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多趣味党宣言——好きなことを、もっと好きでいられる国へ【創作大賞】

「多趣味は、国家の基本戦略である」

……そんなことを言ったら、笑われるかもしれません。
いや、怒られるかも。

でも、政治の役割って何でしょう。

災害に備えること。
経済を強くすること。
少子化を止めること。

どれも、もちろん大切です。

でも、それ以前に。

この国に住む人たちが、
毎日をどうやって楽しく生きるか——。

その問いこそが、
すべての政策の前提になるべきではないでしょうか。

そして、それに答えをくれるもののひとつが、
私は「趣味」だと思うのです。


……こんにちは、きのころです。

普段はFPや司書として、あるいはライターとして、
そして何より、多趣味な一市民として暮らしています。

今日は、そんな「多趣味市民」を代表して、
「多趣味」を国家戦略とする政治思想、
いや、政治妄想を語らせてください。

マルクス、エンゲルスによる『共産党宣言』にならって、
「多趣味党宣言」とでも言いましょうか。

スローガンは、こちらです。

「すべての人に、ひとつでも多くの趣味を!」
「好きなことを、もっと好きでいられる国へ!」

目指すは、「趣味立国」です。

なお、最初に申し上げておきます。

この記事は、100%私の妄想であり、
特定の政治団体や特定の思想とはいっさい関係ありません。

国政に立候補する予定もございません。
——今のところは。

「多趣味党」という名称も、
「甘党」「ビール党」くらいのものだと思ってお読みください。

ただし。

趣味が人を救う、という一点については、
わりと本気です。


多趣味党・基本綱領

多趣味党は、次の理念を掲げます。

一、趣味は贅沢品ではなく、生活必需品である。
一、趣味は生きる力を支えるインフラである。
一、趣味の多様性は、社会のしなやかさである。
一、好きなことを好きと言える社会を守る。
一、すべての人に、ひとつでも多くの趣味を。

党員資格は簡単です。

何かを「好き」と言える人。
あるいは、これから「好き」を探したい人。

それだけで、あなたはもう、
多趣味党の立派な支持者です。


趣味は贅沢品ではなく、生活必需品

「趣味にお金をかけるなんて、贅沢じゃない?」
「そんなことしてる暇があるなら、仕事しなよ」

こんな声を、どこかで聞いたことがあると思います。

でも、趣味は、ただの「遊び」ではありません。

スキルが身につき、自己肯定感を高め、
続けることで成長を感じることもできる。

また、ストレスを解消し、心の安定にも役に立つ。

このように、趣味は、人生のアクセルやブレーキとして機能します。

前に進む力にもなる。
立ち止まるための場所にもなる。

この力を、もっと社会全体で肯定していくべきだと思うのです。

「7ポケッツ」という言葉をご存知でしょうか。
「セブン・ポケット」ともいいます。

これは、ある日突然、収入がゼロにならないよう、
7つの収入源、つまり7つのポケットを持って、
リスクを分散しよう、という考え方です。

同じように、趣味にも7つのポケットがあると安心です。

趣味が多いことは、悪いことではありません。

時代の変化が激しい今、
「いろんなことに興味を持ち、手を出し、楽しめる」ことは、
むしろ、最大の資質だと言ってもいいでしょう。

「収入の柱を複数持つ」のと同じように、
「趣味の柱を複数持つ」ことで、
人生全体のバランスが取れるようになります。

読書ができない日には、散歩がある。
創作が止まった日には、料理がある。
人と会う元気がない日には、一人でできる趣味がある。
一人で抱えきれない日には、誰かと分かち合える趣味がある。

心の支えを、ひとつだけにしない。

それは、弱さではなく、
人生を長く続けていくための知恵です。

趣味は贅沢品どころか、
なくなってしまうと困る必需品。

個人にとっても、社会にとっても、
無趣味状態を放置することは、
大きなリスクを見逃すことになります。

無趣味を責めるのではありません。

まだ出会っていないだけなのです。
その人を支えてくれる何かに。

多趣味党は、その出会いを増やすために存在します。


趣味は生きる力を支えるインフラ

たとえば、働けなくなったとき。
たとえば、家族や居場所を失ったとき。

そういうとき、あなたを守ってくれるものは何でしょうか。

社会保障かもしれません。
行政の支援かもしれません。

もちろん、それらは必要です。

でもその前に、心をつなぎとめる“何か”があるかどうか

それが、趣味なのです。

趣味というのは、何かが壊れたときに、
もう一度立ち上がる力になってくれます。

趣味は、心の居場所であり、避難所です。

一人でできて、誰かと共有もできて、
その上で、他人と競う必要もなく、
ただ「好き」でいられる活動。

こんな存在があるからこそ、
人は、最終的に「自分で自分を支える力」を
失わずにいられるのだと思います。

学校でのいじめ。
職場でのメンタル不調。
定年後の孤独。
子育てが終わったあとの虚無感。

人生のどこかで必ず訪れる「揺らぎ」や「空白」に対して、
趣味という存在は、圧倒的に強い。

しかも、文化的で、平和的で、創造的です。

こんなに素晴らしいインフラが、他にあるでしょうか?

