見出し画像

歩いて帰るための150グラム

AI活用サークルに参加するために、バスに乗って近くのパソコン屋さんに行った。ついでに、前から気になっていたパソコンの調子も見てもらう。サークルでAIの話をたっぷりして、パソコンの相談もして、店を出たら、お昼をだいぶ過ぎていた。

近くのミスターマックスにココイチが入っている。黄色い看板に吸い込まれるのに、理由はいらない。

注文はカツカレー、半熟卵トッピング。そしてご飯150グラム。

運ばれてきた皿を見て、まず動揺した。ご飯が少ないぶん、ルーの海が広い。皿の半分以上が茶色。その上に、カツが一列に並んで寝ている。上半分は揚げたてのオレンジ色のまま、下半分はもうルーに浸かって色が沈んでいる。ひとつのカツの中に、乾いた季節と雨の季節が同居している。

そして半熟卵は、皿の上にいなかった。小さな白い小鉢に、ひとりで入って隣に来た。つるんとした肌で、まだ何も知らない顔をしている。乗せるタイミングは、こちらに委ねられているらしい。

まずはカツを一口。浸かった側から食べる。衣はもうやわらかくて、豚の脂の甘さがルーと一緒に来る。よし、と思った。もう待てない。一口食べただけで、小鉢の卵を皿の真ん中に移した。

ルーの海に白い島ができる。スプーンの背で押すと、黄身がゆっくり傾いた。茶色に黄色の筋が一本走る。混ぜる前の、この一瞬がいちばんきれい。

そこからは、卵ありの世界。辛さの角が丸くなって、全体がやさしい方へ寄っていく。カツの乾いた側を食べると、こちらはまだ音がする。同じカツなのに、口の中で別の食べ物。

ご飯150グラムの勝負は早い。ご飯とルーの配分を計算する、あの後半戦がない。気づいたら皿には、ルーが少しだけ残っていた。ご飯150グラムの正直な結末。

帰りは、歩いた。行きはバスだったのに。カレーの後の体は、いつもなら重い。でもこの日は、歩けるな、と思えた。物足りないかと聞かれたら、たぶん物足りない。その物足りなさが、家までの足を軽くしていた。150グラムは、歩いて帰るための数字だったのかもしれません。

サークルは、またある。パソコンも、たぶんまた気になるところが出てくる。そのたびに、ここに寄る。次も卵は、一口だけ我慢してから乗せます。

宇佐美ダイ塾長とうさ塾仲間のnoteフォローをよろしくお願いします。


いいなと思ったら応援しよう!

三毛野たま@AI漫画 記事を読んでくれてありがとうございます。気が向いたら、チップで応援していただけると、次の漫画やエッセイを描く力になります。