グラント・ジー『Everybody Digs Bill Evans』ビル・エヴァンスの喪失と緩やかな死について
2026年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。グラント・ジー長編劇映画一作目。1961年6月、伝説的なジャズ・ピアニストのビル・エヴァンスは、ベーシストのスコット・ラファロと共に史上最高のジャズレコードをライブ録音という形で残した。その数日後、スコットは悲劇的な自動車事故で亡くなり、意気消沈したビルは子供時代から休みなく続けていた演奏を初めて止めてしまった。恋人と一緒にヘロインに溺れ、心配する兄夫婦に引き取られるも変わらず、姪に悪影響が出そうなのでフロリダの実家に引き取られる云々。冒頭10分間のモンタージュは見事で、スコットとの最高のセッションと凄惨な事故の最悪な瞬間が見事に混ざり合う。観る前に想像していた伝記映画の形態とは異なり、ビルの時間は演奏が出来ないまま非常にゆったりと流れる。その緩やかな時間の中で、友を失った刺すような痛みを鋭利なフラッシュバックとして短く挿入される。そして、映画全体として兄とエレインの自殺という未来のエピソードをカラーで挿入することで、薬物中毒でボロボロになりながらも最愛の人々が先に死んでいく地獄を更に追体験させてくる。それは"長い自殺"とすら称されるビルの自傷的人生を観客に追体験させる試みなのかもしれない。ビルより先に死んでしまう父/兄/エレインはこの時点でビル同様にボロボロで、全員が苦しみの中になんとか生きているような状態だった。ビルの深い悲しみにもヘロイン中毒にも解決策がないように、それらにも解決策がなく、それでも世界は色付かないまま時間だけゆったりと流れていく。前半の編集のキレが後半にもあれば良かったが、ただゆったりと流れるだけになってしまったので、もっさりした映画になってしまった感。"愛してる"→"ありがとう"には現地でも爆笑が起こってたけど、他の印象が薄すぎてそこしか覚えてないや。
・作品データ
原題:Everybody Digs Bill Evans
上映時間:102分
監督:Grant Gee
製作:2026年(アイルランド, イギリス)
・評価:60点
・ベルリン映画祭2026 その他の作品
★コンペティション部門選出作品
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4 . グラント・ジー『Everybody Digs Bill Evans』ビル・エヴァンスの喪失と緩やかな死について
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★パースペクティブス部門選出作品
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