な伏線に!
あらすじにある拓海の“本音“が2人の目眩くキャンパスライフで語られるのかと思ったら、まさかのさらにヒントだけ与えて書かずに終了!
ほんで書かんのかい!
のツッコミが空を切る!いや違うな…これはツッコミ待ちの最大のフリ。
ふってふってボケを持ち越す長い長いノリツッコミの途中!
完全にしてやられた!
凪砂いるさん!
昔の月曜日の夜9時に放送される恋愛ドラマはいつもトレンディだった。
私はいるさんのBLを読むと、なんとなくこの頃に憧れまくった恋愛シチュエーションのトレンディに浸る。
茶の間でお茶とお煎餅、少し早めに入浴を済ませて慌ててかけたドライヤーで生乾きの髪のまま見る恋愛ドラマ、あの頃に帰るのだ。
実質、小説の回収時間は朝か昼なのだが、気分はすっかり月曜夜9時。
今回はどんなラブシチュエーションなのだ?え?「当て馬×当て馬」だと?
恋愛ドラマ全9話として大体6話くらいで主人公カップルに失恋して、その陰で一緒になる当て馬同士の恋愛にフォーカスしているなんて!
私は速やかに配役を考える、当て馬、当て馬男子の配役…赤楚衛二!おい皆んな!この小説は赤楚衛二がいるぞ!
だが困ったな、あちこちで浮き名を流し当て馬にされては打ちのめされる紘也は、真面目で一途な当て馬がはまる赤楚衛二ではない。
そもそも紘也は筋肉質な眼鏡くん、赤楚ではないな。
となると、虎視眈々と弱った紘也を解放しながら時を待つ一途な真尋が赤楚衛二。
ほんで、紘也は…マッチョ、メガネ?マ・ドンソク?あ!我らが鈴木亮平…!は、いるさんの小説におらんな。
瀬戸康二か?とやっている間に日が暮れる。
『踏み入れる』恋愛
一吾(イチゴ)さん!
BLにおいての女子の立ち位置云々論争はいったん置いて、私は女子1人男子2人の3人編成が気になった。
物語において3人組とは読者にも作家にも優しい数字である。
「すてきな三にんぐみ」「THE3名様」に「THE ALFEE」前に洋楽好きのフォロワーさんとも話したが、音楽も3回同じ言葉を繰り返すタイトルや、曲中で同じフレーズを3回繰り返す(大黒摩季の「ら・ら・ら」などまさに)ものが多い。
漫画やドラマも3人組が中心の物語が多くあり、たとえ登場人物が三国志くらいいてもその中の3人がフォーカスされがちだ。
基本設計としては2人の男女のカップル+当て馬の赤楚衛二がいる(凪砂いるさんのレビュー参照)
だが、赤楚がいるとこの小説のタイトルは『踏み入れない』になってしまう。
だって赤楚は、横断歩道の反対側にいる形ばかりのズッ友だった2人が、人目を気にせず天下の公道でキッスを交わす、そんな場面を見ながら「やっぱりな」と呟く、そんな塩っぱい雨がよく似合う。
赤楚くんには帰ってもらおう。
さて、得意の3人制バスケに例えたら、ハンドラー、シューター、ディフェンダーで各々の役割がはっきりあるからこそ3人の関係性が成り立つ、これがしっくりくる。
でも一吾さんの作風に無骨なバスケは似合わない、う〜ん。
桜井は繊細、器用な坂崎、見た目は奥様の高見沢。THE ALFEEでファイナルアンサー。
『黒楼館の虜』ミステリー、広義のオフィスラブ
かし子さん!