道路や水道や電気が社会を支えるように、
趣味は、人の内側を支えます。

目には見えにくい。
けれど、なくなると困る。

だから多趣味党は、宣言します。

趣味は逃げ道ではありません。
生き延びるための道です。

好きなものが多い人は、ブレているのではありません。
根っこをたくさん張っているのです。


10の多趣味政策と趣味庁構想

そんなわけで、私はこう考えました。

趣味の力を、もっと社会のど真ん中に据えたらどうだろうか?

教育、医療、福祉、経済、地域活性化――

どれも趣味と関係があります。

むしろ、趣味をきちんと「政策の対象」にすれば、
あちこちに散らばっていた社会課題が、
ひとつの軸でつながってくるのでは?

つまり、
趣味政策の総合パッケージが、今こそ必要ではないか!

という結論に達したのです。

ここからは、私が勝手に脳内で設立している
「趣味庁」の存在を前提に、
その政策について、具体的な構想をお話しします。

「趣味庁」とは、一言でいえば——

趣味を社会資源として最大限に活かすための、
未来志向型省庁
です。

趣味を「個人の自由な娯楽」から、
「社会的にも価値ある活動」へと転換する目的を担っています。

ここに、多趣味党は以下の10政策を提案します。


政策①
「趣味のサブスク化」構想

多くの人が、こう言います。

「趣味ってお金かかるよね……」

そして、その時点であきらめてしまうことがあります。

そこで多趣味党は、
月額制で文化活動や趣味教室にアクセスできる
「市民趣味サブスク」を全国展開します。

図書館カードのように「多趣味パス」を提示すれば、
公民館のクラフト講座、地元の音楽サロン、陶芸体験などに、
無料または割引で参加できる。

民間の趣味教室とも連携し、
月額1,000円から3,000円程度で、
多ジャンル体験が可能になる仕組みを整備します。

目的は、
「お金がないから趣味を持てない」
「お金がないから趣味を増やせない」
という壁を減らすことです。

趣味への入口は、もっと低くていい。

最初から道具を全部そろえなくてもいい。
最初から上手でなくてもいい。
最初から一生続ける覚悟なんて、なくていい。

ちょっとやってみる。
意外と楽しい。
また行ってみる。

多趣味立国は、その小さな入口から始まります。


政策②
趣味支出の「所得控除」制度化

家計の中における趣味関連の出費は、地味に大きいです。

趣味そのものにかかるお金だけでなく、
イベント参加費や交通費、材料費などなど。

ひとつひとつは小さく見えても、
積み重なると、なかなかの金額になります。

この制度では、趣味の道具や材料、活動費などの
「趣味の維持費」を、
税金の扶養控除などと同様、控除対象にします。

たとえば、世帯内で趣味活動に年間10万円以上支出があった場合、
確定申告で一部還付。

対象となるのは、
創作活動、地域イベント参加、
趣味によるコミュニティ貢献など。

趣味にかけるお金が、
「無駄遣い」ではなく「未来への投資」として扱われる社会。

さらには、ちょっとだけ「節税」にもなる社会。

これはもう、楽しみながら生きるための財政政策です。


政策③
趣味休暇

年に数回、
「全力で趣味に没頭する日」として使える休暇制度を整備します。

名称は、趣味休暇Enjoyment Holiday)

