幼稚園児が言った。引っ越ししよう!
家の近くの公園で、幼稚園児の息子が言った。
「引っ越ししようよ」
父は聞いた。
「なんで?」
「この草全部取ってさ、
ニンジン植えて畑にするんだ。
で、横に家建てて住む。
でね、ニンジンを食べるんや」

なかなか壮大な計画である。
父は言った。
「ニンジンだけじゃ、
人は生きていけないよ」
すると息子は少し考えて。。。
「じゃぁ……ごぼうも植えていいよ」

なんか変な方向に話が進んでいる。
息子は
お母さんの作るきんぴらごぼうが
大好きなのだ。
するとお母さんが口を挟んだ。
「公園に住むとか、
ホームレスじゃないんだから」
息子は聞き返した。
「ほーむれす、って何?」
「家がない人のこと」
すると息子は即答した。
「家は建てるから、あるよ」
通じていないような、通じているような。。。。。
私は別の方向から説得を試みた。
「この公園は今住んでいる家から
すぐだから、引っ越す必要ないよね」
すると息子は少し考えて、
「えー、じゃあ畑だけしようよ」
と言う。
「公園は、みんなの場所だから
畑はできないよ」
そう説明すると、
息子は新しい案を思いついた。
「なら、お風呂にさ、土入れて畑しようよ。
お母さんには内緒で」

ダメっ!
即座におかあさんの声が飛んだ。
田んぼが欲しいと言い出した時と同じ展開である。
元気な声で内緒話をするので、
お母さんには完全に筒抜けだ。
そして、いつもどおり母は厳しい。
「じゃぁ、ミニトマトでいいから、
お風呂でさー。」

ダメっ!よくない!
それでも諦めない。
「じゃぁ、さぁ、キャンプ場に
引っ越してさぁ……」
息子の夢はどんどん広がっていく。
公園は畑になり家になる。
お風呂は家庭菜園になる。
ダメなら、
キャンプ場が新しい住まいになる。
彼の世界には、
土地問題も
住宅ローンも存在しない。
うらやましいかぎりである。
(おわり)
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