三題噺ショートショートvol.51_ラスト
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「ラスト」まいりましょうか。

夏の最後の試合のあと。俺たちは、智の家に集まって夕食会を開いた。
智のお袋さんは、とても料理上手で、いつも俺たちに渾身の夕食を振る舞ってくれていた。
だいたいいつも、夏なのに鍋なのだが、この鍋が絶品なのである。
料理を運んできてくれたお袋さんは、ちょっと俺たちを茶化して、智のヘルメットを被っていた。
みんなが笑って雰囲気が解れたところで、ニッコリ笑って言い放った。
「これが、戦う主婦の装備よ」
俺たちの夏は、毎年1試合で終わるのだが。
あの時のプレーはどうだったとか、あそこでこうするべきだったとか、監督のサインが微妙だったとか。
なんだかんだと永遠に、もはや無駄な反省談義で夜更かしをするのだが、ふと洋が、ボソリと呟いた。
「これが最後の鍋なんだな。なんだか俺たち、三年間、すげえ幸せだったな」
そんな不意の一言で、期せずして水を打ったような静けさが部屋を包んだ。
それが声を殺した啜り泣きとなり。やがてはみんながみんな、大いに泣いた。

そんなこんなを家内に語ろうとして後ろを振り向くと、空のソファーが、静かに笑っていた。
先日から家内は、あるプロジェクトで、都心のホテルに泊まり込んでいる。
シーンとした部屋の空気に、なんだか、心が追いつかない。
今宵もマッサー(注1)は、無い。
昼間のやりとりからすると、家内は、元気なようである。
家内が元気だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
今日の投稿を入れて、51作。俺にしちゃあ、三題噺もけっこう書くには書いたが。これ、どこまで続くの?
いつまで書くの?
お題を発してくれるヤスシさんとの根競べだ。

