成果が出ない時間は「菌糸期」である――「キノコ型人材」のすすめ【創作大賞】
「自分にはこれといった専門がない」
「何年働いても自分のスキルに自信が持てない」
「成果が見えない時間ばかりが積み上がっていく」
そんなふうに感じたことはないでしょうか。
仕事でも、学び直しでも、副業でも、発信でも、
成果が見えない時期は不安になります。
周りを見ると、専門性のある人がまぶしく見える。
肩書きのはっきりした人が、強そうに見える。
「私はこれで食べています」と言える人が、うらやましく見える。
一方で、自分はどうか。
いろいろ経験してきた。
本も読んだ。
資格も取った。
趣味もある。
関心のあることも多い。
でも、それらが一本の道になっているかというと、よくわからない。
「結局、自分の強みって何なんだろう?」
そんな問いが、心の中にじわじわ広がっていく。
でも、私は思うのです。
成果が出ない時期は、
必ずしも「失敗」ではありません。
今はまだ地上に姿を現していないだけで、
地中で静かに菌糸を伸ばしている時期なのかも――
キノコは、一夜にしてポコッと現れたように見えて、
実はその前に、見えない地中で長く菌糸を伸ばしています。
人のキャリアや強みも、きっと同じです。
成果が見えない時間を、
ただのスランプや停滞と考えるのではなく、
私は「菌糸期」と呼びたいと思います。
この記事で提案したいのは、
成果が見えない時間を「失敗」ではなく、
「菌糸期」と捉え直す、新しいキャリア戦略です。
そして、これからの時代を生きのこるために必要なのは、
自分の中にある「菌糸期」を肯定できる人。
つまり、目に見えない成長を信じ、
地中で強みを育て続けられる、
「キノコ型人材」なのだと思うのです。
……といっても、私は別に、ビジネス界隈で「マッシュルームカット」を流行らせたいわけではありません。
順を追って説明しましょう。
「◯◯型人材」といえば「T型人材」という言葉が有名ですよね。
「T」のタテ線は深い専門性を、
ヨコ棒は幅広い知識やスキルを表します。
この「T型」を発展させたものとして、
「π(パイ)型人材」(2つの専門分野を持つ)や、
「△型人材」(3つの専門分野を持つ)等が提唱されてきました。
どれも素晴らしいモデルですが、
「型にはまった人材論」に、どこか限界を感じることもありました。
“完成形”を前提としたモデルを目指してみても、実際は、人生そんなにうまくいかない。
むしろ、“型破り”な人ほど活躍していたりします。
一方、キノコって、そもそも“型破り”の象徴のような存在。
ある日突然ポコッと出てくる。
色も形も出てくる場所もバラバラ。
目に見えないネットワークを構築。
毒にも薬にもなる。
……もうこれ、完全に「型破り人材」でしょう。
時代の変化に強く、柔軟で、サステナブルに「生きのこる」ポテンシャルを持っている――
それが、私の考える「キノコ型人材」です。
先人にならって記号で表すならば、
「T_T_T_T_T型人材」。
心の目で見てください。
キノコがいっぱい生えているように見えてきませんか?
いえ、あやしいキノコの幻覚症状ではありませんよ。
今日は、「キノコ」のパワーを活かすことこそ、これからの時代を生きのこるための切り札である、という話をしたいと思います。
といっても、「キノコでドーピングして能力活性化」みたいな話ではありませんのでご安心を!
この記事は、主に、次のような方に向けて書かれています。
・何年も働いてきたのに「これといった専門がない」と感じている人
・転職や副業を考えるも、自分のスキルに自信が持てない人
・成果が出ない時期に焦りを感じている人
・リスキリングに興味はあるが、どう進めるべきか悩んでいる人
・型にはまらない人生を肯定したい人
「キノコ型人材」という提案が、今後の生き方や働き方のヒントになれば幸いです。
第1章:この先生、キノコる?
「この先生きのこるには?」
というフレーズを聞いたことはありますか?
「この先、生きのこるには」を、
「この先生、きのこるには」と読み間違えると、
「きのこるって何だ?」
ってなるよね。
……そんな感じで生まれたネットミームです。
実は、このフレーズの中に真実が見えていました。
そう、「生きのこる」ためには「きのこる」しかない。
「きのこる」ためには「キノコ型人材」を目指そう!
