68歳の講師がSonnet 5とFable 5を触ってみた話
Anthropicから3日で政府に止められたAIが帰ってきた。一方で無料でも使える化け物みたいなモデルも同時デビューした。68歳の講師が、YouTubeの解説動画を6本並べて読み比べてみた顛末である。


結論から言う。今回だけは触っとかんと損する。
そう思ったのには理由がある。
まず起きたことを時系列で並べる。6月9日、AnthropicがClaude Fable 5とClaude Mythos 5を発表した。Opusを超える、初のMythos階層の一般公開モデルである。ところがそのわずか3日後の6月12日、アメリカ商務省が輸出規制の指令を出し、Fable 5とMythos 5を世界中の全ユーザーから止めてしまった。理由は安全保障。もう少し詳しく言うと、モデルの安全対策を回避してソフトウェアの脆弱性を洗い出せる、という技術が報告されたかららしい。
Anthropicはこの措置に納得していなかった。同じ脆弱性はOpus 4.8でもGPT-5.5でも見つけられる、と反論している。まったく、企業が自分で出したAIを、自分の意思とは関係なく止められる時代が来たのであった。

18日間、Fable 5は沈黙した。触ったことのある人間は「未来のAIモデルが見えた」とまで言っていたモデルが、丸ごと使えなくなったのである。おれは正直、指をくわえて見ているしかなかった。
そして6月30日。輸出規制が解除された。7月1日から、Fable 5とMythos 5が世界中で復活。これと入れ替わるようにして、まったく新しいモデル「Claude Sonnet 5」がリリースされた。同じ日に、片方は復活し、片方は誕生した。まったく忙しいAIなのであった。

ここからが本題である。Sonnet 5、何がすごいのか。
「Opus 4.8の9割の性能を半額以下で出す」というのが、複数の解説動画に共通していた評価だ。数字で言うとこうなる。SWE-benchというコーディング系のベンチマークで、Sonnet 5は63.2%。前モデルのSonnet 4.6は58.1%、Opus 4.8は69.2%。TerminalBenchというターミナル操作のベンチマークでは、Sonnet 5が80.4%まで伸びて、Opus 4.8の82.7%にほぼ並んだ。価格は8月31日までの導入価格で、入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル。Opus 4.8の4割で済む。しかもFree・Proプランのデフォルトモデルになった。無料で、である。
ここまで聞けば、誰でも「これは触るしかない」と思うはずだ。実際、ある関西弁のYouTuberは「これガチで差がつくモデルや」と力説していた。資料作成をお願いすると10分程度で編集可能なパワポが出てくる、日本語性能も上がっている、そんな実演もあった。
だが、怒られるかもしれないが言う。全員が絶賛していたわけではないのであった。
海外のある解説者は、実際にベンチマークの中身を細かく調べて、まったく違う結論を出していた。Sonnet 5は「トークンを異常に消費する」というのである。GPT-5.5なら5,000トークンで済む作業に、Sonnet 5は69,000トークン使うケースがあったという。安いトークン単価とは裏腹に、総コストではSonnet 5がFable 5すら上回る6,000ドルという結果を出したベンチマークもあったらしい。実際のコーディングテストでも、Opus 4.8が26分で終わらせた作業に、Sonnet 5は2時間かかった、という報告もあった。理由は、自発的に大量のサブエージェントを立ち上げて、無駄なループにハマってしまうから、ということらしい。
「Fableが戻ってくるまでの最高のモデルや」と評価する声もあれば、「全くそう思わない」と切り捨てる声もある。同じモデルを見て、これだけ評価が割れるというのは、なかなか珍しいことなのであった。
おれの結論はこうだ。両方とも正しい。
日常のナレッジワーク、資料作成、文章の下書き、メールの返信、こういう軽い作業には、Sonnet 5は圧倒的にコスパがいい。無料で使えて、Opus級に近い仕上がりが出てくるのだから、これを使わない手はない。ストアカの受講生さんにも、これはそのまま勧められる。

一方で、本気の開発案件、複雑な多段階のタスク、失敗が許されない仕事には、Sonnet 5だけに任せるのは危うい。サブエージェントを立ち上げすぎて空回りする癖があるなら、そこはOpus 4.8か、復活したFable 5に振ったほうがいい。餅は餅屋、AIはAIで向き不向きがある。
そしてFable 5。これは輸出規制まで食らった、いわく付きの一台だ。7月2日から7日までの間はサブスク枠でも使えるが、それ以降は従量課金になる。使えるうちに、一度は本気のタスクをぶつけてみる価値はある。動画で見るのと、自分で触るのとでは、感覚がまったく違うのであった。
68歳のおれがカメラマンをやっていた時代、フィルムの現像に何時間もかけていた。今は、AIが数分で資料を作り、数十分でコードを書く。良いも悪いも含めて、時代はここまで来たのである。

まったく、これだから世の中はおもしろい。
読んでくれてありがとう。次はFable 5を実際に使い倒した話を書く予定である。
受講生のnote フォローをよろしくお願いします。
