鳥好きが、鳥だらけの「鳥の王国」を本気で考えてみた――トリニーランド3
この話はフィクションです。
実在のあれこれとは関係ありません。
ここは、とあるエンタメ企画会社の一室。
きのころと、一人の男が向かい合って座っていた。
男の名前は「鳥好」。
鳥好が言った。
「これまで、鳥好きのための楽園、
トリニーランドの概要をお伝えしてきました」
きのころが答える。
「もう、テーマパークという次元を超えて、
ひとつの国のようでした」
鳥好は、大きく頷いて、こう続けた。
「ひとつの国。まさにそのとおり。
実際、トリニーランドは、鳥の王国なのです」
鳥好は一呼吸おいて、こう切り出した。
「きのころさん。バルタン星人って知ってますか?」
「バルタン星人を知らない地球人はいませんよ!」
「それは、さすがに言いすぎでしょう」
「日本でもっとも有名な宇宙人のひとり、
くらいにしておきます(トーンダウン)」
「バルタン星人の言葉って、
どうやって翻訳したのか、不思議に思いませんか?」
『ウルトラマン』に出てくるバルタン星人は、
どう聞いても「フォッフォッフォッ」としか言っていない。
鳥好は続ける。
「それなのに、科学特捜隊の翻訳機を通すと、
完璧な日本語として出力されるんです」
正確にいうと、バルタン星人が初登場した「第2話」と
二度目に登場した「第16話」では状況が違う。
今話題になっている翻訳機は「第16話」の方だ。
きのころはそれを指摘しようとして、やめた。
話が長くなるからだ。
「科学特捜隊が、ものすごく高性能な翻訳装置を
持っていたんじゃないですか?」
「おそらく、そうでしょう」
「では、解決ですね」
「いいえ。ここからです」
鳥好は、手元の資料を開いた。
そこには、見覚えのある写真が載っていた。
そう。
これは、グレイ――

――じゃない!
バルタン星人!?
「ウルトラマン第2話の放送直後に、
バルタン星人が捕獲されたという情報があります」
「マジで!?」
「おそらく、バルタン語の解析はここから始まったのではないかと」
きのころは、言葉を失った。
それが本当なら、大変なことだ。
エリア51にいるのは、グレイではなくて、
バルタン星人だったのか。
鳥好はさらに続ける。
「調査の結果、
人間にはすべて同じ『フォッ』に聞こえても、
実際には、
・周波数
・音の長さ
・音量
・倍音
・発音間隔
・音の立ち上がり
・音の減衰
が細かく違っていました」
「なにそれすごい」
「バルタン星人の『フォッフォッフォッ』が
超精密音響解析装置では、
・18.3キロヘルツを含むフォッ
・位相が30度ずれたフォッ
・0.013秒長いフォッ
として区別できたのです」
「いやぁ、全然知りませんでした」
「――という、私の妄想です」
「え、今の全部、妄想だったんですか?」
「はい」
「いったい、何を聞かされていたんですか?」
「他の言い方でお願いします」
「なんのはなしですか」
鳥好は資料を閉じて言った。
「こんな風に、鳥の言葉が翻訳できたら、
素敵だと思いませんか?」
「鳥と話ができる、ということですね?」
「そうです」
鳥が好きな人なら、
一度くらいは考えたことがあるのではないだろうか。
群れているスズメは、何を話しているのか。
渡り鳥は、長い旅の途中で何を考えているのか。
一緒に暮らす愛鳥は、飼い主のことをどう思っているのか。
鳥の言葉が分かれば、鳥の世界は、もっと身近になるかもしれない。
夢のような話だ――
「というわけで、鳥語翻訳装置を作りました」
「もう作ったんですか?」
「はい」
「どうやって?」
「我々には、トリニーランド構想を実現するための、
2人の技術顧問がいます」
魔法技術担当、魔女っ子セラミー。
科学技術担当、キューティードラミー。

「ここでは、ドラミ―さんの力をお借りしました」
ドラミ―は、ド〇えもんが持っているひみつ道具は、
すべて自由に使うことができる。
ドラミ―が用意したのは、「動物語ヘッドホン」。

「動物の言葉を人間の言葉に翻訳する道具です。
私たちは、この道具を使い、
鳥語翻訳装置『バードリンガル』を開発しました」
この装置では、鳥の鳴き声だけでなく、
音の高さ、鳴く長さ、鳴き声の間隔、体の向き、
羽や尾の動き、周囲の鳥や動物、その場の状況。
これらを総合して、
鳥の言葉を人間の言葉に変換する。
もちろん、鳥の種類による言葉の違いにも対応している。
「すべては、『ター鳥・トーク』のために!」
「え、なんて?」
「トリニーランドのアトラクションの名前です」
鳥好は、新しい資料を取り出した。
そこには、
「タートル・トーク」
と書かれていた。

