ライン随想録 自然治癒力
1799/01/28 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより
随想録
いまから25年以上も前の話しになるが、1970年代の初め、IMFの年次審査団の一員として、アフガニスタンの首都カブールに5回も6回も出かけた。
一回行くと現地に4週間も5週間も滞在し、各種レポートを書くという大変な作業であった。
アフガニスタンは典型的な発展途上国で、その平均寿命は35歳くらいであるというのに、70才台・80才台の健康に恵まれたお年寄りが町のあちこちにバザールにごろごろいる。
ちょっとおかしいぞと思ったが、すぐにその訳がわかった。
アフガニスタンでは、衛生状態が良くないため、乳幼児死亡率が極めて高く、これが大きく平均寿命を引き下げているらしい。
しかし、いったん15-16歳まで過酷な衛生状態の下で、生き延びたひとは強靭な自然治癒力を身につけているもののようで、医者に依存しなくとも70才台、80才台までも健康を維持しつつ生きていけるもののようである。
昔は日本でもヨーロッパでも自然淘汰の下で、頑健な人々のみがやっと生き長らえられたもののようであった。
今は違う。予防接種に、医者通い、入院に、手厚い医薬品の投与の下で、先進国では乳幼児死亡率がきわめて低いところに押さえられ、われわれの平均寿命もかなり長いものとなってきている。
わたしの住むスイス・バーゼルは世界有数の医薬品メーカー、ノバルティス社およびロッシュ社の二社がここに本拠を置いているところである。
町のかなりの人口が直接製薬メーカーに勤務するか、間接的にその恩恵を受けている。
ここでは製薬メーカーの研究所がたくさんあり、わたしのスイス人の友人、日本人それ以外の友人もこうした研究所に勤めている人が多い。
こうした製薬の研究所に勤めている人と話しをすると、「一般のかたがたには医者の処方にあわせ、医薬品をとられるのが賢明でしょう」と勧めてはいるが、自分自身では絶対必要となるまでは医薬品は一切口にしない、とらないと話す人が多い。
専門の研究をしているひとは、薬の副作用の恐ろしさを誰よりも熟知し、できうる限り避けるよう努めているらしい。
わたしの経験からしても、また友人の話しを聞いても、スイス人の医者は安易に投薬したりせずに、患者の「自然治癒力」できうるかぎり、引き出すよう努め、しばらく様子を見ながらお金をかけないで、治療するケースが多いようである。
健康保険をカバーしている保険会社の医療サービスに対するチェックがかなり厳しいらしい。
医者もそれを良く知っていて、できるだけ低コストで医療作業をするよう心がけているようである。
私は医療の専門家ではないので詳しいことは承知していないが、人間の体には病気を克服しようという強い力が常にはたらいているように思う。
20-30才台の若いときにはその力がきわめて強く、加齢とともにその力が弱まってくるらしい。
抗生物質を多く取りすぎると、しだいに効かなくなってくることが知られている。
わたしは医薬品や医療体制にあまりからだが依存しすぎると、丁度「無菌室」に長く置いておかれるのと同様に、外の細菌に対する抵抗力がしだいに弱まってしまうのではないかと思っている。
クリーンな日本の若い人に「雑菌抵抗力」の弱い人がおおいのではないだろうか?
バランスよく食事をとっていれば、いわゆる「ビタミン剤」などは必要ないだろう。
風邪を引いたからといって、「咳止め」に「解熱剤」をつぎからつぎへと飲んでいては体が自然に治癒しようという工夫を妨げてしまうのではないだろうか。
風邪をひくときには、体調・体力がおちているので、無理をせずに、ひとに移さないように、外出・出勤は避け、自宅で暖かくし、安静にしていることが望ましいように思う。
会社のお仲間や、電車車内のお仲間も、風邪引き本人が無理をして出勤してきて、細菌を撒き散らすことを本当に望んでいるのだろうか。
風邪はその性質にもよるが、一週間ほどはできうる限り医薬品なしでがんばり、長引くようであれば医師に相談するのが好ましいのではないだろうか。
結局、人間はいかに生きるかが大事であり、健康状態に恵まれているときに、人のため、世のためにどれだけ貢献できるかが問われているように思う。
120才まで病院のお世話で、生き延びさせていただくよりも、たとえばモーツアルトのように30才半ばまででも、命を燃焼しつくせば、立派な人生であると考えることができるだろう。
「神様が病気を治し、医者が金を取る(ベンジャミン・フランクリン)」ということのようであるが、一面の真理をついているようである。(了)
老齢プログラマの所感
花粉症やアレルギーで苦しむ人が多くなった感じはします。
弱い人が生き残る機会が増えたのでしょうか?
単なる印象で、話題が増えたからそう感じるだけでしょうか?
それとも、実際に免疫力が低下し、雑菌に対する抵抗力が弱くなっている人が増えているのでしょうか?
以前に比べ、以下のような生活習慣や環境が変化しています。
・不規則な食生活や睡眠不足、運動不足などの生活習慣が多く、これが免疫力の低下に繋がった。
・仕事や生活のストレスが増加し、免疫機能が低下した。
・抗生物質の過剰使用や不適切な使用により、薬剤耐性菌が増加した。
これにより、抗生物質が効かない感染症が増え、免疫力が低下し、感染しやすくなっています。
・都市化や環境汚染により空気中の汚染物質や化学物質が免疫システムに悪影響を与え、免疫力が低下した。
これらの要因が影響しているのかもしれません。
補足
上の記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の住職の遺作「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さり、今は住職の息子によって公開されています。
当時、このようにお世話になったことを思い出し、復刻していました。
ある日突然、「ライン随想録」の目次が検索で見つかるようになりました。
しかし、ここから記事へのリンクが途切れています。
これが理由で、今まで検索しても表示されなかったのかもしれません。
そのため、復刻作業は今までどおり続けることにします。

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