――あながち、冗談ではありません。
キノコって、ほんとに“生き残りの達人”なんです。
ここ数年、世の中がとんでもなく早いスピードで変化しています。
働き方も、生き方も、学び方も、10年前の「当たり前」が、いとも簡単にひっくり返る。
これまで信じていたキャリアモデルが、どんどん陳腐化していく。
「この道一筋で頑張っていれば報われる」
「ひとつの会社で出世を目指すのが安定」
「資格さえ取れば一生食っていける」――
そんな“昭和~平成の信仰”が、あっという間に朽ちていく音が聞こえます。
もちろん、まじめに努力を重ねることは大切です。
でも、努力の方向や投資の対象を間違えれば、「徒労」に終わることもある。
そんな時代に必要なのは、一本の太い「幹」ではなく、地下でつながる菌糸のようなネットワーク。
そして、いつどこからでもポコポコと“芽”を出せるような柔軟性ではないでしょうか。
それこそが、私が提唱する「キノコ型人材」なのです。
すでに語られている「T型人材」「π型人材」等の枠を超えて、
「見えないものにこそ価値がある」
「成果が出ない時期こそ、菌糸が育っている」
そんな哲学をもった、新しい生存戦略。
次章以降では、そんな「キノコ型人材」について、
その定義・特徴・生き方・働き方、そしてブランディングや組織の中での活かし方まで、
ゆるく、熱く、語っていきたいと思います。
なにやら得体の知れないこの概念が、
読み終わるころには、あなたの中でも菌糸のように広がっているかもしれません。
第2章:VUCAとキノコ型人材
今の時代は「VUCA」(ブーカ)と呼ばれています。
V:Volatility(変動性)
U:Uncertainty(不確実性)
C:Complexity(複雑性)
A:Ambiguity(曖昧性)
の頭文字を組み合わせた言葉で、
将来の予測が困難な状況のことを意味します。
こんな時代だからこそ、
「この先、生きのこるにはどうすればよいか」
という不安が消えません。
とはいえ、いつまでも、不安だ、困難だ、と言っていても建設的ではありません。
そこで、私はこのVUCAを、少し前向きに読み替えてみたいと思いました。
いわば、「新VUCA」です。
「新VUCA」とは、
V:Variety(多様性)
U:Understanding(理解)
C:Creativity(創造力)
A:Adaptability(適応力)
という、ポジティブな言葉を集めた縁起の良い言霊セット。
不安と困難に満ちたVUCAを、
生きのこるための力として読み替える。
このポジティブな言霊セットである「新VUCA」と相性が抜群なのが、「キノコ型人材」です。
もちろん、不安と困難に満ちみちた、従来型の「VUCA」を打破するためにも「キノコ型人材」が有効なのは言うまでもありません。
さて、先ほどから連呼している「キノコ型人材」について、あらためて定義しましょう。
「キノコ型人材」とは、一言でいえば、
「見えないところに張りめぐらせたネットワーク(菌糸)と、そこから時おりポコッと現れる成果(キノコ)を兼ね備えた人材」
です。
もう少し人材論っぽく言うなら、
目に見えるスキルや実績(=キノコ)と、
目に見えない知識・関心・人脈・経験の蓄積(=菌糸)をあわせ持ち、
偶発性と多様性を活かして価値を生み出す人材。
この“菌糸”こそが、キノコ型の真骨頂。
菌糸がしっかりと広がれば広がるほど、多様な領域とつながり、
思わぬところから、あるとき突然ポコッと、
新しいキノコ(アイデアや価値、成果)が生まれます。
つまり、
「成果を狙い撃ちで出すのではなく、
地中に仕込んでおくことで、“思いがけないチャンス”をつかめる人材」
ということなんです。
そして、そういう人材は、これからの時代にこそ、強い。
なぜなら――
・先が読めない時代だからこそ、
「見えない地中」に投資しておく人が強い。
・偶発的な出来事や、他者との交差によってこそ、
新しい価値が生まれる。
……そんな構造があるから。
これまでの「努力=目に見える成果」という価値観は、
この数年でどんどん揺らいできました。
むしろ、
役に立たなそうな趣味が、突然の武器になる。
人からは意味不明と言われた勉強が、あとでドンピシャで活きる。
という体験、ありませんか?