伝説の漫画『セーラームーン』のタキシード仮面様について、一度はみんな思ったことがあるでしょう。
なんでお前は月野うさぎと、彼女が変身したセーラームーンが同一人物と気付けないのだ?と。
ムー大陸の謎と並ぶ謎問答ゆえ詳細は割愛するが、お決まりのシーンとしていつも平時の2人が互いを嫌いだと罵り合うシーンが差し込まれる。
お互いに「顔も見たくない!」くらい嫌いだから顔を覚えていないのか、セーラームーンはやぶさかで無いが、うさぎには全く興味が持てないから顔を覚えていないのかな?と思っていた。
でも人間は、好きな奴より嫌いな奴の方が実は鮮明に顔を覚えているものだ、だってどちらの感情でも自分の心に強く影響していますから。
文化財か何かに指定された館『黒楼館』に閉じ込められてしまった主人公の男、とは別に一緒に閉じ込められた事態を軽視したような同僚は、こんな時でもお構いなしに自分に好意を押し付けてくる。
暗い館内で2人きり、久しぶりに見た同僚の表情はどこか嬉しそう。
状況を打破するどころか、楽しんでいるようにすら感じる。
細かい顔の設定は書かれていないが、だからこその薄気味悪さや、恋心の邪推も出来る。
ラストのどんでん返しの真相に関しての含みを読む限り、私は両思いにかける。
どんな状況であっても容易にその人の自由を脳内で縛れるほど、主人公の脳内の奥深くに同僚はいるし、自分だけのものにしておきたい執念深さも読み取れるからだ。
ちなみに、タキシード仮面はセーラームーンが毎夜シコシコと地球を悪から救っている最中に乱入バトルを勃発させるエブリナイト・マスカレードなコスプレ男ではなく、前世からの宿命で好きな女を守っている地球の守護神で記憶喪失らしい。
『名前のない、』叙情ホラー
藤間さん!
怪談話に一番多い舞台、夜の学校?墓場?悲惨な事故現場?
ノンノン⭐︎実はラーメン屋。
今はインバウンドの人で溢れかえって価格も高騰してますが、ラーメンってそもそも安くて美味いからジリ貧の苦労時代の味方だったり、人生に翻弄されて打ちひしがれた夜や、やけ酒を飲みすぎたシメの一杯に食べた思い出がたくさん詰まっている。
しかもみんな自分のことで精一杯で、周りなんか見ていない。食べて腹が膨れたら金を払って退散、店主も隣の客も自分の顔より空のラーメン鉢の方がよく見ている。
そんな無関心な店内で1人、自分に関心を向ける後輩の含みのある一言、葱大盛りの秘密。
そこから少しずつ解かれていく主人公の痛みが、本人よりも読者にビシビシ伝わるラーメン屋ホラー。
そう言えば、幽霊ってのははっきり見えているうちが花で、徐々に顔から消えていくらしい。人は人の存在を顔から忘れていくんですってね、そしてそこからが幽霊の、いや魂の二度目の死がやってくる。
だから遺影は顔なんです。
この意味を念頭に藤間さんの話を読むと、なんともラストの『スケッチブック』のシーンが心苦しく優しい、とてつもないラブストーリーになる。
ま、読み方や解釈はそれぞれなんであくまでも私の解釈ですが。
ちなみに幽霊がラーメン屋に集まるのも、今から成仏するために人生の最後のシメの一杯を食べにくるからで、だからラーメン屋には地縛霊がいない、幸せな故人の寄り道の場。
そして最後の餞に一杯奢るのはラーメン屋の店主の宿命で、これほどの名誉はないらしい。
『残雪』SF
大橋ちよさん!
ちょっと、一回私に叫ばせて。
ユナーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!
読んでない人には何の事やらなので簡単に伝えるが、無人島で向こう三軒両隣くらいまでなら養えそうなサバイバル力の残雪と、ちょっとぼんやりタダシが超絶ギリギリぶっちぎりにヤバい風景が崩壊する怪現象に巻き込まれる、世紀末みたいな話なんやけどね。
そこに1人の女の子、ちょっと勝気なユナが合流するところから物語は進むんですが。
私はBLにおいて女とは正義だと思っている派である。
理由としてはそもそもBLを読まないから女の子がいようがいまいが物語が面白く転べばそれが俺の脳内のチョモランマだと思っているからだ。
察せる女がいるから引き立つ物語ってあるんですよ、女を重要ポジションに置いておき、ベットの中では同じ立ち位置になる受けにドキっとさせて、カレーの隠し味のコーヒーみたいにそんなの入れたら苦いんじゃない?と思わせておいてからの〜の、女の潔さが美味い!
展開としてはBLでない話だと男女が生き残るパターンが多く、ここから子孫を残すアダムとイブね!となるのだが、ここはアダム×アダムの世界。
じゃあ滅んじゃうじゃん!と思う事勿れ、アダムとアダムでも世界は救われるのです。
そっか!ここは我らがBLの世界!男が妊娠するのね?の、ご都合主義もなく、2人がいれば〜なちょっと傲慢な心中もなく、2人は「今」で愛し合う。このシーンが粋でしたね。
でもきっと最後のシーンのバックでは、バトルマンガの新章が始まる伏線のエンディングみたいにちょっと透けてるユナのアップが親指立てて微笑んでいる。
『宇宙人ポール』SF
四四田 鹿辰(ヨシダナレシカ)さん!
