一気読み用要約 : (#0-#13) 偏った確率を採用した、ETF ProShares UltraPro QQQ (Ticker : TQQQ)をナチュラルにミミックする、僕の「ABC-K6モデル」
僕は昨年から、レバレッジ3倍でNASDAQ-100インデックスを運用するETF、ProShares UltraPro QQQ(以下、TQQQ)をナチュラルにミミック(模倣)するシミュレーションモデルを試行錯誤しながら作成に取り組んできました。
金融工学など門外漢である僕は、手始めに「確率を偏らせたサイコロ」を道具にし、簡単な四則演算だけで、有限・可測・可算な計算量の範囲で、さまざまな特徴を持つ時系列データのレプリカを作るアプローチを選びました。そして最終的に、僕のABC-K6モデル(以下、K6)に辿り着きました。
僕はK6に微調整を重ね、”Ver. K6αA”へと更新していく中で、TQQQを運用する際に、自身の感情的耐性を事前に観察する「姿見鏡」、あるいはドライビングシミュレータに近い体験型シミュレータとしての可能性を感じるようになりました。
僕がK6を構築するまでに考えてきた内容は、note記事として #0〜#13 にわたり連載してきました。今回はそれらを圧縮し、要約版として一気に読めるようにまとめています。
特に #7 までの前半では、K6を構築するまでの思考過程を中心に書きました。後半では、K6モデルを構成する道具と、算数式の各パラメータを整理しています。
「なぜこのようなモデルになったのか」に興味がある方は前半から、「モデルの具体的な構造」に興味がある方は後半から読んでも良いかもしれません。
僕のモデルは、未来の一点を正確に予想するシミュレーションではありません。将来、確率的にあり得るさまざまな評価額の時系列データを大量にレプリカしながら、自身のライフスタイルやステージに応じて感情的耐性を観察したり、想定外の暴落を「時間軸」と「暴落深度」に応じて想定内へ落とし込むための対策を考える補助に役立つと思っています。
★(注記)
僕の記事は特定の金融商品の推奨、または投資指南などを意図していません。
また、僕のモデルは僕の主観に基づき、構築した思考実験であり、学術的な検証などされていません。
#0 (はじめに) 人間とサイコロ、文明と社会に漂う確率への入り口
本シリーズの出発点は、「金融市場は純粋なランダムか?」という違和感でした。
人間社会や文明は、偶然以上の“偏り”を持って未来へ進んできたように、僕には見えます。その偏りを内包した確率が、株式市場にも滲み出ているのではないか――そう感じたことが、僕のアイデアの出発点です。
株式市場で人は公正なサイコロを振るのだろうか。むしろ人は、文明・技術・信念・未来への意志を織り込んだ“細工されたサイコロ”を振り続けているのではないか。
その結果として生まれる確率の傾きを、僕は「文明確率」あるいは「社会確率」と呼ぶことにしました。
僕にはNASDAQ-100、そしてそのレバレッジ3倍型ETFであるTQQQのチャートが、単なる価格の軌跡ではなく、文明が登ってきた山脈の稜線のように見えます。もし市場が完全にランダムなら、その山は形を成さないはずです。
このnoteは、数学論文でも投資指南でもありません。文明が歪めた確率のわずかな傾きを観察し、その意味を探るための、小さな思考実験を積み重ねる物語です。
#1 確率の偏りと漂う時間
僕は資産運用を「評価額の上下」ではなく、時間の変換として捉え直すようにしました。Time is Money はよく知られた言葉ですが、その裏側にある Money is Time という等価性には、これまで僕たちは十分に意識を向けてこなかったように感じます。
僕の視点では、投資資産の暴落とは「評価額が下がること」ではなく、未来に到達するまでの時間が伸びることです。損失とは時間の借金であり、回復とはその返済。資産が増えるとは時間が圧縮され、資産が減るとは時間が膨張する現象だと捉えています。
時間は消えません。単に、お金という別の姿に変換されている――僕はそう捉えます。時間が恐れられてきたのは、それが姿を持たないからでした。しかし見えないだけで、確実に資産の中に保存されています。
