繋いだ手は嘘なんかじゃない【noteでBL】
今月もやってきました。なみさんの開催されている企画小説【noteでBL】。
今回は、今までとは少し感じの違う「全員同じ『書き出し』で小説を書く!」と、過去回帰や回想無しという縛りのあるものでした。
参加させていただいている企画は、こちら。
スペースを聞き終わってすぐに、嘘みたいにぶわーっと話が浮かんできて、気がついたら書き終わってました。
久しぶりの感覚で自分でもビックリ。
しかし、今回のは可愛いアオハルでも何でもない、ちょっと変わったストーリーになってると思います。
書きながら、これ大丈夫か?って自問自答してしまいました(笑)
ジャンルとあらすじを書いた後で本編となります。
ジャンル
ヒューマンドラマ
あらすじ
ふと、振り返るとそこには――。
全く知らない男の子が、俺の服の裾をぎゅっと握りしめて立っていた。
ボロボロの服を着て、全身は薄汚れている。
「触るな!」と手を振りほどきたいのにできないのは、真っ直ぐにこちらを見つめてくる瞳があったから。
「俺と一緒に来る?」
この問いかけに男の子が頷くと、俺たちは手を繋いで歩き出す。
お互いの名前も知らない二人の不確かな関係は、少しずつ変化していくのだろうか?
そして、彼の成長した姿に閉じ込めていたはずの男の感情が溢れ出す。
*暴行などのセンシティブな表現がありますので、気をつけてお読みください。
こんな感じのあらすじですが、良かったら本編もお楽しみ頂けると嬉しいです。
繋いだ手は嘘なんかじゃない
ふと、振り返るとそこには――。
全く知らない男の子が、俺の服の裾をぎゅっと握りしめて立っていた。
ボロボロの服を着て、全身は薄汚れている。
本来なら、「触るな!」と手を振りほどいてやりたいところだけれど、そうできないのは、その子がただ真っ直ぐに顔を上げて俺を見つめていたからだ。
ゆっくりと膝を折り、身長差をなくすように屈むと目線を合わせる。それに合わせるようにその子もまた視線を下げて同じ位置で目がかち合った。
「君、迷子?」という俺の問いかけに君が首を横に振る。
迷子じゃないということは、何らかの意図があってここにいるんだということは汲み取れる。
面倒なことに関わるべきじゃないと頭ではわかっているのに、俺は気がつくと自分の手を差し出していた。
「俺と一緒に来る?」
この問いかけに君は静かに頷くと、俺たちは手を繋いで歩き出した。
§§§
名前は、エイクと名付けた。
自宅に連れて帰るとすぐ風呂に入るように伝え、バスタオルと別れた妻との間に生まれたエイクと同じ年くらいの息子の着替えを用意する。
まさかこんなところで役に立つとは思ってもいなかったが――。
風呂から出たエイクは、見違えるほどに美しい容姿をしていた。服のサイズもぴったりで悪くない。
「お腹は空いてない?」
「空いてます……」
「そっか。じゃあ、適当に何か作るからテレビでも見て待ってて」
ダイニングのソファに座らせてテレビをつけると、リモコンをテーブルの上に乗せて「チャンネルは好きに回していいからね」とだけ告げリビングへ向かう。
料理は得意ではないけれど、嫌いじゃない。
冷蔵庫の材料で今作れるのは、オムライスだ。
玉ねぎとピーマンと卵とケチャップを取り出して、野菜は細かくみじん切りにしていく。
ご飯はちょうど二人分残っていたから、野菜を炒めたフライパンの中に全部放り込んでケチャップライスを作った。
残念ながら、鶏肉は入っていないけれど、塩コショウで味もしっかりと入れた。
それを卵で包んだら、オムライスが完成。
「出来たよ。こっちおいで」
リビングにある四人用のテーブルに向かい合わせになるようにオムライスを置いて君を呼ぶけれど、エイクはテレビの画面を見たまま動かない。
そんなエイクにゆっくりと近づいていき、同じようにテレビ画面を見ると、そこにはエイクそっくりな女性の写真が映し出されていた。
【昨日未明に殺害された向坂真樹さん、25歳。死因は全身打撲による内臓破裂。真樹さんには小学生くらいの男のお子様がいるということですが、現在行方がわかっておりません。只今、警察が捜査に当たり行方を探しているとのことです。心当たりのある方は、ご一報をお寄せ下さい】
ただ一点を見つめたままどちらの動きも止まってしまっていた。それを先に破ったのはエイクで、ゆっくり立ち上がるとリビングのテーブルへ歩き出す。
それに続くように俺も立ち上がり向かい合わせに腰を下ろした。
さっきの女性は、おそらくエイクの母親だろう。
彼は何を見て、何をどこまで知っているのか?
