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ハンナ・ベルイホルム『ナイトボーン -夜哭-』この子は森の子、獣の子

2026年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。ハンナ・ベルイホルム長編二作目。サーガとジョンの若い夫婦は完璧な家庭を夢見て、サーガが幼い頃に過ごしたフィンランドの山奥の屋敷に引っ越してくる。二人の間に子供が出来るが、日光を嫌がったり、何をしても泣き止まなかったり、授乳中にありえない強さで乳首を噛んできたり、どうにもおかしい。一般化して宥めようとするジョンを含めた周囲の人間の声は届かず、サーガは徐々に不気味な森の狂気に吸い込まれていく云々。実は昨年のベルリン映画祭コンペでも、似たような題材の作品『Mother's Baby』があった。PDはこういった作品が好きなんだろう。同作のズッコケ感と比べると、本作品は信頼できない語り手としての主人公目線を崩さない点や最後までキチンとやりきる点などで優れているように思える。特に前者に関しては、赤ちゃんの顔が最後まで映らず、とにかく不気味な"存在"として捉えられているのもそうだが、サーガが息子クーラに適した最良の育て方を探す過程で、サーガの身体も変化していくボディホラー的な側面も描かれていたのも良かった。後者に関しても、少々ワンパターンな部分はあれど、不気味な森を主軸にした恐怖演出の釣瓶打ちには感嘆。また、異常なまでに赤子を嫌うサーガに対して、私も貴方に対して同じことを思っていたと追い打ちをかける母親、自分よりも甘やかされていたとする姉との関係性も興味深い。あくまで自身と子供の関係が特殊であるとする母親視点の奇抜な映像に、ある種の一般化された視点を付与することに成功している。だからこそ、それら二つが重なるラストシーンが活きてくるのだ。

・作品データ

原題:Yön lapsi
上映時間:92分
監督:Hanna Bergholm
製作:2026年(フィンランド, リトアニア, フランス, イギリス)

・評価:60点

・ベルリン映画祭2026 その他の作品

★コンペティション部門選出作品
1 . コーネル・ムンドルッツォ『At the Sea』踊れない私の漂うアイデンティティ
2 . アラン・ゴミ『Dao』ギニアビサウ、結婚式と葬式を駆け巡る"永続的循環運動"
3 . Anke Blondé『Dust』ベルギー版"ブラックベリー"の末路
4 . グラント・ジー『Everybody Digs Bill Evans』ビル・エヴァンスの喪失と緩やかな死について
5 . フェルナンド・エインビッケ『Flies』メキシコ、ある疑似親子とインベーダーゲーム
6 . エヴァ・トロビッシュ『Home Stories』東ドイツ人のアイデンティティはどこにある?
7 . レイラ・ブジド『In a Whisper』チュニジア、クィアと伝統と家族について
11 . 四宮義俊『花緑青が明ける日に』シュハリの花火、花火の守破離
12 . ハンナ・ベルイホルム『ナイトボーン -夜哭-』この子は森の子、獣の子
13 . Geneviève Dulude-De Celles『Nina Roza』ブルガリアで自分の過去と対峙する男
14 . ランス・ハマー『Queen at Sea』認知症と性的同意能力について
15 . マルクス・シュラインツァー『Rose』"ズボンを履いた方が自由になれるから"
16 . カリン・アイヌーズ『Rosebush Pruning』ある醜悪なブルジョワ一家の肖像
17 . エミン・アルペル『Salvation』トルコ、土地を巡る争いの果てに
18 . マハマト=サレ・ハルーン『Soumsoum, the Night of the Stars』チャド、女性の自由や権利の話がしたいのか…?
19 . アンソニー・チェン『We Are All Strangers』シンガポール、ある一家の愛と絆
20 . ウォリック・ソーントン『Wolfram』アボリジニ少年団の逃避行西部劇
21 . イルケル・チャタク『Yellow Letters』トルコ、政権批判をしたある芸術家夫婦の肖像
22 . アンナ・フィッチ&バンカー・ホワイト『Yo (Love Is a Rebellious Bird)』私の親友ヨランダ・シェイの人生

★パースペクティブス部門選出作品
1 . Kosara Mitić『17』北マケドニア、悪夢の修学旅行
5 . Manon Coubia『Forest High』北アルプスの山小屋に流れる静かな時間
8 . Dara Van Dusen『A Prayer for the Dying』これが本当の疫病ウエスタンだ!
10 . ロレンソ・フェロ&ルーカス・ヴィニャーレ『River Train』アルゼンチン、男らしさの責務を負わされた少年の逃避行
13 . Muriel d'Ansembourg『Truly Naked』ポルノが氾濫した現代を生きる少年少女たち

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