この視点に立つと、投資とは勇気のゲームではなく、時間という資源をどう設計するかという工学になります。
また僕は、金融市場の時間を暦や時計ではなく、「値動きというサイコロが振られた回数=ステップ数」で測ることにしました。そうすることで、オリジナルのシミュレーションモデルで扱いやすくなるようにできました。
既存の金融理論への敬意を払いながらも、僕は原始的な四則演算と、わずかに偏りを持つサイコロを手に、自分の足で、値動きが暴走するTQQQをナチュラルにミミック(模倣)する数理モデルを探す旅を始めます。
僕のモットーは「可測・有限・可算」。霧の中でも、数えられるものから数える――それが僕のやり方です。
ようこそ。Money is Time の世界へ。ここから、文明確率を巡る旅が始まります。
#2 僕が金融市場を眺める”流儀”
僕が金融市場をどのような姿勢で観察し、仮説を立て、数理モデルへ落とし込もうとしているか。その「流儀」を整理しました。
僕は、大量データから一気に結論を引き出すよりも、少数サンプルと誤差を正面から引き受ける態度を大切にしています。ギネス社のゴセットが示したt分布のように、サンプルが少ないほど不確実性を厚く抱え込む。その姿勢は、金融市場を扱う上でも重要だと感じています。だから僕の基本原則は「可測・有限・可算」。数えられるものから数え、誤差をあえて消さずに残します。
僕のアプローチは演繹的ではなく帰納的です。まず観察し、直感し、仮説を置き、数式はその後に来る。メンデルが見えない遺伝子を仮定したように、僕は市場に繰り返し現れる「傾き」を、いったん仮説として置いてみる。その仮説が地図として機能するかを確かめたいのです。
市場が完全なランダムだとしたら、僕には説明できない言葉や制度が静かに幾つも目の前に存在しています。
「時間をかければ資産は増えやすい」という経験則、進化する株価指数、人間の選択が組み込まれた資本主義、資本が資本を呼ぶ集積現象。
それらは、市場にわずかな確率の偏りが定着している可能性を示唆しているように僕には見えます。
僕はランダムウォークを否定したいわけではありません。むしろ敬意を払いながら、その隣に文明と人間の意志が生む、もうひとつの確率をそっと置きたい。反抗ではなく、対位法として。
文明が歩んできた時間は、ただのノイズではない。その信念を、静かに、丁寧に、可測・有限・可算のモデルへ落とし込む。ここから僕は、「文明確率」という仮説の旅を本格的に始めます。
閑話休題 : 解説編 “金融統計量の逆計算問題”について
僕のABC-K6モデル(以下、K6)がどのような発想で作られているか。この閑話休題では、特に数理モデル構築の基本メソッドを直感的に整理しました。
K6の出発点は、「過去の時系列データから未来を推定する」という通常の金融工学的アプローチから、あえて一歩外に出ることでした。実際の市場で観測できる時系列はたった1本しかなく、それを唯一のサンプルとして母集団を推定することには、構造的な限界があると感じたからです。
そこで僕は、時系列そのものではなく、与えられた金融統計量(CAGR、MaxDD、標準偏差など)から逆に考えるという発想に切り替えました。
「過去データに頼らず、統計量を満たす“別世界の時系列母集団”を新しく作ればいい」
この仮想的な集合を、僕は時系列(母集団)レプリカと呼んでいます。
K6では、金融統計量をそのまま扱うのではなく、可測・有限・可算な部品へ分解します。複雑な統計量を、偏った確率のサイコロと四則演算だけで再構成可能なパーツに落とし込む――いわば「金融統計量の幾何化」です。
これらの部品を組み立て直すことで、同じ統計量を満たしながらも、全く異なる時系列経路を持つ母集団レプリカを無数に生成できます。しかも、それらは自然に中央値付近へ集まりやすく、パラメータを動かせば極端な歪みも表現できます。
K6は未来を一点で予測するモデルではありません。「過去=1本」という呪縛から離れ、同じ性質を持つ“あり得た未来の集合”を眺めるための装置です。偏った確率のサイコロと算数だけで、金融市場のリスク構造を外側から観察する――
