見出し画像

三題噺へ、ようこそ《今週の三題噺発表》

 
三題噺というものを、私はその日までほとんど知らなかった。落語家がやるものだと思っていたし、そもそも「与えられたお題を全部放り込んで話を作る」なんて、学校の読書感想文ですらまともに書けなかった自分には縁のない世界だと決めつけていた。

だから、友人に半ば押しつけられるようなかたちで渡された3つのお題を見たとき、正直、うわ、終わった、と思った。

ねずみ小僧。キャンディ。そしてふしぎ発見。

もはやジャンルすら一致していない。ひとつの世界線にこの3つを同居させるのは、物語の神様に挑戦状を叩きつけるような所業だ。

ところが、机の前に座って鉛筆を握り、「ええやってやらあ」と紙に一文字目を書いた瞬間、意外なくらい手が進んだ。ねずみ小僧がキャンディを配り歩く理由を考えていたら、いつの間にか自分でも知らない町が頭の中に広がって、ふしぎ発見のテーマ曲みたいに胸の奥がわくわくと騒ぎ出す。

なんでこんなに楽しいんだ、と途中で何度も思った。

普段は自分の感情をうまく説明できないのに、物語の中だと、登場人物が勝手に代弁してくれる。嘘みたいだけど、本当にそうだった。

書けば書くほど、頭の中が軽くなっていく。誰の役にも立たない妄想が、ちゃんと意味を持った「物語」として紙の上に定着していく感じ。それは、思った以上に気持ちが良かった。

書き終えて、友人にそっと原稿を渡したとき、胸の奥が少しだけ温かくなっていた。提出ボックスにレポートを滑り込ませる瞬間の、あの小さな解放感に似ている。

でも、それだけじゃ終わらなかった。「これ、おもしろかったよ」と言われたその一言が、雷みたいに全身に落ちた。

読んでもらえるって、こんなに嬉しいことなんだ。

自分の中だけに存在していた世界が、誰かの頭の中にちゃんと移動して、息をし始める。それを目の前で確認できたことが、思いがけず胸に深く刺さった。

書くことの面白さは、その日突然、目の前に扉を開いて見せた。私は単に三題噺のお題を消化しただけのはずなのに、気づけば扉の向こうで、もっと書きたい、という欲が静かに膨らんでいた。

ねずみ小僧とキャンディとふしぎ発見。そのありえない取り合わせが、私に「書ける喜び」と「読んでもらう嬉しさ」という、思ってもみなかったおまけをつけてくれたのだ。

それ以来、何か言葉にしたくなるたびに、あの日の三題噺を思い出す。きっと私はあの瞬間、初めて自分の世界を他人に渡すという行為の魅力に触れたのだと思う。

書くことは難しい。でも、あの温かさを一度知ってしまったら、やめるなんてできっこない。
(了)

《あとがき》
いやー、今回はむずかしかった。お題を入れたのが無理矢理すぎたね。この話はほぼ実話です。
ちなみに私に三題噺を渡してきたこの友人は今、テレビ局で落語家が出演している番組のディレクターをしている。

《前回の三題噺》
1.ねずみ小僧
2.キャンディ
3.ふしぎ発見

説明しよう!三題噺とは、まったく関係のない3つの言葉を強引にひとつの話にまとめる文章遊びであーる。頭をフル回転させながら、「どうつなげる?」「オチどうする?」という落語的プレッシャーが味わえます。エピソード構成力、語彙力、そして無茶ぶり耐性まで育つ、文章版・筋トレRPG。それが三題噺。やってみなきゃ、もったいない!

《今週の三題噺》
1.ラブレター
2.終着駅
3.カクテル

ハッシュタグ
#木曜日は3ースデイ
をお願いします。

どなたでも参加できます。
締め切りは一応来週12月10日(水)まで。
過ぎても大丈夫です。


#66日ライラン
#放課後ライティング倶楽部
[画像協力:さちわ]

《お知らせ》

《《500円のライトコースを新設!》
書く仲間、募集しています。文章クラブ『放課後ライティング倶楽部』では過去記事1000本以上を含む有料記事すべてが、月額1200円で読み放題です。
noteもFacebookも同じ記事が読めます。お好きな媒体をお選びください。
noteメンバーシップにご入会いただくと、希望者さまにはFacebookグループにも招待いたします。

noteメンバーシップはこちら《初月無料!》

Facebookでの入部はこちら

◆文章クラブメンバーさんの近況
能登清文さん
和の心を愛する人生100年時代のお金の専門家(8冊目!『利息生活で楽しむ!米国債・ドル建て社債の教科書 ほうっておいても殖える資産運用術』絶賛発売中!)。日本人向けの『米国債投資』とは?チャンネル登録者数60000人!視聴者累計100万人!
【お金の学校】のとチャンーYouTubeチャンネル

いいなと思ったら応援しよう!

ヤスシ◆放課後ライティング倶楽部 最後まで読んで頂きありがとうございます! また是非おこしください。 「スキ」を押していただけるとめちゃくちゃ感激します 感想をツイートして頂ければもっと感激です ありがとうございます!感謝のシャワーをあなたに