団地綺譚 葬送と再生の境界 第19話 消えたフラッシャー付き自転車
◇小説の紹介
昭和40年代、子供の頃に過ごした団地とその周辺を舞台に、猫や車、時代のガジェットたちの記憶を織り交ぜながら、ファンタジー小説として紡いでいきます。どうぞお付き合いください。
ポイントハウスは、団地の背骨にあたる道なりに一列に並んでいる。深海先輩はポイントハウスに再生のきっかけがあるような事を言っていた。
詳しくはトムの理解力ではわからない。でも最大のきっかけだ。トム!ありがとう。
さて無人のフラッシャー自転車、あれはポイントハウスのどこかに消えたような気がする。謎の子供の存在といい何か臭い。フラッシャー自転車といえば、小学生の時に流行った。あるメーカーは発売し、他の大手メーカーも追随して発売を競った。セミドロップハンドルにダブルヘッドライト、シフトレバー付き変速ギアなどを備え、電池式で後部に派手なフラッシャー、その名の通り左右の方向指示が流れるように発光し電子音で周囲に知らせる。あれは欲しかった。もちろんかなり高額で、自分は普通の自転車だった。
フラッシャー欲しかったな・・・
よし今日は休みだ。ポイントハウスを虱潰しに回ってみるか。何かきっかけが掴めるかもしれん。
よし、まずは一番、端の52号棟からだ。
駐輪場をみて、表札を見る。空き部屋ばかりだった。・・・じゃあなんであの部屋が俺の社宅なんだ。課長を問い詰めてやろう。最近、課長が馴れ馴れしいのでこちらも気安くなっている。
次は53号棟だ・・・
あ、あるぞフラッシャー
ピカピカのフラッシャー付きの子供の自転車。よく見ると片方だけ補助輪がついている。
でも大きさは小学生ぽいな、小学校入学しても補助輪付きだとからかわれるぞ。そんなやついたよな。
事実、弟は補助輪から卒業できず、結局、自転車に乗っていない。プライド高いからな。
でもフラッシャー付きの高級品だ。しかもピカピカにしてあるとするとかなりの好事家かもしれん。
表札をみると一つだけあった。
丑島・・・
難しい"うし"だな。うしといえばうっしーだったっけ。小学校1年の時、ガラ子を取り合ったっていうか、結局、3人でつるんでいたな。
とっつぁん坊やっぽいっていうか、体育の授業でこんな事やっても仕方ないって嘯いていた。ちょっとおじさんぽい子供だったな、俺たち。
でも引っ越して行った。N2市北部の巨大ニュータウンに。ガラ子も後を追うように居なくなって。俺はひとりぼっちになった。
よし、職務を利用して丑島家を訪問してみよう。
出張所は休みなので無人だ・・・のはずだった。しかし富江がいた。
「富江・・・さん」
あれ、富江のやつ、なんか寝ぼけてるぞ
「仮眠室、
ねて、た」
「え、そうなの」
こいつどこに住んでるんだっけ?まさかここに住んでるんじゃないだろうな。
しかし普段着じゃなくいつもの黒スーツ。白手袋で白いハイヒール。着た切り雀かな。でも清潔感がある。さて鍵はどこか。
「ねえ、53号棟の屋上の鍵って」
「ここだ、」よ
いつもながらアクセントがおかしい。
屋上の鍵を探すふりして、あの家のスペアキーを持ち出す。
何事もないように53号棟に戻り、丑島の表札の前に立つ。ついに犯罪者か、一瞬躊躇ったが鍵を差し込む。あれ、開いているぞ。
部屋は整然としていた。整然と小箱が積み上げられていた。プラモデルやおもちゃの箱が天井まで。一見して、かなり古いプラモデルやおもちゃだ。あ、変身サイコボーグとかあるぞ!おもちゃメーカー"コタカラ"が発売した男の子向けの高級お人形だ。
変身サイコボーグの目玉は、当時のヒーローに着せ替え、つまり変身ができる。またオリジナルのモービルやヤマネコのフィギュアなどもあった。うちにもあったが、変身セットは買ってもらえなかったな。懐かしすぎる・・・それがここに揃っているとは。変身サイコボーグの列にその猫型のフィギュアがあった。なんとなくメカトムと呼びたくなる。思わず近づこうとした、その時。
「くーちゃん・・・」
急に呼びかけられた
「え!?」
「・・・待ってたよ」
振り向くと、うずたかく積まれた箱の影に子供が立っていて、こちらをみつめていた。
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