キノコ型人材は、そういう“偶然の出番”を引き寄せる、
準備と多様性のかたまりです。
そして、ここが重要なのですが……
「菌糸は、無駄にはならない」ということ。
あなたが学んだこと、見たこと、好きだったこと、
いまは表に出ていなくても、地下でつながり続けています。
今はまだ地下に眠っている「キノコ」こそ、
まだ見ぬあなたの強みかもしれないのです。
第3章:キノコ型人材の5つの特性
それではここから、
「キノコ型人材」が持つ5つのキノコ的特性について、
1つずつ深掘りしていきましょう。
① 見えない所で広がる「菌糸ネットワーク」
キノコの本体は、あのかわいらしい傘の部分ではありません。
本体はむしろ、地中に広がる菌糸と呼ばれるネットワークです。
キノコ型人材もまた、
表に出る成果やスキルよりも、
水面下(地下)に広がる“非公式な知の網”を重視します。
たとえば、こんな感じです。
仕事とは関係なさそうな読書を積み重ねている。
ジャンルの違う人と、趣味でつながっている。
興味の赴くままに、勉強を脱線させることを楽しんでいる。
こうした「すぐには役に立たないかもしれないこと」が、
菌糸のようにじわじわと土壌を豊かにしていくのです。
私自身も、昔ハマっていたアニメの知識が、
後年、マーケティングの企画で活きたことがありました。
菌糸は、時を超えてつながる。
「意味があるかどうか」ではなく、「広げておくかどうか」。
それが、キノコ型人材にとっての第一の生命線です。
② 多様な環境で育つ「適応力」
キノコは、環境への“しなやかな適応”が得意です。
種類によっては、
乾燥に強いもの、日陰を好むもの、コンクリートの隙間から顔を出すもの……
まさに、「変化に応じて場所を変え、生え方を変える」存在。
キノコ型人材もまた、
ひとつの職場や分野にこだわることなく、
「お、ここはいけそうだな」と感じた場所で、自分のスキルを芽吹かせます。
異動先で別の専門を身につける。
育児や介護といった環境変化を、キャリアの糧にする。
新しいツールやAI技術に対して、好奇心から試してみる。
こうした「適応する力」は、
専門性とはまた別の“生きのこる力”として、今後ますます価値を持ちます。
③ サステナブルな「分解力」
自然界において、キノコは「分解者」です。
枯れ木や落ち葉といった“過去の遺物”を栄養に変え、
森に循環をもたらす。
人材における「分解力」とは、
過去の経験や知識を、いったんバラして再構築する力です。
前職のノウハウを、全く別業界で使ってみる。
学生時代の研究を、文章講座の教材に転用する。
趣味で撮っていた写真を、マーケティング資料のビジュアルに使う。
これらはすべて、分解と再統合の成果。
まさに、「循環型キャリア」です。
「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせである」
――ジェームズ・W・ヤングのこの名言を、
キノコ型人材は日々、体現しているのです。
④ ポコポコ生える「生命力」
キノコって、気がつくと“群生”してますよね。
1本だけじゃなく、ポコッ、ポコポコッ、と。
私はこの「ポコポコ感」こそ、
“強みのポートフォリオ”だと考えています。
ポートフォリオというのは、
「卵を一つのカゴに盛るな」という格言でおなじみ、
「資産運用には分散投資が大事ですよ」という考え方ですね。
1つの強み(知識やスキル)に依存するのではなく、
複数の強みを持っておくことで「リスク分散」となり、
より安定した人生(社会生活)を送ることができるのです。
まさに、強みも「分散投資」が大事、ということです。
ただし、これは「何でもかんでも中途半端にやればいい」という話ではありません。
大事なのは、それぞれの強みをバラバラのまま放置するのではなく、
地中の菌糸のように、どこかでつながっている状態にしておくこと。
読書。
仕事。
趣味。
資格。
過去の経験。
人とのつながり。
それぞれは小さなキノコでも、
菌糸でつながれば、やがてひとつの生態系になります。
⑤ あちこちから生えてくる「意外性」
最後の特徴は、「どこから生えるかわからない」という意外性です。
キノコって、林の中の決まった場所だけじゃなくて、
ベランダの鉢植えとか、コンクリの割れ目とか、
ほんと、「そんなとこから!?」って場所にも現れます。
キノコ型人材も、これと同じ。
成果がどこで出るか、読めない。
でも、だからこそ面白い。
アップル創業者スティーブ・ジョブズの言葉に、
「未来に向かって点をつなぐことはできない。
君たちにできるのは、過去をふり返って点をつなげることだけだ。」
というものがあります。
あれも、まさに、
「地中で張り巡らせた菌糸が、思わぬところでつながることで、
新しいキノコが生まれる」
という話だったのです(私の解釈では)。
あなたが今なんとなく始めた趣味や勉強も、いつか思わぬ場所から、
新たなキノコとしてポコッと生えてくるかもしれません。
だからこそ、「なんとなくの興味」も大事にしておきましょう。
――さて、キノコ型人材の5つの特徴、いかがでしたか?
