三題噺ショートショートvol.58_失投
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「失投」まいりましょうか。

回転寿司で、紬と迅と岳と俺は野球談義をしていた。
後からなだれ込んできたのが、廉の野球部だった。
廉がすかさず俺達を見つけて言った。
「ジェネリック、寿司なんか食ってていいのかよ?」
ヤツらは県優勝常連。
紬が、小声で問う。
「ジェネリックって?」
実は俺達4人は同じ少年野球団で。廉と迅は、共に左のアンダースロー。フォームが酷似しており。廉だけが強豪に呼ばれ、そのとき迅についたあだ名なのだと説明した。
紬は、ただ目を閉じて頷いた。
決勝戦。
ヤツらの大応援団が一塁側に陣取ると、試合開始直前、わんさか人が入ってきて異様な雰囲気に包まれた。
俺達の好プレーには大声援が。ミスをしても、大激励の声。無駄な野次は一切無い。
投手戦で迎えた9回裏、廉の唯一の失投を岳は見逃さず、サヨナラホームラン。
その夜、寿司屋貸し切りで大祝勝会となった。主宰は紬のお父さん。
あの大応援団は、紬の仕業だった。
俺は座敷の隅っこで独り言ちた。
「令嬢の復讐劇、お見事!」

そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑っていた。
「コジくん、世の中上手く行かないことの方が多いよね。でもね、マッサー(注1)は、お願いしますね」
マッサージをすると、家内は、上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
今日の投稿を入れて、58作。俺にしちゃあ、三題噺もけっこう書くには書いたが。これ、どこまで続くの?
いつまで書くの?
初回から一年を超え、まだまだお題を発してくれるヤスシさんとの根競べだ。

