団地綺譚 葬送と再生の境界 物語の背景 目次とあらすじ 登場人物
この物語の背景
高度成長期、丘陵地に建てられた池鯉団地。かつて子供たちの歓声が響いたその場所は今、老朽化と異邦人の流入によって、記憶の中の風景とはかけ離れた団地へと変貌した。故郷とは、戻れば必ずそこにあるものではない——主人公・久宇はそのことを、この団地で思い知ることになる。
この土地には古来、巨人ダイダラボッチが歩いた記憶が宿るという。団地開発への怒り、田を奪われた嘆き——その気配は今も団地の空気に漂っている。
団地の再生を命じられた久宇の前に、謎めいた事務員・富江、飄々とした大太課長、そして前任者・深海申太郎の残した断片的な計画書が現れる。深海はなぜ消えたのか。課長の言う「プランB」とは何か。大雨の夜、疾走する真っ赤な紅七を追った久宇は、氾濫した川下の浅瀬に沈む赤い残骸を目撃する。
ここでは過去の記憶をたどることが、現実を動かす引き金になる。
目次
第1章 起編 池鯉団地へ
第1話 ニキシー管と巨大な影
第2話 蘇る銀狼
第3話 辞令交付!
第4話 昭和の公団団地というもの
第5話 社宅はポイントハウス
第6話 社宅をDIY
第7話 解体業者のガラ子
第8話 白いネクサスで現れた彼方の弟
第9話 大人の社工場
第10話 パーシモンと赤いバッテン
第11話 天上のドライバーショット
第12話 消えた白球と二匹のトム
第2章 承編 消えた前任者とプランB
第13話 戌渡川を越えて
第14話 消えた前任者とプランB
第15話 豪雨の行方と真っ赤なセブン
第16話 瞳の中の深海先輩
第17話 深海先輩とトム
第18話 深海先輩とポイントハウス
第19話 消えたフラッシャー付き自転車
第20話 もう1人の富江
第21話 団地のデスレースと天上の乱打
第22話 8/21(金)投稿予定
第23話 8/28(金)投稿予定
第24話 9/4(金)投稿予定
第2章 転編
第25話 9/11(金)投稿予定
以降、鋭意執筆中(全50話予定)
あらすじ
建築士の久宇は、大太課長の命で故郷・池鯉市の団地再生事業に単身赴任する。実家は更地と化し、謎めいた事務員・富江が待つ事務所へ。
黒猫を拾い、屋根のない社宅に住み着いた久宇は、衰退した団地を周回しながら記憶をたどり始める。屋上ゴルフで打ち放った四角いディンプルの白球は戌渡川を越え、更地の穴へ消えた。拾い上げると団地の幼体のような異物だった。
事務所が荒らされた翌朝、散乱した書類の中に前任者・深海申太郎の団地再生計画書を発見する。かつての先輩の名がそこにあった。核となる空間の章だけが残り、詳細は失われていた。課長は「核は不要だ」と言い放つ。
大雨の夜、土砂降りの中を疾走する紅七を追った久宇は、氾濫した川下の浅瀬に沈む赤い残骸を目撃する。先輩が、俺を呼んだのか。
※本作は全50話構成を予定しており、現在連載中です。
登場人物
久宇(くう)
建築士、40代。団地再生事業のため故郷・池鯉市に単身赴任。15年のキャリアを持ちながら、かつて夢見たプロジェクトに不安を抱える。実家は更地と化しており、帰る場所を失った。愛車は銀のユーノスロードスターNA8C(通称:銀狼)。
大太課長(だいた課長)
久宇の上司にして池鯉団地出張所の所長。冴えない中年男風だが飄々として掴みどころがない。
本人いわく久宇の上司の「双子の兄弟」。
ゴルフ狂いで特注の四角いディンプルのボールを持つ。——どこにでも現れる。その名は、古来この地を歩いた巨人の名と響き合う。
富江(とみえ)
出張所の事務員。年齢不詳。書類の匂いがする。アクセントがどこかおかしく、言葉が途切れがちだ。豪雨の夜以来、物憂げな表情が続く。その瞳の奥に、何かが記録されているような気がしてならない。
もう一人の富江、とみお?
大人の社工場に現れる。富江とそっくりだが、富江より女っぽい。オイルの匂いがする。顔が近づいたとき、喉仏が上下するのが見えた。男なのか?
問い詰めようとする久宇を残して、猫のようなしなやかさで裏口に消えた。
深海申太郎(ふかみしんたろう)
久宇の10年先輩。かつて同じ職場で数年働いた聡明な先輩。真っ赤なアンフィニRX-7(通称:紅七)と書いた。団地再生の理想を語り、久宇の前任者だったことが、書類の断片から判明する。
トム
白足袋の黒猫。久宇が子供の頃に飼っていた猫と同じ名前。戌渡川のそばに現れ、銀狼の助手席に収まった。団地の屋上では二匹いた。
弟
久宇の弟。白いネクサスに乗る。葬儀以来の再会。実家の更地の処分に関わっているらしいが、多くを語らない。
ガラ子
久宇の幼馴染に似た謎の女性。黄色いツナギ姿で重機を操る解体業者。「造成地」という言葉にだけ反応する。
