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書斎派アウトドア司書の冒険読書#2/『ドリトル先生航海記』

7月に入って、ますます暑い日が続きますね。
「7月になったからもう遠慮なく気温上げていくぜ!」みたいな。

ここまででも十分暑かったのに……。先が思いやられますね。

ということで、暑い夏こそ、読書で「冒険」に出かけませんか?

「夏の冒険読書」の連載では、児童文学の名作たちを、
毎回1冊ずつ配本(紹介)していきます。

配本を届けたい方としては……
・子育てや教育に関わっている方
・読書好きの方/昔、読書が好きだった方
・日々の生活に疲れ、現実逃避したいと思っている方

つまり、これを読んでいる方、ほぼ全員ですね(笑)。

さて、第2回配本としてお届けするのは、
児童文学の古典として、熱烈なファンも多い、あの名作です!


第2回配本

『ドリトル先生航海記』

ヒュー・ロフティング ・著/ 井伏 鱒二・訳(岩波書店) 

動物のことばを話せるドリトル先生の楽しい航海記です。

オウムのポリネシア、犬のジップ、ぶたのガブガブ、
あひるのダブダブ……

毎度おなじみのゆかいな仲間たちに加えて、本書では、
海を漂う浮島や巨大カタツムリなどが登場します。

子どもの頃、ドリトル先生に憧れた人、多いんじゃないでしょうか。
私もそうでした。

実家で飼っていた初代インコの名前が「ピピネラ」。

この名前、ドリトル先生ファンなら、わかってもらえると思います。
シリーズに出てくるのはインコではありませんが……。


大人になって知ったこと

本書の原題は「The Voyages of Doctor Dolittle」。

ドリトル先生って、「ドクター・ドゥリトル」、なんです。

Dolittleは、“Do Little” 、「為すこと少なし」。
金儲けや成功には縁が無い。という意味なんですね。

本書、『航海記』で、ドリトル先生は島の王様になりますが、
Dolittleではあんまりだ、王様にふさわしくない、
ということで「シンカロット王」と名付けらます。

シンカロットとは、“Think a lot”。(たくさん考える)

う~ん、奥が深いですねぇ!

そんなこんなで、ドリトル先生大好き!の皆さんには、
『ドリトル先生の英国』南條竹則(文春新書)
を一読されることをおすすめします。

いろいろ勉強になります。
——と思ったら絶版でした。名著なんですが……

ちなみに、このシリーズ、
お話もキャラクターも面白いのですが、
井伏鱒二大先生の「超訳」がいい味出してるんですよ。

この言葉選びのセンスに慣れてしまうと、
普通(?)の翻訳では物足りなくなってしまいます……。

それから、挿絵は
著者ヒュー・ロフティング氏によるもの。

そのあたりもお楽しみいただければ、と思います。

本書が気に入られましたら、もう、どれでも結構です、
シリーズ全巻制覇を目指して、ガンガン読み進みください。

読み終える頃には、動物のことばがわかるようになっている
ことでしょう…、たぶん。

あ、そういえば、ドリトル先生が動物のことばがわかるのは、
オウムのポリネシアに教えてもらったから、なんですが……。

子どもの頃はなんとも思わなかったこの設定。

オウムは、あらゆる動物のことばも、人間のことばも、
すべて理解できることが前提になっているんですね。

オウムってすごい!