鳥好は、慌てて資料を閉じた。
「間違えました。こちらです」
表紙に「ター鳥・トーク」と書かれている。
鳥好が資料の内容を説明した。
大きなスクリーンに鳥が現れ、来園者の質問に答える。
鳥の言葉は翻訳装置によって日本語に変換されるため、
自由な会話を楽しむことができる。
完璧な企画に思えた。
しかし、試験運転を始めると、重大な問題が判明した。
「今日は何を食べましたか?」
「毛虫」
「え、毛虫?」
「はい」
「毛虫、おいしかったですか?」
「おいしかった」
会話が終わった。
別の質問をする。
「好きなゲームは何ですか?」
「ゲーム?」
「みんなで遊ぶものです」
「昨日、みんなでネコから逃げました」
それは遊びではない。
さらに別の鳥へ尋ねた。
「将来の夢は何ですか?」
「冬を越す」
想像以上に重たい答えが返ってきた。
鳥は、来園者の質問には答える。
しかし、そこから話を広げない。
相手に質問を返さない。
会場全体を巻き込むような機転も利かない。
そもそも、共通の話題が少なく、
世界の認識も、価値観も違う。
本家「タートル・トーク」のような、
楽しい掛け合いにはならなかった。
鳥好が言う。
「さらに、別の問題もありました」
「なんですか?」
「スズメが『チュン』と鳴きます。
翻訳装置が日本語に変換します。
『チュン』と表示されます」
「翻訳できていないじゃないですか」
「スズメは、本当に、
『チュン』としか言っていないこともあるのです」
鳥の鳴き声には、すべて深い意味がある。
人間は、そう思いたい。
しかし鳥は、ときには「チュン」としか言っていない。
鳥の言葉がわからないから、
鳥と会話できなかったのではない。
わかったところで、
あまり話がかみ合わなかったのである。
「普通の鳥では、アトラクションとして成立しませんね」
「そうなんです」
「いや、もう、ほんとに、
なんのはなしですか」
鳥好はこう言った。
「『ター鳥・トーク』の実現に必要なのは、
高性能な鳥語翻訳装置ではありませんでした」
「そもそも、会話になりませんからね」
「必要なのは、来園者の質問を受け止めて、
話の内容を理解し、話を広げられる鳥です」
「そんな鳥がいますか?」
「います」
鳥好は、力強く答えた。
「ポリネシアです」
<ナレーション>
説明しよう!
ポリネシアとは、
児童文学『ドリトル先生』シリーズに登場するオウムである。
ポリネシアは、人間の言葉を理解する。
ドリトル先生は、動物の言葉がわかるお医者さんだが、
先生に、各種の動物語を教えたのがポリネシアなのだ。
人間の文化もわかっている。
頭の回転も速い。
そこで、「ター鳥・トーク」は、普通の鳥との会話はあきらめ、
ポリネシア本人と話すアトラクションへ変更することになった。
ター鳥・トーク
ドラミーが用意したのは、「絵本入りこみぐつ」。

この靴を履いて本の上に立てば、物語の中へ入ることができる。
とはいえ、本を足で踏むことに抵抗がある人もいるだろう。
そこで、魔女っ子セラミーが、
魔法で本に「ゲート」を作り出した。
この靴を履いてゲートを通過すれば、
物語の中に入れる仕組みである。
次に、ドラミ―は、『ドリトル先生』の本を、
ビッグライトで巨大化。

魔女っ子セラミーが、物語の世界に「結界」を張る。
こうしておかないと、
来園者が、物語の世界に干渉できてしまうからだ。

来園者は、「絵本入りこみぐつ」を履き、本の中へ入場する。
巨大な表紙が、アトラクションの入口。
ページをめくるたびに、森や町、海など、物語の風景が広がる。
その世界の奥にあるトーク会場で、
オウムのポリネシアと自由に話すことができる。
ポリネシアは、人間の言葉も鳥の言葉も理解する。
鳥についての質問はもちろん、
人間と動物の違いや、
動物から見た人間の不思議、
人間が知らない鳥社会の常識、などなど。
さまざまな話題に答えてくれる。
頭がよく、話も上手。
ポリネシアが知らない、最近の話題であっても、
ポリネシアが質問することで話をつないでくれる。
最高のエンターテイナーだ。
来園者全員に「絵本入りこみぐつ」を配布するため、
靴を「バイバイン」で大量に増やした。

