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定家にきゅんきゅん -国宝熊野御幸記と藤原定家展レポート(三井記念美術館)-

数ある美術館レポートの中からご訪問いただきありがとうございます。

しばらく西洋画続きでしたので

今回は
三井記念美術館(日本橋)で開催中の
国宝熊野御幸記と藤原定家」展について
レポートしたいと思います。

掲題について書いていらっしゃる方のレポートの中で
一番内容が薄いレポートかもしれませんが
ライトに楽しんでいただけると嬉しいです。

「熊野御幸記ってそもそも読めないんですけど…」
「定家って知ってるけど、誰でしたっけね…」
という、まさに私と同じ目線の
友たちに向けた
優しい解説を目指します。


熊野御幸記って、なんですか

くまのごこうき
と読みます。
「熊野へ、行幸(天皇や上皇のおでかけ)、レポ・日記」
のことです。

藤原定家が後鳥羽上皇へ随従したときに
日々の工程などを書き記したものです。
詳しくは下記にも書いてありましたのでご紹介しますね。

藤原定家がどういう人だったかな、は
Wikipediaへ

道長の5代後の藤原さん、日本を代表する詩人、という位置付けのようです。

彼が書いた熊野御幸記については
展示室4の解説部分に
熊野御幸記の写真資料がありますが
このように「日記」「レポ」なので
綺麗に書かれているというより、「記録」なので
その場の空気まで伝わってくるような書き味です。
(読みにくい字も多いらしいです。)

本人もまさか「国宝」になるとは思ってなかったろうな、
と思います。
ちなみに熊野御幸記に行ったのは40歳頃で
健康に不安があったとか。
体が弱いと、ハードな出張は
最後までやり抜けるか心配ですよね。
(わかります・・・)

そんな彼も80歳くらいまで生きた、という解説がありました。
当時だとすごい長生きですよね。

今回の展示は
この熊野御幸記を主として
茶道具、色紙、百人一首、消息、かるた、歌仙絵などが展示されていました。

こちらのnoteでは
「茶道具、色紙、百人一首、消息、かるた、歌仙絵、
全然わからないくてもOK!」
私目線で
展示をみて、
勝手に「きゅんきゅん」したものを紹介していきます。


きゅん①:同じ濡れるなら桜の木の下で


幸せなことに
入り口すぐの展示から
きゅんきゅんできました。

展示室1は茶人の好んだ「定家様」の
茶道具の紹介が主でした。

定家様
(藤原定家の書を好んで
茶道具の箱書などに定家風の書)

というようです。

小堀遠州と松平不昧の二台巨頭のお宝が多かったです。
たしかそちらに展示してあった絵に書いてあった和歌


桜狩 雨は降りきぬ 同じくは 濡るとも花の 蔭にかくれむ

さくらがり
あめはふりきぬ
おなじくは
ぬるともはなの
かげにかくれむ
(拾遺集 春 よみ人知らず)

お花見にきて雨が降ってきました。
どうせ濡れるなら、桜の木陰に居ようじゃないか。

という意味だそうです。
(ネットの訳をさらに私が現代風にしています)

きゅんきゅん、しませんかーーーーー!?


私はその場で読んで
あまりのかわいさに
ひとりではわわわと、
ときめいてしまいました。

(多分)高価な着物が濡れているのに
「ちっ」とか言わずに
どうせならサクラの下で濡れちゃいましょうねえ〜
ってノリです。

展示開始するで
この和歌に出会ってきゅんきゅんしたので
「この展示はこの先もきゅんきゅんスポットがあるやもしれん」
とワクワクしました。


ちなみに拾遺集は
ビギナーズクラシックからも出ていたので
持っていたかなと本棚を漁ってみたのですが
持っておりませんでした、残念。

ご興味のある方はどうぞ!

Wikipedia解説もあります。


この和歌、調べてみると
最後が「暮らさん」バージョンもあるようです。
展示は「かくれむ」バージョンだった気がします。
(写真撮影はできない箇所でした)

展示は展示室1の
小堀遠州筆和歌小色紙「桜かり…」
という作品です。

行かれた方がおりましたら
暮らさん・かくれむ、
どちらだったか、ぜひ教えてください!


