デジタルアクター試論 19. 総3Dアニメ化という選択肢
デジタルアクター試論 目次
1. 発想の出発点——肖像権を払ってCGで作るという可能性
2. 最初の突破口は誰が開けるか
3. ブルース・リーという最有力候補
4. アイコンと役柄のバランス問題
5. 完全オリジナルのCGキャラによるスターシステム
6. 契約のパーセンテージ化
7. 仮面ライダー1号という日本の特殊事例
8. ルパン三世・クレヨンしんちゃんとの対比
9. 違う人が本郷猛を演じても定着しなかった理由
10. 今の仮面ライダーがほぼCGという逆説
11. 一文字隼人と佐々木剛氏
12. 美空ひばりとの違い——役を演じるか否か
13. 性格の可変性という基準——ブルース・ウェイン、長谷川平蔵、車寅次郎
14. 「群像劇化」が原点を重くする逆説
15. 特撮主演というキャリアの賭け——村上弘明、長谷川初範、細川茂樹、オダギリジョー
16. 西島秀俊という稀有な存在——シン・ウルトラマンからBLACK SUNへ
17. 西島秀俊と木村拓哉——芸能人としての格と俳優としての評価
18. 30代・40代の本郷猛を描くという可能性
19. 総3Dアニメ化という選択肢
20. フランケンシュタインの被造物として
21. 唯一無二性を生んだ三つの偶然
22. 撮影現場の一体感、という最後の鍵
23. ブルース・ウェインとクラーク・ケント——比較対象の精緻化、そして本郷猛の特異性のまとめ
24. 最初のデジタル化に生じる微妙な変更
25. 『ボヘミアン・ラプソディ』が示した「受け手の補完」
26. マイケル・ジャクソンの伝記映画
27. 『ワイルド・スピード』のブライアン・オコナーと、ドミニクたちの老い
28. 乱用するプロデューサーへの懸念
29. 「コモディティ化」と「民主化」という言葉の歪み
30. 政治権力による技術の独占とプロパガンダ
31. ゲリラ的パロディというもう一つの危険
32. 結語

仮面ライダーサーガを1号から再構築するなら、いっそ総3Dアニメという選択肢もある。
これにはすでに実証された先行例がある。Netflixの『ULTRAMAN』(2019年〜)は、円谷プロの看板作品を完全にフル3DCGアニメ化し、Netflixの「What's Hot? 2019」でアニメ部門1位、第47回アニー賞の監督賞にノミネート、VFX-Japan Awards 2020ではTVアニメ部門のCGアニメーション最優秀賞を受賞するなど、批評的にも一定の成功を収めている。
世代設定の解決法も示唆的である。
物語は、ウルトラマンが地球を去ってから十数年後を舞台とし、登場するウルトラマンは巨大な宇宙人ではなく強化スーツを装着した等身大の戦士という設定に変え、ハヤタ隊員の息子・進次郎が継承するという構図にしている。
これはまさに「世代交代を新しい時間軸として描く」という解決策を、アニメというフォーマットで実行した実例である。さらに、モーションアクターには過去に特撮作品で変身ヒーローを演じた経験のある俳優らが起用されており、フル3DCG化してもなお、本物のスーツアクターの肉体の説得力を捨てられなかったことを示している。
一方で、批判もある。「国産3DCGの良くない部分が多くて、キャラクター芝居がタルい」という指摘や、「アニメって言い張ってますが、登場人物の動きが殆どコマ落としが無さそうなモーションキャプチャなので、アニメというよりは特撮なんじゃないか」という声があり、総3Dアニメは「特撮の代替」としては成立するものの、アニメらしい快感とも特撮らしい生身の説得力とも、どちらとも微妙に違う、第三の質感に落ち着いてしまうリスクを抱えている。
そして、もっと根本的な壁がある。ウルトラマンの場合、巨大な宇宙人という設定自体が、もともと俳優の顔への依存度が比較的低いキャラクターだった(ハヤタ隊員の顔が変身後に消える)。
一方、本郷猛は「変身前の苦悩」というパーソナルな実存性、つまり顔そのものが核だったキャラクターである。総3Dアニメ化がウルトラマンよりも仮面ライダーで難しくなるとしたら、その理由は技術よりも、本郷猛が顔に書き込まれすぎたキャラクターだという、この議論の核心に、また戻ってくることになる。
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