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団地綺譚 葬送と再生の境界 第7話 解体業者のガラ子

#創作大賞2026  
#ファンタジー小説部門

◇小説の紹介
 昭和40年代、子供の頃に過ごした団地とその周辺を舞台に、猫や車、時代のガジェットたちの記憶を織り交ぜながら、ファンタジー小説として紡いでいきます。どうぞお付き合いください。

あらすじ、目次、登場人物紹介はこちら

あっと、目が覚めた。
まだあたりは闇が深い。お袋は庭好きだった。

あんなに広い庭、手入れ大変だよって。
俺たちには無理だ。
弟も県外で、家庭を持っている。

広い庭のことを全くありがたく思わない親不孝兄弟だ。
毒づきながら眠りに落ちる。

そうだ明日は実家に行ってみよう。
朝起きると、トムはいなかった。

軽く朝食を食べて、出勤前に実家へ行くことにする。
銀狼に乗り込もうとすると、トムがやってきた。

どこに行ってたのか、まったく。
こいつらは夜行性だから仕方ない。銀狼は滑らかに滑り出す。

もちろん屋根を開けてオープンで走る。
顔を撫でる朝の空気が心地よい。
橋を渡り、実家の区画を回り込んで、路地をゆっくり進む。

朝っぱらから、何やら大きな機械音が響いてる

——!!

実家であった更地に黄色い重機が一台動いている。
そいつは元々、庭の空池の部分を掘りおこしていた。

更地をほじくり返す重機から降りてきた中肉中背のシルエット。
黄色いツナギに加えタバコの女性?

「お前!誰の家だと思ってるんだ!
 勝手に掘るな!」

天パーで目鼻立ちくっきりで唇がぽってりしているその女、何か既視感がある。

「ガ、ガラミン・・・」

そうあの空想科学番組に出ていた。宇宙ロボット。に、そっくりな同級生がいた。

「おい、俺だ覚えているか?」

女は答えない。
重機に戻り、黙々と動かしている。

「重機を止めろ!」

重機は容赦なく更地の中央あたりを掘り起こしている。

埒が明かなくなって、銀狼から降りて、重機に向かう。
危ないが重機に飛び乗ってレバーに手をかけた。

重機は大きな反動をつけて止まった。
止めたのではない、ガラ子が停止させたのだ。

「ガラ子!俺だ!
 子供の頃よく遊んだだろ!」

ガラミンの本名は忘れたが、ガラミンとは言えず、みんなガラ子と呼んでいた。
解体した時の破材をガラと呼ぶが、解体業者がガラ子とは、なんか符号があってるが、それどころではない。

「どうして俺の実家に穴を掘ってるんだ!
 俺の実家を解体したのはお前なのか?」

ガラ子はこちらをみてるが、答えない。無反応だ。

「ガラ子、覚えてないのか、子供のころよく造成地で遊んだじゃないか!」

造成地という言葉にガラ子は反応した。

「造成地でよく秘密基地つくって遊んだじゃないか・・・」

ここでハタと気づく、こいつ本当にガラ子なのか。
ガラ子は、顔立ちはエキゾチックだったが、日本人のはずだ。
しかし、この目の前にいる黄色いつなぎを着た異邦人は、顔立ちは似ているがどうみても日本人ではない。

急に、背筋がぞっとして重機から降りた。

ガラ子はまた重機を動かし始めた。
諦めて更地を眺めた。

そういえばこの辺りにゴルフの打ち放しの練習ネットがあったな。
親父は、ゴルフ好きで、敷地の一角で熱心に練習していた。

団地の側に、ゴルフ練習場もあったなあ。

ポケットの四角いディンプルのボールに触ってみる。
自宅に練習場があるのは贅沢だよな。

改めて庭だった更地を見渡す。お袋が慈しんだ植木があった面影は何もない。
まごうことなき造成地である。

また、戸建てが建つな。三軒くらい行くだろう。

団地の周囲に広がっていた造成地は、全て戸建てに変わった。
秘密基地をよくつくったものだ。

当時の造成地はよく雨が降ると崩れて谷地ができて、子供には格好の秘密基地の揺籃だった。
ガラ子は輝いていたよな。

当時、活発だったガラ子は秘密基地の女ボス。
真っ黒になって泥に塗れて、遊びまわったものだ。

重機が急に止まった。
ガラ子が掘った穴をのぞいている。

穴の底に古びた夫婦人形があった。

それを見るとガラ子は、どうしたのか踵を返して、重機を置いたまま敷地の外に出て行ってしまった。

「おい、どうしたんだ」

穴の底の夫婦人形をとりあげて、泥を落とす。

こういうものを埋めるってのはどういうことだ。
そこへ白い高級クーペが路地に入ってきた。
すれ違えるような路地ではない。仕方なく銀狼を更地に入れる。

「泥がつくじゃねえか」

と毒づきながら、クーペの運転席をみて驚いた。
それは葬式以来の弟の姿だった。

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