「自分も菌糸伸ばそうかな……」と思えてきた方、
もうすでに、あなたは立派なキノコ予備軍です。
次章からは、
このキノコ型を“キャリア戦略”としてどう育て、
どう仕事や人生に活かしていくか、
さらに掘り下げていきます。
第4章:キノコ型キャリア戦略
キャリアに迷っている人から、よくこんな声を聞きます。
「今の仕事、将来につながる気がしなくて……」
「転職しようにも、何がしたいか分からないんです」
「スキルもキャリアも中途半端で、これから不安です」
……はい、分かります。
でも、私はこう答えたい。
「それ、今は“菌糸期”なんじゃないですか?」
キノコ型人材におけるキャリア戦略は、
成果(キノコ)を咲かせることよりも、菌糸をどれだけ育てられるかがカギ。
つまり、見えない部分をじわじわと広げていく期間――
それが、キャリアにおける“菌糸期”なんです。
今回の記事で、私がいちばん伝えたいのも、ここです。
成果が出ない時期を、ただの停滞や失敗だと思わないこと。
表に出ていない時間にも、
地中では何かが育っているかもしれない。
その視点を持てるかどうかで、
キャリアの見え方はかなり変わります。
(1) 菌糸期のキャリアとは?
異動してきたばかりで成果が出ない。
子育てや介護で思うように働けない。
モヤモヤしながら勉強だけしている時期。
こうした“成果が見えない”時期は、
ふつうなら「キャリアのブランク」と呼ばれるかもしれません。
でも、キノコ的に言えば、それは「ブランク」ではなく「培養」です。
役に立たなそうに見える経験も、
地中でつながり、栄養を蓄え、やがて“ポコッ”と出番がやってくる。
これを信じて菌糸を張り巡らせることが、キノコ型キャリアのコツです。
もちろん、何もせずに待っていれば勝手にキノコが生えてくる、という話ではありません。
読書をする。
新しい分野を学ぶ。
人と話す。
小さく試す。
記録する。
振り返る。
そうした行動を続けることで、
少しずつ地中の菌糸が広がっていきます。
つまり、菌糸期は「何も起きていない時期」ではありません。
目に見えないところで、
次の成果の土台をつくっている時期なのです。
(2) キャリア設計は“地図”じゃなく“菌床”
キャリア戦略というと、
「5年後に◯◯に昇進して……」
みたいな道筋を描くイメージがありますが、
キノコ型はそれとはちょっと違います。
ゴールから逆算してキャリアを設計するというより、
「どんな菌糸を育てるか」で未来を拓くスタイル。
たとえば、以下のような発想です。
【従来型キャリア】
・キャリア=階段
・一直線に上へ
・過去は切り捨て
・道に迷うと失敗
【キノコ型キャリア】
・キャリア=菌床
・地中で横に広げる
・過去を分解して再利用
・偶然を待つのも戦略
こうした考え方に切り替えると、
キャリアの迷走(?)も、キノコ狩りのように思えてきます。
もちろん、迷っている最中は楽しいことばかりではありません。
でも、「これは迷走ではなく、菌糸が広がっている途中かもしれない」と思えれば、
少なくとも、自分を責めるだけの時間は少し減ります。
(3) スランプを育てる、という発想
そして、もうひとつ大事な視点。
成果が出ない時期ほど、実は「菌糸」が伸びている。
キノコ型キャリアでは、「出ないキノコ」を咎めません。
出ないのが当然、出たらラッキー。
そういうリズムで生きていく。
この戦略のすごいところは、
“タイミング”に強くなることです。
「あ、この人と話が合う!」
「ちょうど、今学んでた分野だ!」
「これ、私の過去とつながるかも……」
こうした“たまたま”を拾える人になるために、
準備しておく。
菌糸を、張りめぐらせておく。
キャリア戦略とは、
「キノコの収穫を急ぐ」ことではなく、
「キノコを生やせる土壌を耕しておくこと」なのです。
第5章:キノコ型ブランディング
ここからは少し視点を変えて、
「自分をどう見せていくか?売り出していくか?」
を考えてみましょう。
これは、いわば、ブランディングの話。
キノコ型ブランディングの難しさは、
「すぐには分かりにくい」
「成果がポコポコ出てくるけど、予測しにくい」
という点にあります。
つまり、従来型の「強み1本勝負」とは相性が悪い。
では、どうするか?
