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団地綺譚 葬送と再生の境界 第4話 昭和の公団団地というもの

#創作大賞2026  
#ファンタジー小説部門

◇小説の紹介
 昭和40年代、子供の頃に過ごした団地とその周辺を舞台に、猫や車、時代のガジェットたちの記憶を織り交ぜながら、ファンタジー小説として紡いでいきます。どうぞお付き合いください。

あらすじ、目次、登場人物紹介はこちら

実家が更地になっていた。

なぜ、なぜなんだ・・・

私は混乱を鎮めるため銀狼を走らせる。

心臓の鼓動が、銀狼のエンジン音より
高く感じられる。

車を止めて、頭を冷やそうと
屋根を開けてみる、すると
草むらから急に黒猫が飛び込んできた。

ニャーオ!

びっくりした
グルグルいって体をこすりつけてくる。
白足袋履いた感じ、この喉の鳴らし方は、

お前、トムなのか?

……生まれ変わりか?
放りだされても知らないぞ

シートベルトをしても猫はおとなしく
助手席に座ってる。

冷たい夜空が気持ちがいい。
こういう時にオープンカーは誠に都合がいい。

気分が落ち着いて、家に電話してみる。

「あらどうしたの?もうホームシック?」

「違う違う、実家が更地になってたんだ!」

「そうなの?良かったじゃない手間が省けて」

「おい、そういう問題じゃない。」

どうも話が噛み合わない。
しばらくチグハグな会話をして電話を切った。

銀狼を発進させる。
団地の外周道路をなめらかに走らせる。

外周道路を走りながら、昔のことを思い出す。
砂塵の中をダンプが走り回っていた。 団地ができたばかりの頃だ。 道路はまだ舗装されていなくて、雨が降ると泥だらけになった。

数年後、すっかり舗装道路になったころ、団地橋を渡って団地小学校へ通うようになった。 最初は周辺の造成地とか、戸建てのあたりで遊んでいて、だんだんと団地の中心へと通うようになったんだよな。

今は異邦人が住んでいる。 それだけのことだ。 ——それだけのことか?

団地の入り口の商店街も、半分シャッターが閉められ、開いてるのも半分が異邦人系だ。団地の外周道路を舐めるように進む。まだ気分は落ち着かない。

団地の外周道路はほぼ2キロ。緩やかな上り坂を軽く駆け上がり、カーブへ進入。外周道路に沿って戸建が広がる。

当時は若夫婦だらけだったのに、一気に老いた。虫食いになって異邦人が移り住む。建て替えるにも、代替地がない。隣棟の芝生まで駐車場になった。

小学校の仲が良かった友達はもっと新しい大規模なニュータウンへ引っ越して行った。次第に音信不通になって置いていかれた気分だったな。

さてどう再生すればいいか?

例えば、ニコイチ。
一つは壁をぶち抜き、階段室を囲んだ2住戸を1住戸へ変える。1住戸37㎡だが、倍の74㎡となればファミリータイプとしては申し分ない。

また床をぶち抜いて縦にニコイチしてメゾネットという形も面白い、住戸内に階段が必要になるが65㎡くらいの面白い住戸になる。これだったら特に若い人に人気が出て、賃料も挙げられるかもしれない。とにかく狭苦しい2DKを解放してやらないと。

省エネ性能もあげよう。屋上に太陽光パネルを設置して蓄電池を置いて災害時に電気を供給して、平常時は夜間電力で電気代を下げる。太陽光パネルで発電した電気を売電できるもしれない。

あとはやっぱりエレベーターだな。階段で5階まで高齢者に上がらせのは高齢者にはかわいそうすぎる。

各階段にエレベータを設けるのは大変だから、階段室を外部ブリッジでつなげて、共用のエレベーターを設ければ、ブリッジでのコミュニケーションも生まれるんじゃなかろうか。

頭の中ではいくらでも直せるが・・・
ふむ、異邦の方々はどうする

そこまで考えたところで、住棟の切れ目から、赤い炎が見えた。
ような気がした。

慌てて銀狼を停めて伺うと
放置車両を赤い炎が照らしている。

十数人の男女が、異邦のサウンドに合わせて
体を揺らし、バーベキューを囲んでいる。

全く、故郷はどうなっちまったんだ。

銀狼は再び走り出す。

団地の中に商店街がある。
24時間営業の店もあるはずだ。

しかし銀狼は外周道路から1ミリも入ることができない。
団地の中はストリートバーベキューの真っ盛りだ。

なんてこった、火の粉で顔が熱いくらいだ!

団地からの強烈な圧に、団地から離れることすら思い浮かばず
銀狼は、外周道路を何度も、何度も周回した。

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