完結!【#創作大賞2025#ファンタジー小説部門】マァァァァァム!1話
無意味な戦争が終わり、世界は激変。
空を飛ぶオチャカナ
畑から脱走するオヤチャイ
そんな異常な世の中、夫アグの帰りを、ボンは幼い子4人と共に待つ。体力自慢のボンは日々、空飛ぶオチャカナや走り回るオヤチャイ捕獲の仕事をしつつ、子らと共に親戚の家で過ごす。そんなある日、アグ発見の情報を聞き、ボンは子ども達を親族に託し、1人で夫を探しに行くが、その場所にアグはいなかった。気落ちしつつ戻ったボンは、やつれはてた子ども達を見て、置いていったことを後悔する。
私が守らなけばこの子達は誰が守るんだ!
そう決意したボンは、子連れでのアグ探しの旅を決意。これは、かなり強い母親と小さな子ども達の絆が光る父親探しの物語。
◆◆◆◆◆
<登場人物紹介>
ボン:主人公。かなり強いお母さん。みんなを引っ張っていくし振り回すよ!
アグ:ボンの夫。優しい。ボンにベタぼれ。ボンもね!
ユキ:ボンの長男。真面目で責任感あり。ちょっとひ弱。空回りもする。
ゾウ:ボンの次男。少しお調子者。兄を慕っている。
サト:ボンの三男。気が弱い。大人しい。
ユタ:ボンの四男。末っ子気質全開。明るさでボン達を救ってくれている。
ボンの父親(2話登場):男尊女卑の権化。でも我が子は可愛いと思っている。
ボンの兄ヤス(3・4話登場):力が強いらしいよ!
ボンの兄の妻(3・4話登場):ボンを怖がっているよ!
イトコ(1~4話登場):ボン達家族が身を寄せている家の子ども。
サク(15話~):戦争中ボンの夫アグと同じ中隊にいたらしい。
大柄な白衣の天使:正体は最終回で!
◆◆◆◆◆
僕、空を飛んでいる?
さっきまで休んでいた大きな木を見降ろしていることにユキは気づく。体が軽くフワフワと心地良い感覚が、ユキの身体を包み込む。試しにクルンと回ってみると、ユキのまわりの空気も一緒に回る。
こんなに気持ちがいいなんて!
ワクワクしてきた!
よし!あの山に行ってみよう!
ギュン!
田を川を森を眼下に、ビュンビュンと加速するユキ。もう少しで目的の山にいけそう!ユキの心が弾んだその時。
「うわ~ん」
聞いたことのある泣き声が聞こえてきた。
この声は?泣き声の方を見ると、一番下の弟、ユタが大声で泣いていた。
「ぼくも食べゆぅ!」
小さな手をいっぱいに広げ、イトコ達の方へ向かおうとするのを、ユタのすぐ上の弟サトが必死で止めている。
ゾウは?
自分のすぐ下の弟、ゾウを探す。ゾウはユタとサトをかばうように立っていた。ゾウがなにか言ってるみたいだ。ユキが意識を飛ばすとゾウの口元が拡大された。ゾウの口元をじっと見つめるユキ。
「弟に意地悪するな!」
しかし、イトコ達はニヤニヤするだけ。カッとなったゾウがイトコに飛びついた。しかし、ひとりでは太刀打ちできず、地面へ転がされる。ユタを必死に止めていたサトが大声で泣き出した。それにつられてユタも。
そうだ!僕は弟達のためにオヤチャイを獲りに来ていたんだ!だけど、お腹が空きすぎて木の根元で動けなくなって……。
空なんて飛んでる場合じゃない!
早く弟達のところに戻らなきゃ!
そう思った瞬間にユキの身体がズシン、と重くなった。
あれ?僕、空を飛んで……?