(1) 「自己ブランディング=棚に並べる」ではない
よく、「自分をどうブランディングするか?」という話になると、
「肩書きを決めよう」
「強みを言語化しよう」
「◯◯専門家として売り出そう」
というアドバイスがされますよね。
たしかに、それも一理あります。
でも、キノコ型人材にとってはそれ、
「一部のキノコだけを並べて売っている」ようなものです。
実は、地中には他にもたくさん菌糸があるし、
種類の違うキノコも育っている。
しかも、気づけばいつのまにか新種も生えてくる。
そういう“ポコポコ系”人材に必要なのは、
「自分の菌糸はどこにあるか?」を理解し、
それを“組み合わせ”として伝える力なのです。
(2) キノコ型ブランディングの3要素
ここでは、「キノコ型ブランディング3原則」をご紹介しましょう。
① 複数の軸を“並列”で見せる(T_T_T型)
「私って、何の人なんだろう……」と悩む人にこそおすすめなのが、
「◯◯×◯◯×◯◯」
という見せ方。
例えば私なら、
FP × 図書館司書 × 多趣味ライター
これ、別に“極めた”わけじゃなくてもいいんです。
菌糸のように広げてきたものを、あえて並列で見せることで、
「この人、いろんな知識が有機的につながってそうだな」と思ってもらえる。
これが、キノコ型の第一歩。
② ストーリーで語る(菌糸の歩み)
キノコは一夜にして生えるように見えますが、
実際は、長い時間をかけて菌糸が育っています。
だからこそ、
「なぜそのスキルを学んだのか?」
「なぜその趣味が続いたのか?」
という「理由」や「背景」を語ることが、ブランドの力になります。
商品でいえば、「作り手の物語」があるクラフト品のようなもの。
菌糸の物語は、他人に“共感”という栄養を与えるのです。
③ キノコは「見せるタイミング」がすべて
最後に重要なのは、
ポートフォリオ型の“出し方”を工夫すること。
全部を一度に見せなくていい。
むしろ、ポコポコと時間差で出していく方が、「意外性」や「奥行き」が伝わります。
SNSやブログなどで、
最初はFPとして発信しておき、
次は多趣味ネタ、
たまに図書館司書ネタ、
実は全部つながってる!
という流れを見せると、
「この人、なんか面白いぞ」と思ってもらいやすくなる。
キノコ型の魅力は、“バラバラに見える”こと。
そしてそれが“菌糸でつながっている”と分かったときの、気持ちいい伏線回収感なんです。
(3) キノコ型の“売り”は、売れにくいからこそ強い!
キノコ型の強みは、“売りづらさ”にあります。
今は成果が出ていない。
どこで花開くか分からない。
評価されにくい。
でも、それこそが時代にフィットしている。
変化の激しい時代、
「これが自分の唯一の強みです!」と宣言することの方が、むしろリスクなのです。
キノコ型は、売るよりも「育てておく」。
タイミングが来たら、「これもできます」と出す。
それが、これからの時代のブランディング。
ポートフォリオは、“持ってるだけ”でも価値がある。
キノコ型ブランディングは、“時間差で生やす”こと。
あなたの中に眠っている菌糸、そろそろ出番かもしれませんよ。
第6章:組織の中でもキノコ型は効く
これまでは「個人」の話を中心にしてきましたが、
最後に少しだけ、組織やチームにおけるキノコ型の可能性にも触れておきます。
(1) 「組織の土壌改良材」として
結論から言えば、キノコ型人材は、
「組織の土壌改良材」のような存在です。
いわゆるスーパースターでも、目立つエースでもない。
でも、じわじわと組織の根っこを支え、空気を変え、人と人をつなぎ、
気がつけば、チームの“きのこる力”を底上げしている。
自然界のキノコは、他の植物と共生するネットワーク型生物です。
これを組織に置き換えるなら、
「公式なルートだけでは伝わらない情報や感情を、“菌糸的”につなぐ人材」
が重要になります。
たとえば、
メンバー同士の関係をやわらかく橋渡しする人。
部署を超えて「こんな人いるよ」と紹介できる人。
ふとした雑談からプロジェクトをつなげてしまう人。
そう、キノコ型人材は、「肩書き以上の仕事」をしていることが多いんです。
従来の組織論では「リーダーシップ」が重視されがちですが、
キノコ型人材の貢献はむしろ、“ミドルシップ”。
ミドルシップというと、エンジンを車体の中央付近に配置した車のようですが、
ここでは「ミドル(middle)=真ん中にいる人の力」という意味です。
要するに、上下でも左右でもない、“間”の調整役。
縦の命令と横のつながりをうまくつなげる「媒介者」です。
実際、「あの人が間に入ると、うまくいく」という存在、
どの職場にもひとりはいませんか?