果たして、何人が同じタイトルのコメディ映画を見たことがあるのだろうか。
簡単に言えば、男2人が宇宙人を保護してバタバタするよくあるっちゃよくあるコメディなんですがね。
私はいつもドMなお題をみんなにぶん投げるだけでなく、たまに個人課題を話の流れで出すんですが、今回は四四田さん(以下普段のニックネームのボクちん)にみんなと同じ書き出しと縛りに加え「宇宙人ポール」を追加した。
うちは言わずもがな、投稿してもらうのは一次創作が基本のルールである。
そこに同名ハリウッド映画をブッ込ませ、二次創作はダメだかんね?と鬼軍曹のようなことを放ち、集中集中!と手を打って退散。
長州小力に「長州力のモノマネはダメだかんね?」と言い放って満席の舞台に押し出すようなものである。
大丈夫。なみさんぼく、キレてないっすよ?ボクちんはそんなスタンスでいてくれるが、追加しておきながら内心ハラハラではある。
なんせ、プロレスは下剋上上等の盛り上がれば何でもありな世界、1人だけ金網電流デスマッチに放り込まれていつまでも笑っていられるはずがない。
だが、四四田、こいつ、やりおった。
アメニモマケズ、カゼニモマケズ、コメディにも逃げず、平等と対等の狭間のような何なら世界情勢にまで手をかけた壮大な話に仕上げおった。
これはレビューとは言えないが、ボクちんの偉業を私は賞賛したい。あっぱれ!
『断章』純文学(風)
月は東にさん!
毎日が卒業式当日くらい思い出をいっぱい書き込んで、それをずっと回想する展開で物語を書く月さん。
今回、ある意味で一番苦労したのはこの方ではないでしょうか。
そしていつも煮え切れず、時間の流れで苦い過去を誤魔化し続ける良質な失恋おじさんを量産して私に毎月、出荷してくれる。
先に言うが、物語の主人公はこの失恋おじさん達ではない。何を隠そう私が勝手に拾っているだけだ。
今回の失恋おじさんはどんな塩梅だい?
ふむ、月さんお得意のお家問題と痛みのある失恋、そして未練を煮しめて涙で飾った肖像画!BL好きの人にはたまらんシチュエーションやないか?の後ろに控える、失恋の煮しめが入った煮物椀を抱えた失恋おじさん(お父さん)!!
おじさんあのな、青春時代は俊足やねん。
置いていかれんようにしっかり好きピの手を握って駆け抜けんと後悔ばっかりすんねんでって、なみさん、肺とダイヤモンドさんのとこでも言うたでしょ。
でもねぇ、未練で煮しめた失恋おじさんと深夜ひっそり食う白米、美味いんですわ。
出来れば「お互いを求めきれずに置いてきたはずのあの日のお前」の出汁もぶっかけて、さっぱり失恋猫まんまにして2人でサラサラかっこみたい。
本編とは関係ないが、私が想像する月さんの作る失恋おじさんは、夜な夜な自社ビルから少し入った路地にある定員4名のカウンターしかないバーでブルームーンをオーダーし「俺、いい年して何やってんだろ…」と一筋の涙で頬を温めている。
明日は走れよ、青春はお前次第で何度でもやってくるんやからな。アキレス腱は年齢的に諦めろ、断裂してでも好きな男は追いかけるんやで。
『グッドナイトブルー』現代紀行フィクション
トウジョウトシキさん!
モンゴルの平原は人生を前に進めるにはぴったりのロケーションやと物語の中盤で思った。
しんどい時は甘えた方がいいかも知れんけど、甘えれる時ってまだ余力があるし、この小説の主人公はまだ余力を残してもがいているから、あえて過酷な環境と広い景色を見にきたんだろうなと勝手に納得。
そう、企画の小説の回収中盤の私の頭はパヤパヤである。むしろ、この小説を読みながら私もモンゴル行って何もない草原とか、果てのない砂漠とか、大陸の風を感じたい!
