三題噺ショートショート_完敗
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「完敗」まいりましょうか。

大学に入って2年と少し経った頃、高校時代の野球部で集まった。
その中に、女子マネの楓もいた。
凄く良い女性になっていて。すっかり心が奪われた。
少し経ってから、柄にもなく手紙を書くことにした。
所謂、ラブレターというヤツだ。
返事が来た。
その夜は開かず、カバンに入れた。
翌日、残業の後。
八王子で降りるつもりで東京発、最終の中央線に乗り。ゆっくり、読み始めた。
なぜだ。なぜ、俺じゃなくて、光なんだ。あんな平凡な選手。しかも、鈍足のキャッチャーじゃないか……。
気付いたら終着駅の大月で。
戻る列車もなくフラフラ彷徨っていたら、深夜にバーが開いていた。
入ると、マスターが静かに笑って、オーダーもしていないのに、ブラックルシアンというカクテルが出てきた。
「どうぞ」
思えば、楓の選択は正しかった。堅実で心優しくて、男として、いや、人として一番頼り甲斐のある光。ヤツに、負けたのだ。
俺はグラスを掲げ、最高の親友に向けて、小声で言った。
「乾杯!」

そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
「コジくん、そんな駄文で人の時間を費やさせないで、マッサー(注1)に励んでね!」
マッサージすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
今日の投稿を入れて、35作。俺にしちゃあ、三題噺もけっこう書いたは書いたが。これ、どこまで続くの?