「バイバイン」とは、増やしたい物に一滴かけると、
5分ごとに、倍々に増えていくひみつ道具。
ドラえもん史上、
もっとも軽い気持ちで使ってはいけない道具の一つである。
バイバイン(ドラえもんのひみつ道具)
増やしたい物に一滴垂らすと5分ごとに数が倍に増える。
ただし、増やした物は何らかの方法で処分しない限り無限に増殖し続ける。
およそ1日で宇宙全体の体積を超え、宇宙が崩壊する。
「話は聞かせてもらった。人類は滅亡する!」
「な、なんだってーーー!?」
MMR(原作:石垣ゆうき)でなくても、
そう言いたくなる。
しかし、心配はいらない。
魔女っ子セラミーの終結魔法で、
靴の無限増殖を止めることができた。
(な、なんだってーーー!?)

「ター鳥・トーク」は、さまざまな本に応用できる。
たとえば、人気絵本『からすのパンやさん』だ。
このページに入り込んで、
好きなパンを、たらふく食べることができる。

そんなことが実現するなんて――
夢のような話ではないでしょうか!😭
雲の上の王国
ここで、鳥好は、
トリニーランド、最大の秘密を明かすことにした。
「きのころさん、
トリニーランドって、どこにあると思います?」
これまでに紹介した数々のアトラクション。
鳥料理専門巨大フードコート「トリトバー」。
居住専用エリア「鳥巣民ヴィレッジ」――
日本には、
これほど巨大なテーマパークを造る土地がない。
いや、土地があったとしても、取得は不可能だ。
「鳥好さん、まさか、空――?」
「その、まさか、です!」
「トリニーランドは、空に浮かんでいるんですか?」
「そのとおりです!」
「ラピュタは本当にあったんだ!」
「いえ、ラピュタではないですよ。
飛行石でもないです。
あの子たちがバカどもからラピュタを守りましたから」
「飛行石なら、Amazonに売ってましたよ?」
「違います。飛行石は海に捨ててください」
使ったのは、ドラミーの「雲かためガス」だ。

映画『ドラえもん のび太と雲の王国』にも登場した、
雲を固める道具である。
雲を固めて、空に、広大な土地を作った。
固めた雲の上には、人間が立つことができる。
建物も建てられる。
森や川、湖も作れる。
雲の中に「地下」も作れる。
こうして、雲の上に、
鳥のための巨大な王国が誕生した。
「え、でも、雲の上なんて、
どうやって行くんですか?」
「少し、アクセスが悪いですね」
「アクセスが悪いとかいうレベルじゃない」
「大丈夫。
我々には『どこでもドア』があります」
日本全国に、トリニーランド行きのゲートとして、
トリニーランド直結の「どこでもドア」を設置。
ゲートをくぐれば、その先は、トリニーランドの入口。
チケット売り場だ。
ゲートとなる「どこでもドア」は、
全国の主要都市だけでなく、地方の津々浦々に配置した。
駅前。
道の駅。
ショッピングモール。
全国どこからでも、
ゲートをくぐれば、雲上のトリニーランドへ到着する。

大量に必要となる「どこでもドア」は、
もちろん、バイバインで増やした。
なお、トリニーランドには、映画版の『雲の王国』と同様、
絶滅した鳥たちの保護区もある。
モア、ドードー、リョコウバト――

絶滅した鳥たちは、遺伝子操作で生き返ったわけではない。
あくまで、魔女っ娘セラミーの生み出した幻影である。
しかし、本物さながらに動き、生活している。
鳥と人間の関係に、思いを馳せてほしい。
リアル・ファンタジーランド
リアル・ファンタジーランドとは何か。
本家、ディ〇ニーランドのエリアの一つ、
「ファンタジーランド」を意識しているが、
ここでは、リアルな体験を重視している。
今回は、本格的なゴーカートを紹介する。
鳥好が言う。
「ここで見ていただきたいのは、
なんといっても、鳥型ゴーカートです。
ゴーカートとはいっても、
雲の上のゴーカートですからね。
本当に、空を飛んでいるような気分を味わえます」
なんと、100種類を超える鳥のデザインから
搭乗するカートを選べる。
コースは、プロジェクションマッピングによって、
どんどん変化する。
もはや、リアル・マリオカートである。
ここからは、きのころ事務所、総力をあげて、
一流のモデル(笑)を総動員して紹介する。
オオミズナギドリ号 × セラミー
一番手、キューティーセラミーが選んだのは――
オオミズナギドリ、だった。