島国出身やと感じれないですからねぇ、国境とか。
物語のキーポイントはイマジナリーフレンド。
こいつは厄介なものを出してきたね、トウジョウさん!でも回想回帰無しで前に進む人の話に仕上げるなら、技を捻ったなと思いながら私もアレクサに声をかける。
「アレクサ、モンゴルっぽい曲をかけて…へいSiri、チケットのリセール状況の通知来てる?」
そしてふと思う、AIに指示をしている時の自分って、ちょっとイマジナリーフレンドと会話している感出してくるなって。
そう思うと一気にこの小説が臨場感を増すし、アレクサがモンゴル800の「あなたに」なんかかけたもんだから、最後のシーンで私も「先輩!」って叫んでしまった。
過去を置き去りにしたのでなく、自分は今、過去に置き去りにされたのよ。だからやる事は一つ、幸せに向かって前に進まねば。
時が解決すると人はよく言うが、けっきょく人は新しい出会いに心を奪われてやっと前に進める。いい話だな、私は主人公には前に進んでほしい。
そんで、アレクサ。モンパチはモンゴルっぽくないで。
『言語化不能』ファンタジー
ナルさん!
小学一年生になって「木」という漢字を学んだ甥が、自分の苗字である「かしわぎ」の木を漢字で書くように先生に言われ「かしわ木」と書いて最後に木に濁点を打ったことがある。
そうね、そのままだと「かしわき」よね、と微笑ましくなったが音読み、訓読みというのは本当に優しさのない日本の文化やなぁと思った。
それでいて甥の打った濁点は、ちゃんと「かしわぎ」だし、見た人が間違わず読めるように思い遣った、感情と表情のある漢字やなぁと思う。
絵手紙に書かれる人の笑顔に見えるようにデザインされた「笑」の漢字は感情だが、甥の濁点の木は人間の誠実さが表れている。
人はそうやってエピソードや愛着で人間を文字化させたり、そこに感情を見出せたりもするが、この話に出てくる小説家の陽斗は生まれつき文字でしか世界を見れない。
人という生き物全てが彼と同じモノの見方をしていればなんてないが、当たり前だがそうはいかない。彼の苦悩の孤独感は底知れない。
でも、人は絶対に見方を変えることができないとも言い切れない。甥の打った濁点のように誰かに対する思いで印象とは変わるのだ。
いつか、彼の目に映る担当編集の薫が「薫」という漢字だけでなく「愛」「好」になればいいなんて思う。
そして、もしも私が陽斗と対峙する機会があったら「変態」と認識されないよう、オープンスケベからムッツリスケベに擬態できる術を明日から学ぼうと思った。
『いつの間にかドラゴンに追いかけられていた〜異世界転移して旅を始めることになりました〜道編』異世界転移
雨宮ロミ(あめみやろみ)さん!
今回の鬼の縛り「過去回想や回帰なし」の火付け役のロミさんだぞ!!
みんな苦しみつつも挑んだのは、同じ部分を少し気にしていたのかも知れないし、そこにいち早く気が付いて封印することで手数を増やすロミさんの目の付け所がすごい。
そしてね、お気づきですか。
前回の続きを今回書いているんですが、あらすじの使い方も上手い。
前回の流れ〜少し物語を進ませて、あらすじを読んだ続きの文で本編がするっと始まってるんです。
何これ気持ちいい。
表現が汚いですが、多分一番納得いく表現にすると途切れずするっとでた一本の💩です。「し」の字書いちゃったよ〜くらいの。
過去は振り返るなと縛っておいて、書き出しで振り返らせた私の便秘まで解消するような素晴らしい出だし!
そこからの疾走感!は、前回の気がついたらドラゴンでブンブン飛んでたほどでなく、今回は少し冒険のスピードを緩めて恋愛モードをフルスロットル!おい、気がついたか?横抱きってお姫様抱っこのことなんだぜ?
しかもさ、主人公は自分の本当にやりたいこととかに悩んでいる=俺って何も出来ないフリーターで、どこにも飛び出せない。草むらのバッタの方がいい飛躍してるくらい落ち込んでいるところに「こうして二人一緒にいると、一人以上に心強い」とか言われるんだぜ。
ありがとう、ロミさん。これで一番最初に書いたキノさんのレビューの伏線回収も出来る。
お前ら、結婚しろ。
全てを一気読みしたい方はこちらの記事を。
全て収録したアンソロジー記事です。
次回のお題発表は3月23日(月)です。
書き忘れてましたが、次回のお題発表は3月23日(月)です。
参加希望の方は、そちらの「挑戦者求む!」記事に、やってやんよ!と参加表明をしてください。
3月28日の夜10時より、企画で投稿してくださった小説を紹介するスペースを、参加者のかし子さんとしています!
アカウントお持ちで時間がある方は、大したことは言わないので安心して聴きにきてください。
アーカイブはかし子さんのアカウントに残ります、興味ある方は合わせてフォローをお願いします。