「これらが、僕がK6を構築する方法の概要であり、このモデルが見せてくれる世界の輪郭です。」
#3 偏った確率を採用した僕のレバナスTQQQシミュレーションモデル : 細工したコイン投げの確率
「金融市場はランダムウォークなのか?」という僕の違和感に対して、簡単な思考実験をしてみます。
もし市場が本当に公正なランダムな確率で支配されるなら、単純なコイン投げ(50:50)にモデル化できるはずです。しかし、公正なコイン投げでは長期的に資産が成長し続ける世界は成立しません。公平なコイン投げのゲームでは、市場参加者の多くが資産を増やせず、いずれ退場するからです。
しかし現実には、投資家は増え、株式市場は拡大し、資産は長期で成長してきました。この事実は、金融市場で振られている「コイン」が、完全に公平ではない可能性を示唆しています。ほんのわずかな偏り――それだけで、長期の結果は静かに、しかし決定的に変わります。
ただし、単に1枚の細工されたコインでは、TQQQのようなレバレッジ商品が持つ極端な挙動を説明するには無理があります。そこで僕は発想を進め、「複数枚の細工されたコイン」を同時に投げることを考えました。
2枚のコインを投げると、
・両方が表
・表と裏
・両方が裏
という結果が生まれ、そこには単独の偶然ではなく、偶然の組み合わせと連鎖が現れます。表が続けば楽観が強まり、裏が続けば慎重になる――この“運の連なり”こそが、金融市場の実感に近いと僕は感じました。
こうして本章では、
・公平なランダムでは説明できない市場の成長
・複数の偶然が重なって生まれる「幸運」と「不運」の連鎖
・その背後で世界をゆっくり傾ける、目に見えない確率の偏り
という構造を直感的に導き出しています。
この「細工された複数のコイン」という発想が、のちにK6モデルで用いる偏った確率のサイコロへと発展し、TQQQのようなレバレッジ商品の“暴走”を、偶然の連鎖として扱うための入口になりました。
#4 偏った確率を採用した僕のレバナスTQQQシミュレーションモデル : 幸運と不運が支配する世界
僕は、株式市場の値動きを「完全なランダム」でも「明確な意思」でもないものとして捉え直します。
僕の仮説では、株式市場の値動きはサイコロの出目に支配される世界のようなものです。その出目が「幸運」と「不運」を生み、それらが連鎖することで相場のリズムが形作られる――僕はそう考えています。
また、一見ランダムに見える相場も、長く眺めると、幸運の方向へわずかに傾く“重力”のような偏りが働いているように見える場合があります。
それは文明や人間の行動が生み出した、偶然と必然のあいだにある静かな傾きだと、僕には見えます。
相場とは、幸運と不運が支配する「偏りのあるランダムな地形」です。
その地形を理解することは、時間とお金の意味を読み替えることでもあります。
#5 偏った確率を採用した僕のレバナスTQQQシミュレーションモデル : “温故知新”と “一喜一憂”
僕は、資産運用において「過去のデータをそのまま未来に当てはめる」姿勢にも、「未来は読めない」と思考停止する態度にも与しません。
過去のデータは答えではなく、拾い集めるべき小さな“石ころ”にすぎない。僕はそう考えています。
それらの微細な数字や確率の揺らぎを結び直すことで、運と時間をつなぐ構造が見えてくる。
僕にとって重要なのは、過去の再現ではなく、「構造の抽出」です。
また、市場参加者の一喜一憂や感情は、価格を揺らすノイズにも見えます。けれど、その背後では「幸運と不運の連鎖」という単純な確率構造が、静かに働いているように僕には感じられます。
だから僕は、感情そのものではなく、その奥にある“偏ったサイコロの出目”に注目します。
市場とは感情の波だけではなく、文明の中で人が未来に賭け続けた結果として形成された確率の地形です。
その地形に生まれるわずかな傾きこそが、僕の仮説である「文明確率」の軌跡だと捉えています。
#6 偏った確率を採用した僕のレバナスTQQQシミュレーションモデル : “ 盛者必衰=衰者必盛?” そして、” To be Better than Today.”
