カリン・アイヌーズ『Rosebush Pruning』ある醜悪なブルジョワ一家の肖像
2026年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。カリム・アイノズ長編十作目。MUBI製作の豪華アンサンブル映画でカンヌ落選と聞いた瞬間にヤバい映画の香りを感じてしまったが、本当にその通りになるとは、私のネコヒゲも仕事をするではないか。マルコ・ベロッキオ『ポケットの中の握り拳』を原案としており、それをエフティミス・フィリップがアレンジするという中々狂気じみた企画だ。物語はカタルーニャの豪華な別荘に暮らすアメリカ人一家の崩壊を描く。その豪邸では目の見えない傲慢な父親と四人の子供たちが暮らしている。あまりにも金があるせいで誰もまともな仕事もしてなければ、誰もまともな性格をしていないが、長男ジャックだけは真面目で礼儀正しい男であると、語り部の次男エドワードが紹介する。ジャックは駆け出しギタリストのマーサとの同棲を望んでいるが、一家の長男としての"役割"を全うしようと苦心している。長女アンナと三男ロバートはブラコンを拗らせすぎてジャックに付きまとっている。エドワードはそんな家族を引いた視点で見つめながら、全てを破壊しようと目論んでいる。冒頭はプロ放浪者の狂気を見せつけるエドワードの独白から始まり、題名の由来でもある"人間はバラ、家族はバラの茂み、バラの茂みには剪定がいる"という名台詞も飛び出す。人の懐に入る上手さはどこか『聖なる鹿殺し』のマーティンを想起させる。最終的に彼が目的を果たすため、結果的に全ての人間が彼に従うことになるのも偶然ではないだろう。
とはいえ、残りのメンバーが同じような醜悪な連中しかいない上に、上映時間のほとんどが彼らの醜悪さを丁寧に提示してくるだけなので、その露悪的な表現はブルジョワ批判や家父長制批判ではなく単なる安い挑発に感じられ、特筆すべき点はないに等しい。例えば、マーサを家族に紹介するシーンはその醜悪さで印象的だ。目の見えない父親にマーサの容姿を紹介する過程で、父親がマーサの胸の大きさを聞いてみたり、ギターくらいアンナでも出来ると言ってみたり、それを全員で笑って、エドだけ軍師面でそれを一歩引いて眺めてる、ずっとそんな感じ。中盤で判明する長男の"役割"に関しても、ジャックがどう思っているかという描写がないので、終盤の滅茶苦茶な展開はエドワードの一人芝居というか、メタ的な要請にすら見えた。マジで金を使って有名なキャスト/スタッフ/製作を揃えたらカンヌくらい余裕で狙えるっしょみたいな舐め腐った企画だ。困窮したベルリンを象徴する一作と言えるだろう。

・作品データ
原題:Rosebush Pruning
上映時間:97分
監督:Karim Aïnouz
製作:2026年(ドイツ, イタリア, イギリス, スペイン)
・評価:20点
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