どこ出版社の、だれ訳を読むのか問題

ここまで、さも当然のごとく、井伏鱒二訳で読むことを前提に紹介してきました。

私が子どもの頃は、井伏訳(岩波書店)一択の状況でしたからね。

迷う必要がありませんでした。

<「岩波書店」版がおすすめの方>
・昔、井伏訳を読んでいた。
・ロフティングの挿絵に愛着がある。
・子どもにも同じ訳・絵で楽しんでほしい。

そういう方は、引き続き、「岩波書店」一択です。


ただ、今は状況が変わって、他に強力な選択肢が2つあります。

1つは、生物学者の福岡伸一先生の翻訳による「新潮社」版です。

福岡先生は、NHKの「100分de名著」で『ドリトル先生航海記』を取り上げたとき、解説をされていました。

私はドリトル先生のようになりたいと切に願い、そのために生物学者になったと言っても過言ではありません。ドリトル先生の素晴らしさや好ましさの本質ーそれは「フェアネス(公平さ)」にあります。誰に対しても、どんな生き物に対しても、ドリトル先生はつねに公平です。そして、あらゆる生命のありように、真摯に耳を傾けます。センス・オブ・ワンダーを持ち続けた、本当の意味での生物学者です。

福岡伸一(『100分de名著「ドリトル先生航海記」』「はじめに」)

少年時代からドリトル先生を愛読してきた福岡先生の訳はさすがに力の入ったもの。

そして、この「新潮社」版のもう一つのメリットは、原著そのままの挿絵19枚を完全収録したことです。

岩波書店版より1枚多いんですよね……。
これ、地味に強いです。

<「新潮社」版がおすすめの方>
・福岡先生の『ドリトル先生航海記』を読みたい。
・井伏訳と読み比べしてみたい。
・著者の絵が好き。全部揃えたい。

こういう方には「新潮社」版をおすすめします。


もう一つは、角川書店から出ている新「全集」です。
(河合祥一郎・訳)

これは、翻訳も挿絵も「今風」で、
今の子どもたちには、圧倒的にわかりやすいでしょう。

こちらは全巻そろうので、
「この際、全部読みたい」という方にぴったり。

それから、もう一つ大事なポイント。

「岩波書店」版でも「全集」が出ていますが、
「角川書店」版の方が、収録作品が多いのです。

・岩波書店(ハードカバー版):全12巻
・岩波書店(岩波少年文庫版):全13巻
 
(『ドリトル先生と秘密の湖 』が上下2冊に分かれている。
  短編集『ドリトル先生の楽しい家』には8編収録)
・角川書店(角川つばさ文庫):全14巻
 
(岩波少年文庫版と同等の13巻に加えて、
  番外編である『ドリトル先生のガブガブの本』1巻を追加。
  さらに、短編集『ドリトル先生の最後の冒険』には9編収録。
  ※「ドリトル先生、パリでロンドンっ子と出会う」を含む。
    これは本邦初訳
    さらに、「ヒュー・ロフティング年表」も掲載)

本邦初訳の短編が読めるのは角川つばさ文庫版だけ。

これ、全14巻まとめて、プレゼントにも良さそうです。


ちなみに、『ドリトル先生航海記』は「角川文庫」版も出ていて、
こちらは「Kindle Unlimited」に含まれているので、
会員の方は追加費用なしで今すぐ読めます!
——これはもう、今すぐ読むしかない!!

<「角川書店」版がおすすめの方>
・完全無欠の「全集」を揃えたい。(角川つばさ文庫)
・「Kindle Unlimited」で読みたい。(角川文庫)
・昔ながらの訳や挿絵にはこだわらない。

こういう方には「角川書店」版をおすすめします。


——うーん、今回は「何版」を選ぶか、というのが悩みポイントですね。

おすすめする方としても、非常に難しいです。

私なら、岩波書店版で全巻を揃えて、
短編集と番外編(ガブガブの木)2冊を角川つばさ文庫で追加、
というハイブリッド構成かな⋯⋯。

井伏訳が体に染み込んでいるので、こういう選択になります。

「これから初めて読む」という人であれば、
角川つばさ文庫で揃えるというのが一番すっきりしています。

翻訳も読みやすく、昔ながらの岩波版にこだわりがなければ、
最善の選択といえるかもしれません。


さて、今回の「配本」、いかがでしたでしょうか。

「冒険読書」の連載では、これからも、児童文学の名作を、
週1くらいのペースで「配本」していきます。

あなたの心に、冒険の火が灯りますように🔥



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