僕は、相場の上下を単なる結果ではなく、盛者必衰と衰者必盛が交互に現れる「確率の振り子運動」として捉え直します。
相場は川の流れのように常に姿を変え、沈むこともあれば、再び浮かぶこともあります。
「盛者必衰」は確かに真実です。けれど同時に、「衰者必盛」もまた、株式市場の理として存在すると僕は感じています。
人や文明には、To be better than today――今日より少しでも良くなろうとする衝動があります。
その衝動が積み重なってきた結果、世界の確率は完全な五分五分のランダムではなく、わずかに未来へ傾いた形で歪められている。僕はそう仮説的に捉えています。
だから不運が存在しても、それは純粋な偶然だけではないのかもしれない。
人類が倒れても立ち上がり、失っても作り直してきた歴史そのものが、「少しだけ表が出やすいコイン」がこの世界に埋め込まれている証拠ではないでしょうか。
僕が捉えたいのは、その文明の呼吸が生み出した、偶然に見える確率の偏り――運命の数理なのです。
#7 偏った確率を採用した僕のレバナスTQQQシミュレーションモデル : 偏った運と偶然の連鎖、そして未来をレプリカする算数式
僕は、人間社会や金融市場が「完全に公平な偶然」ではなく、わずかに幸運へ傾いたサイコロによって動いていると仮定します。
幸運も不運も偶然です。けれど、それらが連鎖し、さらに“質の違う出来事”が重なると、人生や相場の方向性は大きく変わります。
未来を形づくる鍵は、
① 幸運/不運の偏り
② 偶然の連鎖
③ 運の質的階層
この三つだと僕は考えています。
この考えを、僕は次のような算数式で表しました。
未来 = 今 ×(偏り)×(連鎖)×(質)
足し算ではなく掛け算にしたのは、現実の人生や相場が相乗的に動くからです。未来は過去の延長ではなく、常に「今」から始まります。
確率がわずかに前へ傾いていれば、時間をかけて景色は変わる――僕はそう信じています。
この式は未来を保証する魔法ではありません。
ただ、未来を「完全な闇」ではなく、方向性を持った確率として捉えるための地図です。
その数字に意味を与え、責任を引き受けるかどうかは、最終的にそれを使う僕たち自身に委ねられています。
閑話休題:僕の作った金融モデル “ABC-K6モデル” : この算数式で「何が見えて、何が見えないのか」
ここでは一度立ち止まって、僕が作った算数式モデルABC-K6が「何を示せて、何を示せないのか」を整理しました。
K6が出力するのは、未来の正解や予測値ではありません。
同一条件のもとで確率的に生成される、無数の評価額時系列レプリカです。
それは「未来の一点」ではなく、起こり得たかもしれない複数の未来経路の集合を観察するための装置です。
これらのレプリカからCAGR・最大DD(暴落)・回復期間などの分布を解析できますが、それはリアル市場の当否判定ではなく、K6という確率構造の中での性質を眺める行為にすぎません。
数式は無機質で、意味づけや判断は常に観察者側に委ねられます。
K6の最大の特徴は、各時系列の内部計算履歴がすべて残ることです。
そのためDDの深さや回復過程を「物語を持った経路」として観察でき、資産運用における感情の揺れや耐性を事前に自覚する、体験型シミュレータ(例:ドライビングシミュレータ)のように機能します。
また、K6は「時間が途中で断ち切られない金融商品」のみを前提にしています。したがってインデックスファンドやレバレッジETFとは相性が良い一方、精算期限・追証・ロスカットを伴う信用取引やCFDとは原理的に相性が悪い。
同じ「3倍レバレッジ」でも、時間が継続する商品と途中で終わる契約は、本質的に別物だと整理しました。
K6は高い精度や資産運用の安全性を保証するモデルではありません。
K6で生成された時系列レプリカは、さまざまなタイミングやレベルで深いDDや長い停滞を含みます。それでも未来が途中で終わらず、多様な回復シナリオを最後まで観測できる――その一点において、レバレッジETFはK6モデルで扱える対象となり得ます。