鳥好は少し驚いたようだ。
「いきなり、この鳥を選ぶとは…。
セラミーさん、通ですね!」
この鳥は、あの名作『冒険者たち』で、
ガンバが乗っていた鳥である。
本の表紙にもなっている。
コンドル号 × チューニー

「チューニーは、以前、コンドル・ダンサーのモデルになって、
コンドルが気に入っているみたいなんです」
コンドル・ダンサー
(モデル:チューニー)

ワシミミズク号 × ミミミー

「ミミズク土偶のミミミーが、ミミズクに乗って空を飛ぶ。
最高のキャスティングですね。ミミミーも楽しそうです」
ガン号 × フチシカ

「渡り鳥の代表的存在である鴈。
『ニルスのふしぎな旅』の旅の仲間です」
ガチョウ号 × カプフチ

「ところが、『ニルスのふしぎな旅』で、主人公が乗るのは、
ガンではなく、ガチョウです。
これに乗りたい人も多いのではないでしょうか」
ハクトウワシ号 × ジュピター

「これは、文句なくカッコいい!
アメリカの国章にも描かれている、アメリカの国鳥です」
アカショウビン号 × アッコ

「火の鳥の異名を持つ、赤いカワセミです。
『赤い彗星』みたいですね」
<ちょっと一息>
ゴーカートお披露目の合間に、
水鳥ボートエリアをご紹介。
このエリアでは、30種類を超える水鳥から、
好きなボートを選ぶことができる。
以前、紹介した画像も含めて、
5種類のボートを紹介する。
マガモボート × 競艇セラミー

アヒルボート × ホケころ

オシドリボート × ハチミー

白鳥ボート × キューティクルセラミー

ペリカンボート × ラッカス・シスターズ

ここから、ゴーカートの紹介に戻ります。
カササギ号 × ナンノ

「七夕伝説で、天の川に橋をかける鳥です。
幸運の鳥、幸せを運んでくる鳥と言われています」
ハヤブサ号 × マリリン

「スピードタイプの代表的存在ですね。
急降下時の速度は最高時速約400kmにもなるそうです」
ケツァール号 × 宮廷セラミー

「ケツァールは世界一美しい鳥と言われています。
中米コスタリカの国鳥で、古代アステカから崇拝されてきました」
火の鳥号 × キューピーセラミー

「実在の鳥だけでなく、伝説の鳥、創作の鳥もいます。
マンガ代表、手塚治虫先生の名作『火の鳥』です」
八咫烏号 × 座敷童子

「八咫烏は日本神話に出てくる三本足のカラスですね。
サッカー日本代表のエンブレムにも描かれています」
きのころがそう言うと、鳥好が口をはさんできた。
「きのころさん、八咫烏は神の使いですよ?
妖怪を乗せて大丈夫でしょうか」
「妖怪といっても、座敷童は縁起がいい存在ですからね。
問題ないと思いますが?」
「座敷童は、妖怪界隈でもカリスマですから。
トリニーランドに妖怪が押し寄せて、
『童子ちゃんが乗ってた鳥に乗りたい』
となっても困ります」
「それでは、神様っぽいモデルを出しましょう」
ふふふ三姉妹

テイク2
八咫烏号 × ふふふ三姉妹

「八咫烏の三本の足に座っちゃってますが……」
「そうでした。この三人はサイズが小さいのです」
「他に、八咫烏に乗れそうなモデルさんはいませんか?」
「そういうことなら、フチころを召喚しましょう。
巫女スタイルで」

テイク3
八咫烏号 × フチころ

「けっこう、神々しい感じになりました」
「さすが、フチころさん、何でもできますね」
王国の王様
さて、ここまで、さまざまな角度から、
トリニーランドを紹介してきた。
トリニーランドには、アトラクションがある。
飲食店がある。
住居エリアがある。
全国各地から、どこでもドアを通って人が訪れる。
そして、雲の上には、広大な土地が広がっている。
ここまで来ると、単なるテーマパークではない。
鳥好が言う。
「今日の話の冒頭で、
『トリニーランドは鳥の王国』
と言ったのを覚えていますか?」
「あ、はい。
……え?
よくある比喩ではないんですか?」
「トリニーランドは、王国です。
ちゃんと、王様がいるんです!」
鳥の王国に、鳥の王様!?
トリニーランド国王とは一体――?
鳥好が尋ねる。
「きのころさん、誰だかわかりますか?」
「え? 国王ですか?
やはり、貫禄があって、堂々としていて…」
「いやいや。
ここでの王様は、そういう存在ではないのです。
以前、ハシビロコウ僧侶が言っていた言葉を
思い出してください」
ハシビロコウ僧侶