でも、それを問いただすことが正解かどうかが俺にはわからない。
だから、何も聞かずに今は二人でオムライスを食べることを優先した。
スプーンを持つ手がおぼつかない。
それでも、ぎゅっと握りしめて目の前のオムライスにがっついている姿は、育ち盛りの男の子、見ているだけで自然と笑顔になっている自分がいた。
§§§
人間の記憶とは不思議なもので、時間が経てば記憶が塗り替えられていく。
気がつけば、七年という月日が経っていた。
眠るときは同じベッドに入り、エイクはぎゅっと俺の肘を摘まむ。
ざらざらとした感触が好きで安心するからと、眠りにつくまで離れることはない。
年頃になってもそれは変わらずに続いていた。
外へ出してやることはできないけれど、家の中では自由な時間を過ごせるようにと、エイク専用の部屋も用意してある。
そんなある日、仕事帰りに妙な違和感に襲われた。誰かに後をつけられている気がしてならない。それを確かめるように足音が響く地下の遊歩道にわざと入り込む。
すると、やはり自分の足音とは別の足音が一定の距離を保ちながら着いてきていることを確信した。
こんな時は慌てない方がいい。
冷静に気づいていないふりをしながら、歩くスピードを変えずに家路へと向かう。
家までの道中に交番はあるけれど、立ち寄ることはできないとわかっている。
どうにか何事もなくマンションまでたどり着くと、玄関を施錠して鳴り止まない心臓を静めるように胸を押さえて息を整える。
「おじさん、帰ってるの?」
「ああ、たった今ね。ただいま」
「おかえりなさい」
「すぐご飯にするから」
「うん。今日はなに?」
「生姜焼きだよ」
「おじさんの生姜焼き、美味しくて好き」
「そっか。出来たら声かけるから部屋で待ってなさい」
「わかった」
少しだけの会話を終えると、エイクは自室へ入っていき、俺は靴を脱いで洗面所へ向かうと手洗いうがいをして、思いっきり顔を洗う。
今起こっていた出来事を掻き消してなかったことにするように。
「出来たよ」
「すぐ行く」
エイクの部屋の前でノックをしてから声をかけると、すぐに返答があった。
出来上がった生姜焼きとサラダと味噌汁をテーブルに並べて、白ご飯をついでいると、リビングのドアが開きエイクが入ってきた。
ここへ来た頃と比べると、ずいぶんと大きくなった。
相変わらず中性的な美しい容姿をしていて、ふとした瞬間にどきりとすることが増えていた。
「はい」
「ありがとう」
白ご飯をついだお茶碗を差し出すと、それを受け取り、豪快に生姜焼きと白米を食べているのに、その姿さえも美しく見えるのは、間違いなく自分の中に変化が現れてきているからだろう。
意識しないようにしてきた。
自分の性癖が溢れてしまわないよう一定の距離を踏み越えずに接してきたはずだったのに、それをも越えてくるエイクの美しさが、どこかでそのネジを狂わせたのかもしれない。
大丈夫、きっと大丈夫だ。
今まで何事もなく過ごしてきたじゃないか、これからも変わらずにこの生活を続けていけばいいだけの話。
思いっきり自分の太股をつねりながら、自分の感情を取り戻そうとしていた。
一段落していつものようにベッドの中で寛いでいると、パジャマ姿になったエイクが寝室のドアを開けて入ってきて、右側の空いたスペースへ潜り込んでくる。
そして俺の肘に手を掛けると、きゅっと摘まんできた。
「今日も肘に触れるの?」
「うん。だっておじさんの肘は、落ち着くから」
「そう。じゃあ、ゆっくりおやすみ」
「おやすみなさい」
30分もしないうちに寝息が聞こえてきて、俺はそっと体を回転させると、眠っているエイクの顔を眺める。
長い睫にしゅっと筋の通った鼻、形の良い唇。見ているだけではなく、触れたい。そんな衝動に駆られながら、眠れない夜を過ごしていた。
ふと途切れた記憶――背中に感じる初めての感覚に目が覚めた。
起きていることが知られてはいけないと咄嗟に脳内変換され、背中に神経を集中させていた。
衣服が擦れる音と、小さく波打つような動きが掛け布団から伝わってきて、頭の中が一瞬真っ白になる。
これは、この年齢の子にとっては決して珍しいことではないし、どちらかといえば当たり前の行為であることはわかっているのに、必要以上に鼻から抜けるような吐息が俺の脳内を犯していく。
しばらく規則正しく動いていた手が速度を速め、びくんと体が跳ねた。
さっきまでの吐息とは明らかに違う息遣いに、振り返りたくなる衝動を押さえ込みながらじっと息を潜めるのに精一杯だ。
ようやく呼吸が整いを見せた頃合いなのか、布団からすーっと立ち上がると、エイクは寝室から静かに出ていったまま、戻ってくることはなかった。