菌糸のように組織をめぐり、
栄養(情報)と水分(信頼)を分配し、
ときに“キノコ”という成果をポンと生やす。
それが、キノコ型人材の組織内エコシステム的な役割なのです。
キノコ型は、“孤独なポートフォリオ”ではありません。
菌糸ネットワークを広げることで、
組織も社会も、ゆるやかに共生できる。
この感覚が、今、ひそかに求められているのかもしれません。
(2) 「食用キノコ型人材」として
キノコ型人材を目指すうえで、ひとつ注意点があります。
勢いあまって、毒キノコ型人材にならないことです。
毒キノコ型人材とは、
知識やスキルを振りかざして、周囲を威圧してしまう人のこと。
……そんな人がいたら、ちょっと距離を置きたいですよね。
キノコ型人材の本質は、共生です。
自分だけが目立つのではなく、
周囲とつながり、栄養を循環させ、土壌を豊かにすること。
だから、目指すべきは毒キノコではなく、
食用キノコ型人材なのです。
ただし、ここでもうひとつ。
食用キノコだからといって、
都合よく食い物にされてはいけません。
「便利な人」
「何でもできる人」
「頼めばやってくれる人」
そう見られすぎると、キノコ型人材は消耗します。
共生は大事です。
でも、自分を守るしたたかさも必要です。
ときには、
「食えないやつだな」
と思われるくらいで、ちょうどいいのかもしれません。
最後に――あなたの中の菌糸を信じる
ここまで、「キノコ型人材」について語ってきました。
キノコ、きのこ、茸。
そろそろ読者のみなさんの頭の中にも、何かが生えてきたころかもしれません。
でも、私が本当に伝えたかったのは、とてもシンプルなことです。
今、目に見える成果がなくても、あなたの中では菌糸が伸びているかもしれない。
キャリアに迷うとき。
自分には強みがないと感じるとき。
学んだことが活かせていないと思うとき。
そんなときは、こう考えてみてください。
今は、菌糸期なのだと。
地上にキノコが出ていないからといって、
何も起きていないわけではありません。
地中では、静かに準備が進んでいるかもしれない。
読書をする。
新しいスキルを学ぶ。
人と交流する。
興味のあることを少しだけ掘ってみる。
過去の経験を、別の角度から見直してみる。
それらは、すぐに成果にならないかもしれません。
でも、無駄とは限りません。
いつか、思いがけない形で役に立ちます。
ふと気づいたときには、地中に菌糸が広がり、あちこちに、
あなただけの「強み」がポコポコと顔を出していることでしょう。
そして、キノコが生えやすいのは、雨上がりです。
今、雨に打たれているように感じている人ほど、
そのあとに何かが生えてくる可能性があります。
この先、生きのこるには――
必要なのは、立派な一本の幹になることではなく、
地中に菌糸を伸ばしながら、
あちこちに小さな強みをポコポコ生やしていくこと。
あなたの中の菌糸は、まだ見えていないだけです。
どうか、焦らず、腐らず、でも発酵しながら。
雨上がりのどこかで、
あなたならではのキノコが、きっと顔を出す。
そんな「キノコ型」の生き方こそ、
これからの時代をしなやかに生きのこるための、
ひとつのキャリア戦略なのです。
<了>
本日は以上です。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
たくさんのnoteの中から、私の記事を見つけて読んでいただき、
ありがとうございました。
「なんかいいかも」と感じていただけたら、
スキやフォローで合図を送ってもらえると、とても励みになります。
どうぞ、よろしくお願いします。