「小さき鳥を、ただ小さきものと思うな。
その翼には、太古の記憶が折りたたまれている」
力強いものではない。
立派なものでもない。
むしろ、もっとも小さく、か弱い存在――
その名は、
キクイタダキ。

全長10cm。体重3~5グラムほど。
日本で見られる鳥の中では一番小さい。

「キクイタダキ」という和名の由来は、
頭頂部に菊の花びらが乗っているように見えることから。
ヨーロッパでは、この黄色い冠羽を王冠に見立て、
「鳥の王」と言われている。
小国ルクセンブルクの国鳥でもある。
きのころは想像する。
荘厳な音楽が流れる王の間。
赤いじゅうたんの先に、巨大な玉座がある。
玉座には、金色の装飾。
背もたれには、鳥の翼をかたどった紋章。
そして、玉座には――
「あれ?
誰もいませんよ?」
鳥好が双眼鏡を渡す。
「王様を拝謁するには、双眼鏡が必要です」
きのころは、双眼鏡をのぞく。

玉座の中央に、小さな鳥がいる。
キクイタダキ王である。
頭には、黄色い王冠。
もっと大きな鳥もいる。
もっと強い鳥もいる。
もっと賢い鳥もいる。
しかし、最初から頭に王冠を持っている鳥は、そういない。
キクイタダキ王、たしかに「持っている」。
国王は政治を行わない。
あくまで、象徴的な存在である。
王国の平和と、鳥たちの幸せを願い、玉座にとまっている。
トリニーランド構想は、
「バードウォッチングで、鳥がどこにいるか分からない」
という話から始まった。
鳥を見つけやすくするために、
高性能の双眼鏡システムを作った。
そして、テーマパークを作った。
王様を見るためにも、双眼鏡が必要。
すべては、なるようにして、そうなっていたのである。
「ちなみに、キクイタダキ王は、
時々、本当にいなくなります」
「え?
大事件じゃないですか!」
「そのときは、国民――つまり、スタッフ、居住者、
それに、観光客も含めて、総出で国王を探します」
双眼鏡システムには、
「血眼モード」が搭載されている。
トリニーランドに居合わせた人々が、
思想も宗教も生まれも育ちも超えて、血眼で国王を探す。
トリニーランドは今日も平和である。
トリニーランドが目指すもの
人間は、昔から鳥に憧れてきた。
空を飛ぶ姿を見上げ、
美しい声に耳を澄まし、
羽の色や形に心を奪われてきた。
鳥を神の使いとして敬い、
自由や平和の象徴として描き、
絵本、漫画、アニメの中に、
数え切れないほどの鳥を生み出してきた。
一方で、人間は、鳥を食べて生きてきた。
卵や羽を利用し、
鳥の住む場所を奪い、
多くの鳥を絶滅させてきた。
鳥を愛することと、鳥に生かされること。
鳥に憧れることと、鳥を利用すること。
人間と鳥の関係は、単純ではない。
だからこそ、トリニーランドでは、
鳥を一つの方向からだけ見ない。
鳥を見る。
鳥の能力を知る。
鳥の言葉に耳を傾ける。
鳥の食文化を味わう。
失われた鳥の歴史を学ぶ。
そして、人間が物語の中に生み出してきた、
たくさんの鳥たちに出会う。
現実の鳥。物語の鳥。
生きている鳥。絶滅した鳥。
空を飛ぶ鳥。空を飛べない鳥。
空を飛べない人間。
そのすべてが、雲の上で出会う。
鳥を知れば、世界の見え方が少し変わる。
鳥の声を知れば、いつもの朝が少し違って聞こえる。
絶滅した鳥を知れば、いま目の前にいる鳥が、
当たり前の存在ではないと気づく。
物語の鳥たちを見れば、
人間がどれほど長い間、鳥に夢を重ねてきたのかが分かる。
鳥を愛し、鳥に学び、鳥に生かされ、
鳥とともに、世界を面白がる。
それが、トリニーランドの理念である。
玉座の上で、キクイタダキ王が鳴いた。
バードリンガルが、その言葉を翻訳する。
「おなかがすいた」
鳥の王様も、考えていることは我々と同じだった。
――とまぁ、こんな感じに。
雲の上の王国トリニーランドは、
今日も、着々と拡張を続けている。
信じるか信じないかは、あなた次第。
本日は以上です。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
たくさんのnoteの中から、私の記事を見つけて読んでいただき、
ありがとうございました。
「なんかいいかも」と感じていただけたら、
スキやフォローで合図を送ってもらえると、とても励みになります。
どうぞ、よろしくお願いします。