使い方は自由です。

ライブ遠征。
イベント参加。
読書三昧。
山菜採り。
映画の一気見。
ボードゲーム合宿。
何もしないで、ただ好きな音楽を聴く日。

有休とは別枠で、年1〜2日、
趣味活動を理由に堂々と休暇を取得できる文化を浸透させます。

「すみません、明日は趣味休暇です」

この一言が、
何の後ろめたさもなく言える社会。

これは、仕事だけでなく、
人生を本気で楽しむ権利を保障する制度です。


政策④
趣味スタート補助金

地域の趣味活動は、
数千円の資金さえあれば大きく花開くことがあります。

多趣味党は、
「3,000円からの小口補助金」として、
「趣味スタート補助金」を導入します。

支援するのは、たとえばこんな活動です。

初めての句会を開きたい。

廃校になった体育館で、フリスビーイベントをしたい。

子どもと一緒に、ボードゲーム体験会を開催したい。

近所の人と小さな写真展を開きたい。

誰かの家に眠っている楽器を集めて、
一日だけの地域バンドを作ってみたい。

大きな予算はいりません。

必要なのは、
「やってみたい」を「やってみた」に変えるための、
ほんの少しの後押しです。

趣味は、始まってしまえば勝手に育つことがあります。

だから行政は、全部を管理しなくていい。
ただ、最初の一歩にだけ、そっと風を送ればいいのです。


政策⑤
趣味ジャンル多様性保護法案

“国が守るべき文化”というと、
伝統芸能の話になりがちです。

もちろん、それも大切です。

でも実際には、
「残したい趣味」はもっと生活のそばにあります。

昭和家電コレクター。
セミの抜け殻研究会。
消えゆく看板フォントの撮影記録者。

一見マニアックな文化こそが、
未来への遺産になる
のです。

今は「変わった趣味」と呼ばれているものが、
50年後には貴重な生活文化資料になっているかもしれません。

そこで多趣味党は、
絶滅危惧種のように、今にも消えそうな趣味を保護するため、
デジタルアーカイブとして保存し、後世に残します。

名づけて、
趣味ジャンル多様性保護法案。

多様性とは、人間関係や働き方だけの話ではありません。

「好き」の種類が多いこと。
それもまた、社会の豊かさです。


政策⑥
多趣味バッジによる活動支援

名刺代わりに、
「何が好きか」で自己紹介する時代へ。

多趣味党は、市役所や図書館で、
定期的に“多趣味人バッジ”を交付します。

週5以上の趣味活動継続で、シルバーバッジ。

趣味を他人に広げた数で、布教貢献バッジ。

誰にも理解されない趣味を10年以上続けた人には、
孤高の継続バッジ。

趣味を3回やめて4回再開した人には、
復活の趣味人バッジ。

もちろん、バッジに実利はあまりありません。

でも、
「誰かが見てくれている」
「続けていることを認めてくれる」
それだけで、人は趣味を続けやすくなります。

趣味は、成果だけで評価されるものではありません。

続けていること。
楽しんでいること。
ときどき休みながらも、戻ってくること。

それ自体が、すでに立派な活動です。


政策⑦
趣味白書の発行と提言

国民の趣味の実態を世に知らしめることは重要です。

と同時に、
「趣味がないこと」がもたらすリスクに、
社会はもっと自覚的であるべきです。

そこで多趣味党は、
毎年「趣味白書」を発行します。

趣味白書では、趣味の効能や多様化、
多趣味普及の実態に加えて、
次のような項目を調査します。

若年層のうつ傾向と無趣味率の相関。

無趣味状態の高齢者が孤立しやすい傾向。

無趣味による自尊感情の低下と、
離職・引きこもりリスクの関係。

複数の趣味を持つ人のストレス回復力。

もちろん、これらは慎重に調査されるべきものです。
趣味がない人を責めるためのデータではありません。

むしろ逆です。

趣味を持てない状況にある人を、
社会としてどう支えるか。

そのために、趣味の力を可視化するのです。

「趣味は予防医療・予防福祉である」

この認識を、社会に広げていきます。


政策⑧
趣味教育必修化プロジェクト

学校教育にも、
「趣味を探す時間」が必要です。

勉強ができること。
運動ができること。
集団行動ができること。

それらは、もちろん大切です。

でも、
「自分はこれが好きです」と言える力も、
同じくらい大切ではないでしょうか。

そこで多趣味党は、
趣味教育の必修化を提案します。

小学生には、
「やってみよう! おためし趣味タイム」。

中高生には、
「趣味プレゼン大会」や「マニアック探究ゼミ」。

大学生には、
「趣味で生きる101」や「マルチ趣味論入門」。

これらの科目を設けることで、
子どもたちが“好きなことを好きと言える力”を
早いうちから育みます。

「勉強だけで評価されない」こと。
「役に立つかどうかだけで、自分の好きなものを判断しなくていい」こと。

その大切さを、教育に取り戻します。

将来の夢が決まっていなくてもいい。

でも、好きなものがある。
気になるものがある。
少しだけ続けてみたいものがある。

それは、人生のかなり大事な地図になります。


政策⑨
趣味ボランティア推進計画

「自分の趣味を活かして誰かを笑顔にする」活動を、
正式なボランティアとして認める制度を作ります。

たとえば、編み物好きの人が、