§§§
あれから何事もなかったかのように月日は流れていたが、一つだけ変わったのは、エイクが眠ったのを確認すると、俺は寝室を後にしてダイニングにあるソファで眠るようになっていた。
一緒の部屋にいれば、いつかぷつりと細く繋がっている糸が切れてしまうとわかっているから。
今日もエイクが眠ったのを確認すると寝室を抜け出してリビングへとやって来て、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出すと口へ含む。
ソファに横になり、ようやく眠りにつけるというところで、ふわりと誰かに髪を撫でられた気がした。
「エイクか?」
「おじさん、どうして隣にいないの?」
「なかなか眠れなくてね。起こしちゃ悪いと思ってこっちへ来たんだよ」
「嘘ばっかり……。おじさん、僕と一緒にいると変になるんでしょ?」
「なに言って……、そんなわけないだろ」
「知ってるんだよ。おじさんは、僕がしていること、気づいているよね?」
「エイクくらいの年の男の子には自然なことだよ」
「でも、そんな僕に興奮してる……」
「そんなわけ……」
ないと続けようとした唇を、エイクの人差し指で押さえられ、言葉を飲み込む。
すぐ目の前に月明かりに照らされた妖艶ともいえるエイクが真っ直ぐに俺を見つめていて、気がつけば輪郭をなぞるように指を滑らせていた。
「おじさんは、何も聞かずに僕を大切に育ててくれた」
「それが俺の使命だと信じていたから」
「本当は、ずっと一緒にいたいのに、もうそれは叶わないんだ」
「どういうこと?」
「明日になったら全てがわかるよ。だから、今日は特別に許してあげる」
耳元で囁くように告げられると、ゆっくりと顔が近づいてきて触れるだけのキスが落とされた。
ずっと抑えていた感情は、エイクからのキスと同時に崩壊し、何度も体の奥深くで繋がり合い、二人で果てた。
朝目覚めると、腕の中にはまだ眠ったままのエイクがいる。
愛しさと不安が同じくらいの大きさでどっと押し寄せてきた。
今日、全てがわかるという言葉は何を意味するのだろうか?
これからも、ずっとこの生活が続くと信じてもいいのだろうか?
§§§
いつも通りに仕事を終え身支度を整えると、家に向かって歩き出す。
今日はエイクの好きなオムライスを作ろうと、スーパーで卵を買い、家路を急ぐ。
その帰り道、俺は二人組の男にラチられた。
車に乗せられ、誰もいない河川敷までやってくると、一人の男が俺の体を壁際へ投げ飛ばす。思っている以上に力のある男は、薄ら笑いを浮かべると、そのまま全身に投げる蹴るの暴行を始めた。
容赦ない暴行は、何時間も続き、視界も歪み始めていた。
口からは血の味がし、身体中が痛い。
いや、もうほぼ感覚さえなくなりつつある。
それでも俺は、割れてしまった卵に必死で手を伸ばしていた。
「は、やく……かえらなきゃ……」
「あーあ、今日は僕の大好きなオムライスだったのかな?」
「エ、イク……」
「おじさんのオムライス、大好きだったよ」「な、んで……」
「おじさんのことは大好きだけど、僕はお父さんのために生かされてるんだ。逆らうことなんて出来ない。だから、おじさんともここでお別れだよ。僕を愛してくれてありがとう。バイバイ」
俺の手を握って手の甲へ唇を当てると、エイクはお父さんという男の元へと戻っていく。
薄れ行く意識の中で見送った背中は、小さく震えていた。
何年もの間、共に生活し過ごした日々は決して嘘ばかりではないと信じている。
でも、俺は君の一番にはなれなかったんだね。
それでも俺は、君と出会えたのは偶然じゃなくて必然だと思っている。
だって、こんなにも満たされているのだから。
いつか君も父親の自縛が解けて闇のない世界へと飛び出せることを願っているよ。
どうか幸せになれますように――。
Fin.
いかがだったでしょうか?
結局、登場人物の名前は一切出てこないまま終わってしまいましたが、これはこれでいいかなって思ってます(笑)
そして、このお話のジャンルなに?という疑問。
わからなかったので、ヒューマンドラマにさせてもらいましたが、正しいかはわからないです。
すみません。
いつもの可愛い感じではなかったですが、今回も楽しく書かせて頂きました。
ありがとうございました。
そして、母のケアマネさんが決まりほっとしたのもつかの間。今度は父が入院することになり、ちょっとバタついております。
本気で実家の整理して、引っ越しも考えていかないと行けないのかなって思ったりもしているところです。
それでは、来月も参加できたらいいな。