#8以降は、この「偏った確率」がどのように算数式へ埋め込まれ、未来の時系列レプリカとして立ち上がるのかを順に解剖していきます。
#8 : 偏った運を抽選する公平な抽選システム “BES³ “
この章では、僕がどのようにK6モデルの根幹となる「幸運/不運の偏り」を数式へ埋め込んだかを紹介します。
僕は市場や人生を、完全なランダムとしてではなく、わずかに未来が良くなる方向へ傾く「50+α%の幸運」が存在する世界として捉えています。
そのα%は、人類が倒れても作り直し、文明を積み上げてきた “To be better than today” の本能に根付く――そんな僕の仮説、「文明確率」に由来すると考えています。
この偏りを再現するために導入されるのが、バイアス組み込み型抽選機構です。
単なる運任せではなく、偏りを設計思想として持つ抽選装置(比喩としてのサイコロ)を用意し、確率にわずかな非対称性を持たせる仕組みです。
ただし相場には、穏やかな上昇・停滞・暴風雨のような下落・人生を変えるようなBig Eventなど、値動きの質の違いがあります。
そこで僕は、偏りを1種類に固定せず、性格の異なる複数のサイコロ(偏り分布)を用意し、そのどれが適用されるか自体をさらに公正な抽選で決める入れ子構造を採用しました。
この「公平な抽選で、偏りを持つ抽選機構を選び続ける」仕組みを、BES³(Bias Embedded Stochastic Selection System)と名づけました。
次回以降は、基本式
未来=[今]×[幸運/不運の偏り]×[偶然の連鎖]×[運の質的階層]
を分解し、BES³の抽選結果がどの係数を決定していくのかを段階的に紹介していきます。
その結果、ABC-K6モデルの算数式は、
未来={今×j1×(α×β×γ)×j2×δ}×ε
という、記号が増えた掛け算構造へ姿を変えます。
見た目は妖しくなってきますが、僕の意図はあくまで「手計算できる算数式」の範囲に留めること。偏り・連鎖・質が未来を形作る仕組みを、直感的に可視化する算数式になっています。
#9 偏った確率を採用した僕のレバナス TQQQシミュレーションモデル、ABC-K6モデルの算数式…”α “の解説
この章では、前回紹介した偏り組み込み型抽選システムBES³の結果を受け取り、実際に未来の評価額を計算するK6モデルの「算数式(頭脳部)」を解説します。
僕はこの算数式構造に、MSM³(Markov–Semi-Markov Modulated Multiplicative Process)という名前を付けました。
MSM³の基本形は、
未来=[今]×[幸運/不運の偏り]×[偶然の連鎖]×[運の質的階層]
という掛け算式であり、K6モデル内では次のように分解されます。
未来={今×j1×(α×β×γ)×j2×δ}×ε
記号は増えますが、中身はすべて掛け算だけの算数式です。
まず根幹のパラメータ「幸運/不運の偏り=α」を紹介します。
K6では、TQQQの一定期間の値動きを「ゼロ成長・プラス成長・マイナス成長」の3状態に単純化し、それぞれをBES³の抽選結果で決めていきます。
その最初の係数がαであり、「その期間の基本的な成長方向と強さ」を表す乗数です。
αはまず、公正なサイコロ2個による上位抽選で「ゼロ成長(α=1)」を先に判定し、ゼロ成長でなかった場合のみ、偏ったサイコロ2個(A/B/Cセット)を振って決定します。
偏ったサイコロの出目和が偶数ならプラス成長、奇数ならマイナス成長とし、成長率は
◯プラス成長
△α=1+(出目和の平均/n)
◯マイナス成長
▼α=1-(出目和の平均/n)
で計算します(nは成長率の大きさを調整する任意パラメータです)。
以上のように、算数式のαは「確率が偏ったサイコロセットの出目」から求められます。
#9の補足 : 確率が偏ったサイコロを「2個セット」にすると、出目和の偶奇の偏りはどう変わるのか?
