三題噺ショートショートvol.42_女房
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「女房」まいりましょうか。

コンクリートの乾いた反射音が高架下に響いた。
ボールがバウンドして足元に返ってくる。
「腹が減ったな」
俺はナナチキ。匡はファミチキ派だった。
向かう先は、ジャンケンで決める。
俺はチョキで、匡はグー。
今日もファミマか。
思わず斜め横を向き、空を恨めしく見上げた。
「なぁ、ホントに行くの?」
匡は夏の地獄の合宿に当てたように海外旅行に行く予定なのだ。
そんなことをしたら、匡はレギュラーから外れる。俺はそればかりを心配していた。
案の定、秋季大会のメンバー表に匡の名は無く。最後の夏も、匡のユニフォームに背番号は無かった。
匡は、夏が終わろうとする頃に急に休学し、留学して下の学年で卒業した。
俺は曲がりなりにも野球推薦で大学を卒業し。今はサラリーマンをしている。
匡は、名のある日本人メジャーリーガーの通訳を続けていて。テレビ画面にはいつも、笑顔で映っている。
匡が女房役なら、あの夏は完璧だったに違いないとふと思うのだが。
今は昔のことである。

そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
「コジくん、女房は、大事にしなきゃね。誠心誠意のマッサー(注1)、頼むね!」
……。
マッサージすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
今日の投稿を入れて、42作。俺にしちゃあ、三題噺もけっこう書いたは書いたが。これ、どこまで続くの?
いつまで書くの?
お題を発してくれるヤスシさんとの根競べだ。