きゅん②:お姫様がお美しい

展示室4、6、7あたりに
百人一首、かるた、歌仙絵などが展示してありましたが
お姫様が美しい・・・

下記はパンフレットからの引用ですが

土佐光起 女房三十六歌仙帖 紫式部

衣の折れ方、髪のデザイン
この流れるような美しい描写。
まさしく、きゅんきゅん認定です。

さすがは土佐派、秀逸ですね。

日本人なら誰もがみたことのある「お姫様の形」なのですが
改めてみると本当に綺麗なんだなあと
気付かされました。

実際は着物は重くて暑いし
髪もべとべとで臭くて
香を焚いて着物に香りをうつらせたり
色々大変だったと聞きます。
西洋もウエストきつくしたり、
お姫様はどの国でも大変だったようです。

でも、雅でかわいい。


きゅん③:プレイボーイ和歌

百人一首も全展示がありましたが
有名なものしか存じ上げないので
展示の中でも
ついつい有名人と有名な歌を探してしまいます。

有名というとこんな和歌でしょうか。

ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは

(訳)神々の時代にも聞いたことがない。
竜田川の水が、こんなにも深紅に染まるとは。

在原業平の歌です。
「ちはやぶる」の言葉が漫画にもなっていて
有名になった印象です。

もみじが川面を覆って
素晴らしい光景を歌ったものでしょう。
「くくる」とはくぐることで
もみじの下に川の水がくぐっている、ということらしい。

川が紅にそまる絶景。
まるでこの世ではない、どこか別の世界のよう。

在原業平はおしゃれですね。

在原業平といえば、伊勢物語の主人公と言われています。
数たるみやびな女性と浮き名を流した方です。

読む歌も、
イケメン感というか
プレイボーイ感がありますね。


きゅん④:業平と一変、定家の和歌


今回は藤原定家がテーマなので
定家の歌も見てみたいともいます。

見わたせば 花も紅葉も なかりけり
浦の苫屋の 秋の夕暮れ
(新古今和歌集 秋歌上 三六三)

(見渡してみると、花も紅葉も何もない。
ただ、浦に建つ粗末な苫屋(とまや・粗末な小屋のこと)と、
秋の夕暮れがあるだけだ。

定家さん、業平さんのような
荘厳な風景とは一変
華やかなものが一切ない歌です。

それでも、いや、だからこそ心に残る。
業平のもみじもとても美しいと思いますが、
どこまでも「ただ美しいだけ」。
(それもありです)

そして、対する定家は
定番と言える「花」と「もみじ」を
「無い」と言い切る逆張り。
強気です。


定家の苫屋はうら寂しいですが
その場にいたら、
しみじみといろんなことが思い出されそう。
余白のある絵を感じます。

ただ美しさを歌った歌よりも、
奥行きがあるのです。

私はこちらの歌の方が好きです。
きゅんきゅん認定!


きゅん⑤:紀貫之とかぶるんだい


藤原定家と紀貫之

お恥ずかしながら
私はいつもごっちゃになっていました

Wikipediaを読むと300年くらい違うんですね
道長などよりも前の方で
業平や道真のちょい後くらいの方です。

300年違う作家と混同するとは、
雪舟と北斎がごっちゃになる、
みたいな言い分と同じじゃないか。
なんと恥ずかしい。

ちなみに紀貫之は
伊勢物語の作者説があるのですよね。
ちなみに、定家はこの伊勢物語を写本しています。

今回は
Wikipediaで紹介されている
紀貫之の代表歌を5つ見てみましょう。


(1)
人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににほひける
(百人一首35)

(訳)
人の心はどう変わったか、私にはわからない。
けれど故郷では、花だけは昔と同じ香りで咲いている。

百人一首に入っている紀貫之の和歌のなかで
一番有名な歌、でしょうか。

(2)
袖ひちて むすびし水の こほれるを
春立つけふの 風やとくらん
(古今集 巻二)

(訳)袖を濡らしてすくった水が凍っているのを、
立春の今日の風が、溶かしてくれるだろうか。

この5つの和歌の中ですと
私はこちらが一番好き。
みなさまはいかがでしょうか。


(3)
霞たち このめも春の 雪ふれば
花なき里も 花ぞちりける
(古今集 巻九)

(訳)霞が立ち、木の芽もふくらむ春に雪が降ると、
花のない里にも、花が散っているように見える。


(4)
さくら花 ちりぬる風の なごりには
水なき空に 波ぞたちける
(古今集 巻八十九)

(訳)桜を散らしていった風の名残で、
水もない空に、波が立っているように見える。


(5)
吉野川 いはなみたかく 行く水の
はやくぞ人を 思ひそめてし
(古今集 巻四百七十一)