この補足では、#9で説明した「偏ったサイコロを2個1組で使う」ルールが直感的に分かりにくい点を整理します。
K6では、偏った確率を持つサイコロセット(A/B/C)をBES³で選び、その2個を振ったときの「出目和の偶奇」によって、プラス成長(偶数)かマイナス成長(奇数)かを決めています。
ここで重要なのは、サイコロ1個の偶奇の偏りを、そのまま2個にすると偏りが強まるわけではない、という点です。
例として1個あたりの偶奇比率を、
A:70:30、B:60:40、C:50:50
とした場合、2個セットの出目和の偶奇は、
Aセット:58:42
Bセット:52:48
Cセット:50:50
となり、偏りは残るものの、必ず緩和されることが分かります。
直感的には「7:3を2個にしたら、もっと偶数が出そう」と感じがちです。けれど実際には「偶+偶」「奇+奇」だけが偶数を作り、偶奇が混ざると奇数になるため、偏りが中和される構造になっています。
K6ではこの性質を意図的に利用し、
「偏りはあるが極端ではない」
「勝ちやすさ・負けやすさが固定化しない」
「揺らぎが自然に連なりやすい」
という状態を作っています。
もし1個だけで偶奇判定をすると偏りが強すぎて、モデル全体が不安定になりやすいからです。
つまりK6のα設計は、「方向性を持った揺らぎだけを残す」ための工夫になっています。
#10 : 偏った確率を採用した僕のレバナス TQQQシミュレーションモデル、ABC-K6モデルの算数式…”β”の解説
この章では、K6モデルにおいて「偶然の連鎖」を数値化するパラメータβ(ベータ)を紹介します。
前回までのαが「その週に上がった/下がった」という方向と変動幅を決めるのに対し、βは値動きの方向そのものではなく、“同じ方向が続いた”という事実を増幅する役割を持ちます。
K6の算数式は、
未来=[今]×[偏り]×[連鎖]×[質]
↓
未来={今×j1×(α×β×γ)×j2×δ}×ε
という構造ですが、この中で
・α:上昇・下落・ゼロ成長の決定
・β:同方向の連続によるボーナス/ペナルティ
という分担になります。
βが発動するのは、αが同じ方向に連続したときだけです。
K6では「同方向の連鎖長」に応じてβの影響が強くなり、反対方向のαが出た時点で連鎖が終了します。
ただし重要な設計として、ゼロ成長(0α)は連鎖を切断しないルールを採用しています。
これは「一旦足踏みしても、流れが変わったとは限らない」という直感をモデル化したものです。
連鎖の例として、プラス成長(△α)が2連鎖・3連鎖する場合、
(▼α)(△α1)(△α2)(▼α)
(▼α)(△α1)(0α)(△α2)(▼α)
(▼α)(△α1)(△α2)(0α)(▼α)
のように、0αを挟んでも同方向なら連鎖が継続します。
マイナス連鎖は、△と▼を反転するだけです。
βの計算は、連鎖長をm(m≥2)として、
・プラス連鎖:β=K^(m−1)
・マイナス連鎖:β=L^(m−1)
と定義します。
指数部を(m−1)にしているのは、1回目の成長はαに含まれており、βは「2回目以降の連鎖効果だけ」を増幅するためです。
βが表しているのは「運が良い/悪い」という感情ではなく、偶然が続いてしまったことによる非線形な増幅効果です。
トレンドが伸びる時も、下落が止まらない時も、体感的なインパクトを決めるのは「方向の正しさ」より「同じ方向が続いたかどうか」――そんな直感を、K6はβとして組み込んでいます。
#11: 偏った確率を採用した僕のレバナス TQQQシミュレーションモデル、ABC-K6モデルの算数式…”γ”と”δ”の解説
この章では、K6モデルの基本式
未来=[今]×[偏り]×[連鎖]×[運の質的階層]
↓
未来={今×j1×(α×β×γ)×j2×δ}×ε
のうち、これまで扱ってきたα(方向と大きさ)・β(同方向の連鎖)とは性質の異なる、「運の質的階層」としてのパラメータγ(ガンマ)とδ(デルタ)を説明します。
K6では「運の質」を一枚岩として扱わず、意図的に2種類へ分離します。直感的には、
・γ:流れの中で起きる運(αの連鎖に随伴して発動)
・δ:流れの外から割り込む運(αの連鎖とは独立に発動)
という整理です。
まずγは、同方向に続いていたαの連鎖が“切れた瞬間”に発動するパラメータです。
βがαの連鎖の勢いを指数的に増幅するのに対して、γは連鎖が終わる境界面で働く「ブレーキ兼クッション」になります。
γには2種類があります。
・Rescue γ:▼α(下落連鎖)を△α(上昇)が切断した時に発動
→ 下落が止まり「救われた」感覚を表すボーナス
・Resistance γ:△α(上昇連鎖)を▼α(下落)が切断した時に発動
→ 上昇が止まり「壁にぶつかった」感覚を表すペナルティ
