【福岡ランチ】大名で出会った、人生ナンバーワンのいなり
今日は仕事の話ではない。仕事終わりの、大事な大事なランチの話である。
私には仕事の相棒、くぼっちがいる。会議室でも現場でも隣にいて、気づけばランチの時間まで一緒にいる。
もはや相棒というより、保護者に近いのかもしれない。なぜなら私は、方向音痴だからだ。しかもただの方向音痴ではない。
同じ交差点を二回曲がって元の場所に戻ってくるタイプの、筋金入りの方向音痴である。
今日も「大名にいいうどん屋さんがあるんですよ」とくぼっちが言うので、ふんふんと頷きながらついていった。私の脳内GPSは常に圏外なので、この「ついていく」が一番安全な移動手段なのだ。

たどり着いたのは「釜喜利うどん」というお店。紺色ののれんが眩しくて、「ああ、なんかちゃんとしたうどん屋さんだ」という空気がびしびし伝わってくる。
中に入ると、木のカウンターと、湯気の匂い。うどん屋特有の、あの安心する匂いである。

くぼっちは牛すじごぼう天入りうどんを注文。私はごぼう天うどんに、とろろ昆布をトッピングしてもらった。そして、なんとなく「いなりもください」と口が勝手に動いた。この「なんとなく」が、今日の主役になるとはこの時の私は知る由もない。

まず運ばれてきたうどんから。麺はつるんとしてあって、つゆは優しい和出汁の味。牛すじはとろとろに煮込まれていて、ごぼう天はカリッと香ばしい。
とろろ昆布をのせると、つゆに少しとろみとまろやかさが加わって、これはこれで満足度が高い。「普通に美味しい」と思いながら、私はふんふん食べ進めていた。
ところが。
いなりを一口食べた瞬間、箸が止まった。

甘辛い油揚げの染み具合が、絶妙なのである。染みすぎて甘ったるいわけでもなく、かといって物足りないわけでもない。
噛むとじゅわっと出汁の旨味が広がって、酢飯とのバランスが完璧。この酢飯がたまらなく美味しかった。
私はこれまで、それなりの数のいなり寿司を食べてきた人間だと自負しているのだが、正直に言う。今まで食べてきたいなりの中で、ダントツのナンバーワンだった。
「これは娘にも食べさせなければ」という使命感に突き動かされ、気づけば2個テイクアウトをお願いしていた。うどん屋さんに来て、一番の思い出がいなりになるとは、我ながら予想外の展開である。
方向音痴な私を今日も無事に導いてくれたくぼっちと、思わぬ出会いをくれたあのいなり。仕事終わりのランチが、こんなにも記憶に残る一皿になるとは思わなかった。
また連れて行ってもらおう。次は迷わず、最初からいなりを2個頼もうと思う。
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