デジタルアクター試論 5. 完全オリジナルのCGキャラによるスターシステム
デジタルアクター試論 目次
1. 発想の出発点——肖像権を払ってCGで作るという可能性
2. 最初の突破口は誰が開けるか
3. ブルース・リーという最有力候補
4. アイコンと役柄のバランス問題
5. 完全オリジナルのCGキャラによるスターシステム
6. 契約のパーセンテージ化
7. 仮面ライダー1号という日本の特殊事例
8. ルパン三世・クレヨンしんちゃんとの対比
9. 違う人が本郷猛を演じても定着しなかった理由
10. 今の仮面ライダーがほぼCGという逆説
11. 一文字隼人と佐々木剛氏
12. 美空ひばりとの違い——役を演じるか否か
13. 性格の可変性という基準——ブルース・ウェイン、長谷川平蔵、車寅次郎
14. 「群像劇化」が原点を重くする逆説
15. 特撮主演というキャリアの賭け——村上弘明、長谷川初範、細川茂樹、オダギリジョー
16. 西島秀俊という稀有な存在——シン・ウルトラマンからBLACK SUNへ
17. 西島秀俊と木村拓哉——芸能人としての格と俳優としての評価
18. 30代・40代の本郷猛を描くという可能性
19. 総3Dアニメ化という選択肢
20. フランケンシュタインの被造物として
21. 唯一無二性を生んだ三つの偶然
22. 撮影現場の一体感、という最後の鍵
23. ブルース・ウェインとクラーク・ケント——比較対象の精緻化、そして本郷猛の特異性のまとめ
24. 最初のデジタル化に生じる微妙な変更
25. 『ボヘミアン・ラプソディ』が示した「受け手の補完」
26. マイケル・ジャクソンの伝記映画
27. 『ワイルド・スピード』のブライアン・オコナーと、ドミニクたちの老い
28. 乱用するプロデューサーへの懸念
29. 「コモディティ化」と「民主化」という言葉の歪み
30. 政治権力による技術の独占とプロパガンダ
31. ゲリラ的パロディというもう一つの危険
32. 結語

権利問題等で有名俳優のデジタルアクターで自由な演出ができないのであれば、完全オリジナルのCGキャラによるスターシステムを作り上げるか。
実は「最も映画の魔法をピュアに復活させる、究極のウルトラC」かもしれない。実在の俳優の肖像権をめぐるドロドロしたビジネスや、アイコンとしての固定観念に振り回されるくらいなら、いっそ「誰も見たことがない、完全に架空のデジタル・スター」を一から創造し、彼らに映画界の覇権を握らせるという未来である。
これこそが、ハリウッドの組合の壁も、遺族の縛りも、イメージの固定化もすべて飛び越える真の突破口になるかもしれない。
この「完全オリジナルのCGキャラによるスターシステム」がもし稼働したら、エンタメはどう変貌するか。
第一に、「スタジオ専属スター」の復活——1930年代の黄金期への先祖返りである。かつてハリウッドの黄金期(MGMやパラマウントの時代)は、映画会社が俳優を「専属」として抱え込み、スタジオのカラーに染め上げてスターにしていた。
完全オリジナルCGキャラの時代は、まさにこのシステムが最新テクノロジーで復活する。スタジオは、自社が所有するデジタル・スターを何本もの映画に「主演」として登板させ、ファンを呼び込む。彼らは絶対にスキャンダルを起こさず、ギャラを吊り上げず、年を取ることもない。
第二に、「役柄」と「スター性」の完璧なコントロールが可能になる。
実在の俳優をCG化する場合に起きる「アイコンと役柄のバランス問題」は、これで完璧に解決する。なぜなら、そのオリジナルCGアクターの「デビュー作」から、映画会社が意図的にパブリックイメージをコントロールできるからだ。
監督は、純粋に「作品という絵の具」の1ピースとして、そのスターの持つ「質感」や「演技のクセ」を、100%計算通りに配置できるようになる。
第三に、「演技のDNA」のレイヤー化——誰が演じているのか、という問題が浮かび上がる。
いくらAIやCGが進歩しても、観客の胸を打つ「本物の演技の機微」や「肉体の説得力」には、やはり職人芸が必要だ。
かつて『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムや『キング・コング』を演じたアンディ・サーキスの地位が、極限まで高まるはずである。
表舞台のアイコンである「架空のデジタル・スター」と、舞台裏で劇中のすべての動き、目の泳ぎ、呼吸のタイミングを演じ分ける「天才モーションアクター(名もなき名優)」——この二つが合体した時、映画界には「容姿の美醜や年齢、性別に関わらず、純粋な『演技力』だけで世界を感動させられるアクター」のゴールドラッシュが訪れる。
2001年、映画『ファイナルファンタジー』が「アキ・ロス」というデジタル女優を映画界にデビューさせ、世界初のデジタル・スターシステムを目指して挫折した歴史があった。当時は技術が早すぎ、不気味の谷を超えられず、観客の情緒が追いつかなかった。
しかし現在、初音ミクのような2Dのバーチャルアイドルは当たり前になり、ゲームのキャラクターに本気で恋をしたり、涙を流したりする土壌は完全に耕されている。
実在の人間ではない「彼ら」「彼女ら」が、アカデミー主演男優賞・女優賞にノミネートされる。そんなSFのような景色が、ある日突然、一本のインディーズ映画の世界的メガヒットから始まる気がしてならない。
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