病院にニット帽を寄付する。

将棋好きの人が、
高齢者施設で将棋を教える。

読書好きの人が、
地域の子どもたちに読み聞かせをする。

写真好きの人が、
町内会のイベントを撮影する。

料理好きの人が、
ひとり暮らしの人に向けて小さな食事会を開く。

趣味がそのまま、
“誰かの役に立つ喜び”になる社会。

それは、義務としてのボランティアではありません。

好きだからやる。
楽しいから続く。
続くから、誰かの助けにもなる。

趣味ボランティアは、
「自分のため」と「誰かのため」が、
やわらかく重なる場所です。

多趣味党は、その場所を広げていきます。


政策⑩
趣味防衛隊創設

SNSなどで特定の趣味ジャンルが嘲笑されたり、
「そんなの時間のムダ」と見下されたりすること、
ありますよね。

何が好きかは、本来、とても個人的なことです。

それなのに、
「いい年して」
「まだそんなことやってるの」
「それって何の役に立つの」
という言葉で、簡単に傷つけられてしまう。

そこで多趣味党は、
「趣味防衛隊」を創設します。

趣味防衛隊は、
他人の趣味を不当に見下す風潮を取り締まるとともに、
公式に、以下のようなエールを発信していきます。

「推し活は人生です」
「他人の好きに敬意を」
「好きに上も下もありません」

もちろん、実際に誰かを逮捕するわけではありません。

趣味防衛隊が守るのは、
趣味に生きる人のメンタルです。

趣味を笑われた人が、
それでも好きでいていいと思えるように。

自分の好きなものを、
もう一度そっと棚から取り出せるように。

趣味防衛隊は、今日もどこかで、
小さな「好き」を防衛します。


趣味庁の設立について

以上、10政策。

これらの政策を横断的に統括し、
各省庁と連携していく実働機関として、
多趣味党は「趣味庁」の設立を提案します。

趣味庁は、文部科学省・厚生労働省・経済産業省と連携します。

教育としての趣味。
福祉としての趣味。
産業としての趣味。
地域活性化としての趣味。
孤独対策としての趣味。
予防医療としての趣味。

それらを、バラバラに扱うのではなく、
「人が楽しく生きるための基盤」として、
総合的に支えていくのです。

想定される質問にも、あらかじめ答えておきます。

「文化庁との住み分けは?」

趣味庁は、もっと草の根・生活密着型です。

文化財や芸術振興だけでなく、
町内の手芸サークル、週末の釣り、推し活、家庭菜園、
誰にも知られていないマニアックな収集活動まで、
広く対象とします。

「予算はどこから?」

健康寿命延伸、うつ予防、孤独対策、地域交流の促進などと連携し、
医療費抑制や福祉的支援の前段階として位置づけます。

趣味にお金を使うことは、
ただの消費ではありません。

人が元気でいるための、
社会的な先行投資です。


まとめ:趣味の人権を尊重する社会へ

趣味は、個人の嗜好にとどまりません。

それは、社会との接点であり、
自分の時間を自分のものにする、
誰も侵すことのできない、永久の権利です。

「趣味を複数持つ権利」。
「趣味を否定されない権利」。
「まだ趣味がない人が、これから探す権利」。
「飽きてしまった趣味を、途中でやめる権利」。
「一度やめた趣味に、何食わぬ顔で戻ってくる権利」。

多趣味党は、そんな「趣味の人権」を尊重します。

今こそ、私たちは趣味について、
もっと声を上げていいと思います。

「なぜそれが好きなのか」なんて、説明できなくていい。
「他人に理解されない趣味」であっても、堂々と楽しんでいい。

好きなことに胸を張れる社会こそ、
強く、しなやかで、希望のある社会です。

そしてその土台を、政策という形で支える想像力を、
もう少しだけ社会全体が持てるようになったら——。

きっと、もっと生きやすい国になるのではないでしょうか。


国家戦略なんて言うと、大げさです。

でも、今日、誰かが少しだけ好きなことをできたなら、
その人の一日は、昨日より少しだけ良くなっている。

そういう一日が増えることを、
社会が応援してもいいはずです。

机の上の本から。
週末の散歩から。
誰にも説明できない、けれど大好きなものから。

多趣味党の活動は、たぶんそこから始まります。

もう一度言いますが、これは100%私の妄想です。

ここまで私の妄想にお付き合いくださったあなたは、
もうすでに「多趣味党」の資格十分です。

あなたも多趣味党の一員として、
趣味の力で日本を盛り上げていきましょう。

今日、誰かが少しだけ好きなことをできたなら、
その国は、昨日より少しだけ良くなっている。

すべての人に、ひとつでも多くの趣味を。

好きなことを、もっと好きでいられる国へ。

<了>


本日は以上です。
お読みいただきまして、ありがとうございました。 

※今回のエッセイは、
 約1年前に書いた、こちらの記事をリライトしたものです。
 (記録のためリンクを貼ってきます。
  読んでいただかなくて大丈夫です✨️)

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たくさんのnoteの中から、私の記事を見つけて読んでいただき、
ありがとうございました。
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