どちらも共通して、βによる上振れ・下振れの暴走を抑え、トレンド反転の土台を作ります。
次にδは、γとはまったく別物で、αやβの流れと無関係に確率的に出現する “Big Event” パラメータです。
δは決算・経済指標・金融政策・地政学リスク・想定外ニュースのように、「来るときは来る」非連続な割り込みを表現するために導入されています。
K6は、
・α=基本的な変化方向、および変化幅
・β=連鎖が続くことによる内的増幅
・γ=連鎖が切れる瞬間に生じる境界の運
・δ=流れと無関係に割り込む外生イベント
を分離することで、算数式の中に「勢い」「反転」「突発事象」を同時に持ち込める構造になっています。
#12 : 偏った確率を採用した僕のレバナス TQQQシミュレーションモデル、ABC-K6モデルの算数式…”ε “と”j1 , j2 “の解説
この章では、K6モデルの基本式
未来={今×j1×(α×β×γ)×j2×δ}×ε
に残っていたパラメータεとj1、j2を説明します。
まずεはコストを組み込むパラメータです。特にTQQQを保有することで時間とともに発生する「減損コスト」なども含みます。
レバレッジETFには経費率(例:QQQ 0.18%に対してTQQQ 0.82%)という明示コストがある一方で、より重要な“隠れコスト”として、日次リバランス由来のボラティリティ・ドラッグ(ボラ劣化)が存在します。
ボラ劣化は、指数がレンジ相場で小刻みに上下を繰り返すとき、レバレッジETFでは「マイナスの複利効果」が増幅され、評価額が自然に削れていく現象です。
例えば指数が −5%→+5.27% と動けば、ノンレバETFの評価額は対元本比で100.01%となり、元本を回復します。
しかし2倍レバレッジでは値動きが −10%→+10.54% となり、評価額の対元本比は99.49%となって元本割れになります。
この差が積み重なることで、「横ばい相場そのものがコストになる」という、レバレッジETF特有の時間的摩耗が生じます。
K6ではこの摩耗を、εとして常時作用する減損係数に内包し、週次変化がゼロ(α=1)の期間でも、εによって評価額がじわじわ減る構造にしています。
次にj1とj2は、α・β・γ・δ・εのような“設計意図のある構造要素”とは異なり、市場の説明不能な揺らぎ(非合理的なブレ)を入れるためのパラメータです。
j1は算数式の前半(主にαに関わる部分)へ、j2はBig Event(δ)が出たときに追加で、独立のサイコロ抽選による「1±数%」の揺れを与えます。
これらは観測も定義も難しい要素ですが、あえて入れることで、K6が“作為的にTQQQっぽさを演じる”違和感を薄め、現実の市場に近い乱流的な時系列レプリカを生成する役割を僕は与えています。
# 13 : 偏った確率を採用した僕のレバナス TQQQシミュレーションモデル......時系列レプリカは、均等な確率で生成されているか?
ABC-K6モデルで生成される時系列レプリカが、確率的に「同格」なのか――僕はそんな素朴な疑問を抱えています。
K6モデルは有限のパラメータセットと抽選確率から構成されているため、理屈の上では週次変化量の全パターンを、確率頻度別に分類した「未来カタログ」を作ることも可能です。
つまり各レプリカ時系列には、本来「どれだけ起きやすいか」という生起確率が定義できる構造になっています。
しかし実際に1000本のレプリカを生成してCAGR順に並べると、つい「上位も中央値も下位も、同じくらい均等に起きやすい」と錯覚してしまいます。
けれどK6は履歴参照を持ち、Stall(値動きなし)やBig Eventなどの低頻度要素も内包しています。
この構造を考えると、生成された本数が平等であっても、順位空間が確率的に均等とは限りません。むしろ不均等の方が自然なのではないか――僕はそう感じるようになりました。
言い換えると、
「CAGR順位として何本出たか(見た目の分布)」と
「その順位の未来がどれだけ自然に出やすいか(生起確率)」
は一致しない可能性があります。
現時点の初歩的分析でも、中央値付近の順位と、確率的に密集している順位帯の間に乖離があることを示唆する結果が出始めています。K6にはまだ数理的に未解明な論点が残っている――僕はそう感じています。
一方でK6で生成される多様な時系列レプリカを「姿見鏡(体験型シミュレータ)」として見るなら、暴落の深さや回復期間をさまざまな順位帯で自然に体験できる点は、感情的耐性を測る用途として十分意味があるとも考えています。
このTQQQを中心にしたK6モデルの記事は、まだまだ続きがあります。
次回以降は、K6モデルを元に、資産運用の実務で役立つ考察も書いていこうと思います。
