Geneviève Dulude-De Celles『Nina Roza』ブルガリアで自分の過去と対峙する男
2026年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。Geneviève Dulude-De Celles長編二作目。ミハイルは1990年代、妻の死をきっかけに幼い娘ローザと共にブルガリアを離れ、モントリオールに移り住んだ。そこで彼は現代美術の専門家としての地位を築き、ローザを男で一つで育て上げた。ある時、彼はブルガリアの村で独創的な絵を描く8歳の少女ニナを知る。彼女の絵を買いたい収集家に、その真贋を確かめて来いと言われたミハイルは、28年ぶりに故郷へと足を運ぶことになる云々。ローザとの会話から推測するに、ブルガリアとの繋がりを積極的に断ち切ってきたミハイルだが、彼の中で現在のニナとブルガリアを離れた当時のローザの姿が重なり合っていき、移住以後の人生とその選択が彼の前に浮かび上がる。彼女が絵を描いているとすれば、彼女は母親に連れられてイタリアへ移住することになる。しかし、彼女の絵画は彼女の母親のトロヤン陶器の絵付けや地元原産の絵の具などに大きな影響を受けているため、イタリアに行けば全く別のものになってしまうだろう。彼女の独自性を守り、意思を尊重するなら、彼女が描いてないということにして企画をポシャらせるしかない。この、ニナの未来を決めてしまうミハイルの決断は、ある意味で28年前に自身とローザの未来に対して行ったものと似ている。ブルガリアには未来がないという前提のもと、移住した先で頑張って成功を掴むしかない、という決断である。これをカナダ人の監督が、移民先で成功した人物にやらせるというのが良いのか否か、正直私には判断が付かない。そりゃ自分の過去の決断を肯定するために今回の決断を利用するに決まってるだろうし、移住先で成功してるんだから選ばなかった選択肢への苦悩は軽いはずだ(そして実際に軽く描かれている)。申し訳程度に、ブルガリアに残った姉一家と和解するエピソードも挿入される。姉の息子は出世したばかりで、結婚して子供もいる。ローザと一緒にブルガリアに残って生活を続ける、という選択肢に絶望的な終わりがあったとは感じられない。この挿話のおざなりな描き方に、本作品の無意味さが表れているだろう。しかも悪いことに、この物語はブルガリアでなくても成立すると思われる。流石に失礼が過ぎるんじゃないか。
・作品データ
原題:Nina Roza
上映時間:103分
監督:Geneviève Dulude-De Celles
製作:2026年(カナダ, ブルガリア, イタリア, ベルギー)
・評価:40点
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