【#創作大賞2025#ファンタジー小説部門】マァァァァァム!21話
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「主人がご迷惑をおかけして」
そういいながらシメと名乗る女はボン達に頭を下げた。
「さっき、この男は家族は戦争で失ったと……」
さすがのボンも面喰い動揺を隠せない。さっきまでのバトルの熱もどこへやら目を白黒させている。
「マム……」
クイっと裾を引っ張られ、ボンが下を向くとユタがニッコリとしながら指をさす。
「なんだい?」
ユタがシメを指さしているように見えたので、
「よそ様を指さすんじゃないよ」
と、ユタをたしなめているとシメの後ろから、ひょこっと小さな顔がのぞく。ユタとサトに近い年の男の子だった。
「マム、おともらち」
トテトテとシメの方に歩くユタ。その後ろにピッタリと大きな体のペスがくっついている。
「ケシ、ご挨拶なさい」
シメがそっと前に出そうとするが後ろに隠れてしまう。母親の裾をつかみ、顔を服にうずめてしまう。
「こんにちは!」
ユタが声をかけたので、少し顔をあげるが後ろのペスを見るとビクっとして顔を隠す。
「この犬はお利口だから怖くないよ」
ユキが優しく声をかけた。
「こわないよ!あそぼ!いっちょにあそぼ!」
ユタの声に誘われるようにそっと母親から離れた男の子をボンが抱き上げ、ペスに乗せる。
「ユタ、お友達を乗せてもいいだろ?」
「うん!」
それを合図に5人の子どもと犬はその場を離れ、遊び始めた。2人の母親は目を細めその姿をしばらく見つめていたが。
「さて、奥さん。ここからは大人同士の話し合いだ」
「はい」
「この男の話はどこまでが本当なのかい?」
「全ては勘違いから始まりました」
いまだ、右腹の痛みに苦しみうずくまるサクを見下ろしながらシメが話し始める。
「あの男が嘘をついたんだな!」
顔をゆがめながら叫ぶサク。
「あの人は嘘をついていませんよ」
「俺が家族のことを聞いた時、顔をゆがめて……」
「それはあなたが肩を強く握るから痛くてゆがめたんでしょ!」
「え?」
驚くサクをそのままにシメはボンに向き直り、話を続けた。
「この人はね、戦争の前からこうやって勘違いばかりして。私はそれの尻拭いの連続だったんです!」
「な、なにわけわからないことを!」
「だって本当のことですから!」
突然始まった夫婦げんかに巻き込まれ、ボンはどうしてよいものかと固まってしまった。
「マァァァァァム!」
遠くから子ども達の明るい声が聞こえてくる。
「もう少し、遊んでおいで!」
「はーい」
事実は小説より奇なりってこういうことなのかねぇとボンは呟いた。
22話に続く