気づくとユキは木の根元で倒れたままだった。先ほどあんなに軽かった体が全く動かない。
空を飛んでいる時はあんなに軽かったのに。
やせ細った足を必死に動かそうとするが、ダメ。何回か試しているうちに手足がしびれ始める。
動け……
うご……
ここまで考えた時、重かった手足がフワフワし始め、その感覚がユキを包み込み再び朦朧とし始める。
気持ちいい……
気づくとユキは自分を見下ろしていた。空に浮かんだユキと木の根元に倒れているユキの足元は白く細い糸でつながっている。浮かんでいるユキが動くと糸もゆらゆらと動く。根元にいた時に感じていた手や足の鉛のような感覚も、吐き気をもよおすほどの空腹感も、浮かんでいるユキは感じない。
僕、死んじゃった?
嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!
ユキの気持ちとは反対に糸はどんどん細くなり、今にも切れそうだ。どうしよう!誰か!助けて!
「ユキ!ユキったら!こんなとこでなにしてんだよ!」
大きな影がユキを覆う。太い腕がユキを揺さぶった。
「マ……?」
影に向かって話そうとするユキの首は、ほとんど力が入らない。ガクンと横に倒れた。
生死を彷徨っている!
と感じたのだろう。その人物は、慌てて水の入った筒と小さく千切った干しオヤチャイを、ユキの口の中に突っ込んだ。
「ユキ!しっかりおし!」
その途端、ユキの目に生気が蘇る。ゴクゴクと音を立てて水を飲むユキ。干しオヤチャイを飲み込むのも惜しそうに、ゆっくりと味わっている。
「なにやってんだよ!おまいは!」
「マム!」
助けてくれた人物を見て、ユキは驚く。それは、夫探しの旅から帰って来た母親のボンだった。自分を助けてくれたのがボンだと知った瞬間、ユキの目には涙があふれ出す。
「ごめんなさいぃ、マム、ごめんなさいぃ」
やせ細った長男が泣き出すとボンは、ひょいと肩に息子を担ぎあげた。
「マ、マム!恥ずかしいよ!僕、兄ちゃんだぜ!」
「兄ちゃんである前に、おまいは私の子どもだよ!」
ユキを肩に乗せ、ノシノシと母親が歩く先は、ユキの弟達が待つ兄の家だった。
「役立たずにオヤツなんてないね!」
そう言いながら美味そうに干しオヤチャイをほおばるのは、ユキ達のイトコらだ。すでにユタは泣き止みイトコ達を睨みつけている。ゾウが口から血を流しているのは、倒れた拍子に切れたのか?
その血を拭わず、ゾウもイトコ達を睨んでいる。サトは青い顔でプルプルと震えていた。その時だ。
「今帰ったよ!」
野太い声が聞こえた瞬間、ユタの顔が輝く。今まで睨んでいたイトコなぞどこ吹く風。くるりと後ろを向き、ものすごい勢いで走り出す。
「マァァァァァム!」
走り寄ったユタをさっと首の後ろに乗せる。がっしりとボンの襟首につかまるユタ。ゾウは肩の上で息絶え絶えのユキを見て目を見開く。
「兄ちゃん!」
「安心しな、さっき水を飲ませたから大丈夫だよ」
ゾウの頭をポンポンとたたくボン。その瞬間、ゾウがわっと泣き出した。ゾウはそのままボンのすねにかじりつく。サトはボンを見てボーっとしたまま動かない。
「サト、ただいま」
ボンがにっこりと笑った瞬間、サトが「わあっ」と泣き出した。ボンは「なに泣いてんだよ」と笑いながら、ユキと反対側の肩にサトを乗せた。
その状態のまま、ボンがイトコ達を見ると。
「ぎゃー!!!」
イトコ達は干しオヤチャイを放り出して逃げ出した。
「あ!オヤチャイ!もったいないない!」
ユタがスルスルとボンから降りて干しオヤチャイを拾い、ニコっと笑った。
・2話
・3話
・4話
・5話
・6話
・7話
・8話
・9話
・10話
・11話
・12話
・13話
・14話
・15話
・16話
・17話
・18話
・19話
・20話
・21話
・22話
・23話
・24話(最終話)
