太極拳は形から始まった① – ヘミシンク20年、身体への転換。
強烈な体験があったわけではない。
ただ、その少し前、
仕事からの帰り道で
フォーカス12(意識が深く静まり、身体感覚が変わる状態)に入り、
歩きながら帰っていたことを覚えている。
その時、腕が妙に軽く動いた。
力を入れているわけではないのに、
動きが自然に出る。
余分な力が抜けている。
身体が素直に動く。
変性意識状態では、
身体の使い方そのものが、わずかに変わるらしい。
その体験の中で、ふと予感した。
意識が身体に影響するのなら、
逆に、身体も意識に影響するのではないか。
その予感を形にするため、
私は太極拳を始めた。
しかし、始めてみると現実は単純だった。
とにかく形を覚えなければならない。
それしか考えていなかった。
身体の感覚を感じよう、などという余裕は、
当時の私にはまったく無かった。
むしろ逆だった。
形を作れば、いずれ身体に何かが起こるだろう。
変化は後からついてくるだろう。
そんなふうに、ぼんやりと思っていた。
開始から一週間ほど経った頃、
身体にごく僅かな変化を感じた。

最初は指先から手にピリピリ感が起きた。
次第に、肩、そして頭にかけて、
微かな振動のようなものが流れる。
いわゆる「気」と呼ばれるものだったのだと思う。
神秘的というより、身体の内部で何かが通るような感覚だった。
当時の私は、それをどう扱えばいいのか分からず、
AIにも質問していた記録が残っている。
答えは、
「太極拳開始直後の時点ではあまり考えなくてよい」
というものだった。
今思えば、それで良かったのだと思う。
もちろんその頃の私は、
「形を追った結果、後から開く」などということを
理解していたわけではない。
ただ理屈ではなく、どこか感覚的に、
そうなるものではないかと思っていた。
今になって振り返ると、
それは間違っていなかったと感じる。
身体というものは、
感じようとして感じるものではない。
むしろ、形を繰り返し、動きを重ねていく中で、
ある時、静かに開き始める。
あの頃の私は、まだ何も分かっていなかった。
しかし、分からないまま続けていたその時間が、
後の変化の土台になっていたのだと思う。
今思えば、あの頃はまだ入口に立ったばかりだった。
やがて私は、雲手という動きの中で、
初めて身体の流れを強く感じる体験をすることになる。
(続く)
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