三題噺ショートショート_絵
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、きかん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼四朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、気が済むのよね?
ブラックホールよりも重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「絵」まいりましょうか。

「あんとき喧嘩しただろ。だから、渡せなかったんだ、サイン帳。ただ、それだけのことだよ」
あいつの高校の時のサイン帳には、俺のところだけ空白になっていて飛ばされているはずだった。
本棚でサイン帳を見つけて、あいつのあやふやな言い訳を思い出した。
こっそり開いてみると、そこには絵が描いてあった。
あいつの絵だった。
野球バカのくせに、なぜだか、絵がやたらと上手かったあいつ。暇さえあれば、教科書の隅っこに、絵ばかり描いていたっけ。
あの日、深夜2時のライン通知音が鳴った。
咄嗟に不吉な予感がしたんだ。
久しぶりに入ることになった、誰もいない、暗くて切ない、あいつの部屋。
あのさぁ、頼むから、泣かせないでくれよ。たかが絵、1枚で。
一気に走馬灯のようにいくつものシーンが駆け巡った。
背番号がもらえなかった、あの日も。
あの子にふられた、あの日も。
俺のエラーで初戦負けした、あの日も。
クラブハウスの屋上で、食ったっけな。
大好物の、焼きそばパン。


ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
そうなの?三題噺?落語の?ショートショートの?書いたの?また、下手くその?みんなに迷惑じゃん!じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しと参りましょうか。ぺぺペン、ペンッ!
……。
マッサージをすると、家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。