(訳)岩にぶつかり、高い波を立てて流れる吉野川の水のように、
私は早くから、あの人を思い始めてしまった。


いかがでしょうか。
(5)は恋の歌だと思いますが、
基本的には自然の歌が多くて、
自然をまっすぐに描写することで
歌の中に直線が生まれ
その周りにすっきりとした
余白ができているような感覚があります。

和歌、楽しいですね。



和歌が全然わからない!という状態でも
国宝熊野御幸記と藤原定家」展は
全力できゅんきゅんできて楽しめます。

そして、次回展示の

三井記念美術館20周年
特別展生誕1200年
歌仙 在原業平と伊勢物語 展
の準備も少しできた気がします!

国宝熊野御幸記と藤原定家」展は
2026年2月1日までです。
ぜひ足をお運びください。


質問、聞きたいこと、ご感想等、
お気軽にコメントを書いていただけるとうれしいです。

記事をまとめてみました。
ご興味のある記事がありましたらぜひお読みください!

はじめに01 -絵の声を聴く、アート鑑賞について- 好きな画家さん一覧
https://note.com/killamaru/n/n0cb504116a87
書き始めた経緯やこのNoteの説明など

はじめに02 -アートの声を聴く鑑賞について-
https://note.com/killamaru/n/n3b42879699f8
「はじめに」の続きですが、私のNoteの中では、♡率が高くて、ありがたいです。

はじめに03 -審美眼は何年で身につくもの?
https://note.com/killamaru/n/ne9792bc439fe

<ドイツ旅2026>
ドイツから戻ってきました -2026.01.13 近況報告-
https://note.com/killamaru/n/nce677f79afbc

デューラーと話したくて家に2回おしかけた話 - デューラーズハウス -
https://note.com/killamaru/n/n681100d72660

フェルメール報告会 - ドイツ旅で鑑賞した絵のレポート -
https://note.com/killamaru/n/n9509726b7b11

フェルメールに隠された法則 - 嫌いだったフェルメールが好きになれた秘密 - [ディープ]
https://note.com/killamaru/n/nab3fbbd02386

<若冲>
若冲からはじめて呼ばれた話 -泉屋博古館東京-
https://note.com/killamaru/n/n79a61287feed

若冲は、今日も私を呼ぶかしら - 三井記念美術館「円山応挙」展 -
https://note.com/killamaru/n/na07051e46676

若冲は、もう1人の天才にためらう、の話 - 東京藝大美術館 -相国寺展
https://note.com/killamaru/n/n85b940e93ef9

<ゴッホ>
[ディープ]ゴッホのひまわりって、おいしいの? - 西洋美術館 ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
https://note.com/killamaru/n/n69330619f156

「あなたはどんな鑑賞タイプ?」と「ゴッホの死相」について ゴッホ展 -東京都美術館-
https://note.com/killamaru/n/na3e315c32ca0

ゴッホ美術館(アムステルダム)に行ってきた -美術館レビュー(絵多め)-
https://note.com/killamaru/n/n4e65dea66a63

おいしそうな絵はここにも(ピエール・ボナール) -「ひまわり」異変の後日談-
https://note.com/killamaru/n/n32920ae6c2de

<美術展>
ブラックホールを作りだせる画家 -仙厓展@出光美術館- [ディープ]
https://note.com/killamaru/n/n576fe4a903b7

絵から音がしない理由 -ユトリロ展(SOMPO美術館)-
https://note.com/killamaru/n/nd086f4b57077

定家にきゅんきゅん -国宝熊野御幸記と藤原定家展レポート(三井記念美術館)-
https://note.com/killamaru/n/ne15a8591b9e4

伊勢物語展 -根津美術館- 岩佐又兵衛に感じるもの
https://note.com/killamaru/n/n522358cdf891

僧侶の背中には、実は何があったのか -特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」-
https://note.com/killamaru/n/nb87fb034c08e

<岡本太郎とウォーホル>
岡本太郎の絵をめくってバックヤードをのぞいた話[ディープ] - ウォーホルの続き -
https://note.com/killamaru/n/ndd21dc5e0255

アンディ・ウォーホル「SERIAL PORTRAITS」展(ルイヴィトン) - 岡本太郎のために力をお借りします -
https://note.com/killamaru/n/ndd1a969b04ba

<ランキング>
[異変の起こった美術展ランキング]2025年行った美術展の中から)
https://note.com/killamaru/n/n853c88ce272c


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