黒楼館の虜【noteでBL企画第18弾】
今月もやってきましたnoteでBL企画!
事前情報では過去最多の参加者数と聞きました。
知らない内に輪が広がって大所帯になっていますね😆
🔽企画詳細はこちらから🔽
で、今回の私の作品はこんな感じ。
【ジャンル】
ミステリー、広義のオフィスラブ
【あらすじ】
主人公の仕事は黒楼館という館の管理。今日も業務を終え、あとは帰るだけという状況だ。そこへ暗い顔をした後輩がやって来た。
彼は主人公に一言だけ告げる。「出られないんです」
電気の消えた暗闇の中、嫌いな男と二人きりという状況に絶望する主人公。対してどこか楽しそうな後輩。
いわくつきの館に閉じ込められた、二人の運命やいかに。
文字数は、私にしては珍しく4000文字以下!
3416文字!
多分!
では、信夫のいない小説を早速どうぞ!!
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ふと、振り返るとそこには俺の嫌いな奴がいた。
悲鳴を上げなかっただけ褒めて欲しい。
何だって無言で立っているのか。
業務時間が終わり、屋敷全体の電気は消え、窓の外から入るかすかな光と非常口の緑色のランプだけが俺たちを照らしてくれている。
今日もこの広い館の管理という重労働をようやく終えたのだ。
お互いさっさと帰りたいだろう。
「早く帰れよ。もう、電気消えてるだろ」
薄明りの中、男の整った顔立ちはぼんやりとわかるが、表情までは見えない。
俺は掃除用具を片付けながらそっけなく答えた。
この後輩と仲良くする義理はない。
「出られないんです」
聞こえてきた声は、予想外に暗かった。
「は?」
何を言っているんだ、この男は。
状況が読めない俺の手を後輩が引っ張った。
「おい、放せよ」
「ちょっと来てください」
こちらの文句を華麗にスルーして、後輩は暗闇の中をどんどん進んでいく。
連れて行かれたのは俺たちのいる棟の正面玄関だった。
電気が消えている以外、普段と変わった点はない。
後輩から「開けてみろ」という視線を感じたので、俺はいつも通りに取っ手を持って扉を開けようとしてみた。
だが、動かない。
両手で力を込めて押してみるが、うんともすんとも言わない。
少しくらい軋んだり隙間が空いたりしても良さそうなものを。
「何で……?」
「俺も何度か試してみたんですけど、駄目だったんです」
内側から開かないとなると、考えられることはただ1つ。
「まさか、外からの鍵をかけられた?」
この屋敷は内側からかける鍵と、外側からかける鍵がある。
それ自体は普通のことだが、外側からかける鍵が2種類あるのだ。
外部からの侵入者を防ぐためではなく、屋敷の人間を外に出さないための鍵。
もしかしたら、それをかけられてしまったのかもしれない。
誰が、何のために?
謎は残るが、それが判明したところで俺たちの状況は変わらない。
「どうしましょう」
「どうしましょう……って、外に助けを呼ぶしかないだろ」
「電波届かないみたいで」
後輩がスマホの画面を見せてくる。
そこには圏外の表示が出ていた。
「どうしましょう?」
さほど慌てた様子もなく、後輩が再び尋ねてきた。
そんなの、俺が知りたい。
どうすればここから出ることができるのか。
単純な話、外から鍵を開ければいいだけだろう。
だが、問題は外に連絡する手段だ。
さすがに職場の人間は俺から何の連絡もないことを不思議に思うはずだが、残念ながら明日から休日だ。
となると、少なくともここで三泊はしないといけない。
こんな気味の悪い館に、この男と三泊なんて耐えられるか。何とかしないと。
近くにあった休憩用のベンチに座り、一つ息を吐く。
予想していなかった出来事に眩暈がしそうだ。
「そうだ、お前の恋人とか心配して探しにきてくれるんじゃないか」
帰ってこない上にスマホがずっと圏外だなんて、恋人だったら気が気じゃないだろう。
職場や警察に連絡してくれる可能性は高い。
「残念ながら恋人募集中の身です」
「あ、そう……」
不機嫌そうな声で返されたため、俺は早々に会話を切り上げた。
その顔で恋人いないのかよ。
意外だが、もしかしたら理想が高いのかもしれない。
これだけ顔が良ければ、そういうこともあるか。
「先輩、寒くないですか」
「夜なんてこんなもんだろ」
震えるほどではないが、肌寒さは感じる。しかし寒いと言ったところで、ここでは暖を取れるようなものはない。
最悪なことに、ここは別棟だ。
本館であれば電気のブレーカーを上げ、暖房をつけることもできただろうに。
つくづく、ツイていない。
「良いこと思いつきました! 寒いからくっつきましょ!」という後輩の提案は無言で却下してやった。
何でコイツは無駄に明るいんだ。
ここは屋敷の形をした檻。
そんなところに閉じ込められているというのに、どうして平然としていられるんだ。
俺は目の前の男のように振舞えない。
胸がざわざわして、落ち着かないのだ。
駄目だ、コイツと二人でじっとしていたら、おかしくなる。
体を動かして、変な思考に染まりそうな脳内をリセットしよう。
俺はおもむろに立ち上がった。
「どこ行くんですか」
「その辺歩いてくる。ここは駄目でも、電波が届く場所があるかもしれないし」
「暗い中歩き回ったら危ないですよ」
「屋敷の中だから平気だよ」
知らない場所でもないし、懐中電灯もある。
「俺も行きます!」
「ええ……」
