三題噺ショートショートvol.60_届け
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

三題
①バーコード決済
②洗濯ばさみ
③ドレスコード
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「届け」まいりましょうか。

励は、何事にも真面目に取り組むタイプだった。
勉学もクラブ活動も地域のボランティア活動も、全て満遍なく。
愚直なこと、泥臭いことに文句を言ったり。ましてや手を抜くなどということは微塵もなかった。
だが。
その真面目さに反して、報われない人生を歩んでいた。
ある程度以上の結果を出しても華が無いし目立たない。
まるで天は励の努力は当然だと突き放しているかのように感じられるほどに。
まして人など、彼の存在に気付くはずも無い。
既に就職先も決まり。今日はいつものドレスコードでタスクをこなしている。
お婆さんに丁寧に説明してバーコード決済を受け付けた。
振り返って店内へと小さくきちんと一礼し、バックヤードに下がった。
洗い終えた布巾を物干しロープにかけて几帳面に洗濯バサミでとめる。
休憩室のテレビが、つけてあった。
響めきが耳元まで伝わってくる。
日ハムがノーマークの大学生を7位指名したのだ。
励は小さく拳を握り締めた。
「志望届、出してて良かった」

そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑っていた。
「コジくん、マッサー(注1)して、心の汚れを洗い流したらいいよ」
「…」
マッサージをすると、家内は、上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
今日の投稿を入れて、60作。俺にしちゃあ、三題噺もけっこう書くには書いたが。これ、どこまで続くの?
いつまで書くの?
初回から一年を超え、まだまだお題を発してくれるヤスシさんとの根競べだ。

