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団地綺譚 葬送と再生の境界 第3話 辞令交付!

#創作大賞2026  
#ファンタジー小説部門

◇小説の紹介
 昭和40年代、子供の頃に過ごした団地とその周辺を舞台に、猫や車、時代のガジェットたちの記憶を織り交ぜながら、ファンタジー小説として紡いでいきます。どうぞお付き合いください。

あらすじ、目次、登場人物紹介はこちら

団地の入口の角に、その建物はあった。

道路が二手に分かれる、その分岐点。

どの方向から来ても、必ず視界に入る位置だ。

——見張っているみたいだな。

銀狼を脇の駐車場に停める。

事務所の背後は一段高台となり、そこに5階建てのフラットな住棟がそびえている。

事務所の入口に看板がある。

独立行政法人・・・池鯉団地再生計画出張所

長い名前だ。名刺に収まるのかな
元は派出所だった建物。

低い天井、古い蛍光灯、窓は鉄格子がはまっている。

中に入った瞬間、外の世界と隔絶されたような時間が流れている。

「いらっしゃーい」

いやに軽い女性の声がした。
机の上に、女が座っている。

黒髪ショートボブにメガネ、黒スーツ。
白手袋、白いハイヒール、ストッキングも白い。

足をぶらぶらさせて、首を傾げてこちらを見ている。

いやに馴れ馴れしい。
事務員?若そうだが年齢不詳だ。

「……あの、今日から——」

「知ってるよ」

女は軽く跳び降りる。

しなやかで軽い身のこなし。こちらの横をすり抜けると思いきや、
スッとすり寄る。書類の紙の匂いが漂う。

「ちゃんと来れ、たね。」

女はそう言ってニコリとする。

「そっち、気をつけて」

団地の方向を顎で示す。

「戻れな、くなるよ」

「久宇くん!」

低い声が聞こえた。

みると
書類に埋もれて、冴えない中年男が座っている。

大太課長だった。

一昨日、別れたばかりの顔。
あまりに平然と座っているので、自分の記憶を疑う。

「遅かったじゃん。」

普通の調子で言う。
まるで、何もおかしなことがないように。

「……課長、なんでここに——」

「なんでって、ここが池鯉団地出張所だ」

書類に目を落としたまま答える。

女は、課長の椅子の背に馴れ馴れしくもたれている。
課長は、それを気にもとめていない。

「紹介しとく」

ようやく顔を上げて課長が言う。

「事務の富江だ」

「よろ、しくね!」

敬礼してくる。やけに軽い。
標準語だがイントネーションがちょっとおかしい。

「君は明日から、ここで団地の再生計画に携わってもらう。
 経験豊富だと聞いてる。期待してるぞ。」

立ち上がって辞令を渡される。
大太課長は、おもむろに素振りをした。
ゴルフ・・・だと思う。

「君はやるのか?」

「あ、多少」

「君は実家に泊まるんだろ。」

そう言うと課長はさっさと出ていってしまった。
続いて富江がスッと2人の姿は暗闇に消えた。

静寂の中、蛍光灯に照らされて、白いゴルフボールが転がっている。

課長のボールか
ディンプルが四角?面白いな、特注品かな

そういえば、なんと元上司と双子だそうな。
身内で仕事回してんのか?

ま、どうでもいいか。

ボールをポケットに入れて、実家に向かう。
実家は、戌渡川を渡った一角に入った路地にある。

ギアを落として、路地をゆっくり曲がる。

ヘッドライトに照らされて
見慣れた門松が、照らされ・・・・な、無いぞ!

そこには更地が広がっていた!

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