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団地綺譚 葬送と再生の境界 第18話 深海先輩とポイントハウス

#連載小説 #長編小説 #ファンタジー小説 #団地 #小説

◇小説の紹介
 昭和40年代、子供の頃に過ごした団地とその周辺を舞台に、猫や車、時代のガジェットたちの記憶を織り交ぜながら、ファンタジー小説として紡いでいきます。どうぞお付き合いください。

あらすじ、目次、登場人物紹介はこちら

トムと深海先輩が暮らした家は社宅のあの屋根のない部屋だった。
深海先輩は部屋のドアを開けて電気をつける。殺風景な部屋でこたつしかない。

何かを雄弁に語る先輩。ポイントハウスのことらしいが、猫であるトムにはよくわからない。

先輩にはポイントハウスが再生の鍵だとわかっていたのか。

深海先輩との生活は穏やかな感じだった。トムは穏やかに落ち着いている。トムもたまにうちに戻っていたようだ。完全な二重生活だ。しかし、突然、事件が起こった。

先輩がうっかりヤカンを空焚きしてしまった。

先輩何やってるんだ!
早く帰ってきてくれ!

トムの中で叫ぶが、誰にも聞こえない。慌てるトム。先輩に伝える術はない。みると窓が少し開いていた。バルコニーに出れそうだ。バルコニーの手すりにひょいと登ってみる。

5階建て10m以上ある。

待て待て、トム
いくら受け身が取れると言ったって
5階だぞ

でも猫は目が悪い。良かった下は芝生。

おい!トム!やめろー

トムはバルコニーから飛び降りた。

ああ、なんてことだ

強い衝撃と共に、意識が消える。


気がつくと先輩の腕の中だった。

見回すと消防車が駆けつけている。大人たちに囲まれた先輩。

この辺りは映像が不鮮明だ。猫だからか、辛い記憶だからか。トムはじっと先輩を見上げ、その腕に必死としがみつく。

大人たちの怒号からようやく解放された先輩が、やっと声をかけてくれた。目は潤んでる。

「良かった。逃げ出してたんだね」

先輩にしがみついて優しく撫でてもらう。

「もうここには居られないんだ・・・
 遠くの街へ行こう・・・」

我に帰ると銀狼の運転席で意識を失っていたのか。もう深海先輩もトムもミラーに映らない。

あたりはすっかり日が暮れていた。
ヘッドライトを点けて走り出す。

銀狼を駐車場に停めて、社宅に戻る。
居間は酉達に占領されている。

トムは深海先輩の元へ行ってしまったのだ。トムはどこかで野垂れ死したんじゃない。

居なくなったトムの行方がわかった。涙が溢れて床に滴り落ちる。突っ立ったまま大泣きしてしまう。部屋中の白い酉達も異様な雰囲気に、声を潜めた。

トムよ、トムよ、お前は深海先輩と・・・

突然、外から子供の足音、笑い声。そしてピンポンが鳴る。何回も。酉達が途端に騒ぎ出す。窓から一斉に羽ばたいて出ていく。

「誰だ!」

滴る涙に構わず、酉達を押し除けて、階段へ飛び出す。すると階段を駆け降りる音。追いかける。一階まで逃げられた。そして暗闇を去る、子供用の自転車。

「どこのイタズラ坊主だ!こらー」

自転車のライトが派手なフラッシャーである。

な、懐かしいな。

涙を拭って目を凝らすが、すっと曲がって見えなくなった。

しかし異様さに気づく
その自転車は無人だった。

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