結局、二人で散策することになった。
懐中電灯とスマホの灯りを頼りに館内を歩く。
俺の後ろを歩く男の存在は、頼もしいというよりも圧しか感じない。
「先輩、怖かったら俺の手を握っててもいいですよ!」
「遠慮しておく」
後輩はどことなく楽しそうだ。
もしかして、コイツの中では肝試し感覚なのではないだろうか。
いつか助けがくるとはいえ、数日間ここに閉じ込められる可能性があるんだぞ。
しかも、いわくつきの館で。
ニコニコしていられる男の精神が信じられない。
こういう無邪気なところが俺の神経を逆撫でしてくる。
狂った当主を閉じ込めるために作られた館は、その大きさのわりには窓も扉も少ない。だが、本館と別棟をつなぐ廊下や使用人の勝手口のような扉がいくつかある。その中のどれかが開くかもしれない。
そんな期待をこめて扉を押してみるが、どれも正面玄関と同じ結果となった。
歩きながらスマホの画面を覗くが、電波は圏外のまま。
普段は仕事中にスマホなんて見ないから、電波が悪いことなど気にもしていなかった。
そこまで山奥とは感じないが、木々に囲まれていることに変わりはない。
加えて店や民家もほとんど見当たらない場所だ。近くに基地局などないのだろう。
助けを呼べない、扉も開かないとなると、正攻法で館から出るのは難しい。
パッと思いつくのは窓を割って出るという方法だ。
だが、文化財となっている建物の窓ガラスをむやみに割ってもいいものかどうか悩む。
これは最終手段だろう。
それに大きな窓は見上げるような高い位置にあり、そこまで登るのも外へ出るのも危険としか言いようがない。
低い位置にある窓は小さく、青年男性がそこをくぐるのは難しそうだ。
やはり助けを待つしかないのか。
館内を端から端まで探索してみたが特に収穫もなく、俺たちはエントランスに戻ると三人掛けの小さなベンチに腰を下ろした。
散々屋敷内を歩き回ってクタクタだ。
もう、動きたくない。
ただでさえ仕事で疲れていたというのに、肉体面と精神面、両方の疲労がどっと押し寄せてきた。
エントランスの扉の上には、ステンドグラスが設置されている。
そこから月光が差し込んで幻想的な雰囲気を醸し出しているが、そんなもん今の俺には知ったこっちゃない。
こんな状況で変なムードを演出するな。
気付けば後輩がこちらをじっと見ていた。
ずっと薄闇の中を歩いていたせいか、コイツの顔を見るのは久しぶりな気がする。
その表情はどこか嬉しそうで、気味が悪かった。
「なんだよ、ニヤニヤして」
「いえ……大変なことになっちゃったけど、先輩と一緒で良かったと思って」
横にいる男は感慨深そうな声を出した。
きっと本心なのだろう。
その言葉に、俺の心は乱される。
コイツは良かったのかもしれないが、俺は良くない。
黙っていると何か勘違いされたのか、大きく肩をゆすられた。
「寝ちゃ駄目ですよ! 体温が下がって死んじゃうかもしれません」
「雪山じゃないんだから……」
室内だし、電気は消えていても水道は使えるだろう。
空腹とは戦わないといけないだろうが、早々死ぬことはない。
「ああ、でも先輩と一緒に死ねるのは嬉しいかな」
「ばーか。お前ひとりで死んでろ」
俺が悪態をついたのに、目の前の男は嬉しそうだ。
変な奴。
何でそんなに綺麗な笑顔を向けてくるんだ。
外の光が後輩の顔に当たって、余計にキラキラしている。やめろ、そんな目で見るな。
「先輩に看取られるのも悪くないですね。その時はよろしくお願いします」
「勝手に死んでろ」
深々とお辞儀をする後輩の額に、俺はデコピンをくらわせてやった。
「ひどい! 可愛い後輩のお願いなのに!」とギャーギャー騒いでいるが、無視した。
本当に、コイツのこういうところが苦手だ。
ただ純粋に好意を押し付けてくる。
俺の気も知らないで。
絶対一緒に死んでなんかやるもんか。
例え死ぬとしても、お前より後に死んでやる。
物言わぬ躯になったお前の体を暴いて、痛めつけて、散々犯して好き勝手してから死ぬんだ。
俺はお前のことが嫌いだから。
こんな乱暴な感情が、愛とか恋なわけがない。
【了】
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登場人物の名前すらない小説ですが、一応あとがき記事を書きました。
後ほど投稿しますねー!
(今日は色んな人が投稿するから読むの大変だと思うので、明日あたりにでも😊)
館の設定は「何となく……」って感じなので雰囲気で読んでください。
本文であっさりした説明がされていますが、狂人となった当主を閉じ込める為に作られた屋敷です。
本当は地下の座敷牢とか考えていたのですが、身動きとれなさ過ぎなのでやめました。
タイトルは『ゼンダ城の虜』のパクリです。
パタリロの『ゲルマン城のとりこ』をパクろうとしたら、「元ネタはゼンダ城」って何かで見つけたので。
タイトルの意味はよくわかりません。雰囲気。
閉じ込められちゃった理由は、後輩が何かしたんです。きっと。
多分窓ガラスを割って脱出するか、月曜日の朝に職場の人が発見してくれるかのどちらかで助かると思います。
この二人、どっちも生命力強そうだからどうとでもなるでしょ。
まごうことなきハッピーエンド💕💕🥰💕💕
ここまでお読みくださりありがとうございました🙇♀️
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