幼稚園児が、一度だけ前世を語った夜
「生まれる前はね、僕、小学一年生だったんだ。」
彼が幼稚園に入園したころのこと。
夕飯のとき、突然そう言いました。
真顔でした。
「地震が来てね、上から物がいっぱい落ちてきて……死んだんだ。」
親から前振りもしたわけではありません。
質問したわけでもありません。
ただ、突然でした。
そのあと、気になって何度か聞いてみました。
胎内の記憶や、前世のことを。
すると、彼は、にやっー、として話します。
でも、その表情を見ると分かります。
ああ、これは作っている話だな、と。
あのときの真顔とは、まるで違うのです。
やがて彼は、将来の夢を話すようになりました。
第一志望は警視庁。
第二志望は消防隊。
第三志望は自衛隊(戦車隊だそうです)。
その話を聞きながら、ふと、あの夜のことを思い出します。
地震の話と、どこか重なっているようにも感じるのです。
どれも大切で、尊敬すべき仕事です。
ただ、自由に生きてきた私(会社員ですけど…)としては、
もっと別の道があるのではないかとも思います。
それでも。
あのときの真顔を思い出すと、
この夢にも、何か理由があるのかもしれない——
そんな気もしてしまうのです。
そういえば、胎内のことも聞いたはずなのに、
何を話していたのか、もう思い出せません。
不思議なことに、
あの“真顔の話”だけが、はっきりと残っています。
(おわり)
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