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闇 517(29年ぶりの再会と歪んだ性欲編)

闇 517(29年ぶりの再会と歪んだ性欲編)

2026/04/07 tue
※この作品は、因果律に業を混ぜた小説です
前回の章


二千二十一年一月二十三日、土曜日仏滅。

今日も昼からシュべろう。
アスクルームを出て真っ直ぐ歩くと、すぐ見えてくる喫茶店シュベール

2021/01/23 新大久保駅前 喫茶店シュベール

茄子、ハンバーグに続いて、三番目に好きなミートソースを食べていなかったのではないか。

2021/01/23 新大久保駅前 喫茶店シュベール

注文してみると、本来のミートソースとは違い、ボロネーゼっぽい作り方だった。

そもそもミートソースとは、ボロネーゼがアメリカ風にアレンジされたもの。
日本では千九百四十年代に、洋食店や喫茶店などで提供されたのをきっかけにブームとなる。
現代では家庭料理の定番パスタとして、日本中で親しまれている。

似ているようで種類分けのできるボロネーゼとミートソース。
挽肉や野菜など基本的な材料はボロネーゼとほぼ変わらない。
だが赤ワインや生クリームはあまり使わず、トマトケチャップやウスターソース、砂糖などを加え、より甘みの強い、とろみのあるソースに仕上げるのがミートソースの特徴。

それにしてもパスタ一皿じゃ足りないな……。

俺はそのまま大久保通りを真っ直ぐ歩き、喫茶店『ラ・ムー』へ向かう。
喫茶店梯子二軒目。

2021/01/23 大久保 喫茶店ラ・ムー

頼むものは鼻から決まっている。
二番目に好きなハンバーグを注文。

2021/01/23 大久保 喫茶店ラ・ムー

俺は何気に喫茶店が好きだった事を自覚した。
いやいや、何気にじゃないだろ?

地元川越でも昔からこの手の店や洋食屋が大好きだったじゃないか。
一番通った『ジミードーナツ』然り。
喫茶『ジャズ』然り。
サンロードの二階にあった喫茶『旅』然り。
霞ヶ関のファミリーレストラン『エトワール』然り。
川越駅西口のグリル『トーゴー』然り。

それだけじゃない。
川越駅東口サンロードにあったカレー屋『かれいど』とラーメン屋『どん』。
少し行った先にあったキッチン『ジャワ』。

令和になった今では、すべてがもう無くなってしまった。
昔から俺は食べる事に特化して、食い意地が張っている。

思い出をこうして他の喫茶店で咀嚼してノスタルジックな気分に浸るしか、もうできないのが寂しい。

またこれも人生というものか。
仕事の時間が近付く。
今日も俺は歌舞伎町へ向かって歩く。


二千二十一年一月二十四日、日曜日大安。

週末になると、決まって開催される中央競馬。
今年の抱負でギャンブルはやらず、月に二十万は貯金するように頑張ると決めたのだ。
少しだけ競馬やパチンコをやったが、あれは賭博ではなく俺の中ではただの運試しである。

健全な生き方とは何か?
それは朝シュべ

2021/01/24 新大久保駅前 喫茶店シュベール

朝からシュベールへ行くという俺の作った隠語。
頼むものは、好物のミートドリア。

2021/01/24 新大久保駅前 喫茶店シュベール

でもそれじゃ足りないからピザトーストも。

2021/01/24 新大久保駅前 喫茶店シュベール

パルメザンチーズをパンにもサラダにも振り掛けるのが、岩上スタイル。
ああ、今日も朝食でこんな金額を使っているよ……。

六年前の今日、ラザニアを作った過去の思い出がフェイスブックで表示される。

2015/01/24 当時の新宿マンション 自家製ラザニア

本当にこの頃は、ソースからすべて手作りで拘っていたなあ。
また料理をしたいものだ。

そして七年前の今日は、初期横浜時代。
日ノ出町駅近くの第一亭に行き、焼きそばのうんちくを語っている平和な時期の投稿。

本当にこの頃のままいられたら、俺も地獄に落ちずに済んだのにな……。


二千二十一年一月二十五日、月曜日赤口。

今日も起きてから朝シュべ
シャワー浴びてから行ったので、モーニングギリギリの時間に到着。

2021/01/25 新大久保駅前 喫茶店シュベール

BLTサンドを食べながら、時折聞こえてくる琴美の天使の囀り声が耳に入り、足のつま先まで何とも言えない感覚になる。
もう少しあの声を堪能したい。

追加注文をする際ランチメニューを眺めていると、シュベールの年配の店長が「こちらの料理もありますよ」と通常メニューを開いてきた。

何でタイム制の安いメニューがある時間帯に、あえて高いメニューを勧めているんだ?
顔に出さないまでも、少しだけ気分を悪くする。

2021/01/25 新大久保駅前 喫茶店シュベール

結局ランチタイムに切り割った日替わりのカレーを注文。

度々聞こえてくる天使の囀り。
それだけで全身が弛緩し、とろけるような心地良さ。
喫煙ブースでタバコを吸いながら、あのような声を出す琴美とセックスをしたら、耳元でどんな声を出すのだろうと想像した。
妙な興奮が全身を包む。

すべての性能が、声だけに特化している彼女。
あれでスタイルや顔まで自分の好みだったら、理性を抑えられていなかったかもしれない。

なるほど…、そう考えると、神様も上手い具合にバランス良く彼女を作ったものである。
このような捉え方をすると、神様はいるという自論になるのか。

「……」

馬鹿な事考えてないで、ゆっくりしたら仕事へ行こう。


二千二十一年一月二十六日、火曜日先勝。

アスクルームを出て新大久保駅方面へ向かう。
いつもならシュベる。
だが昨日の不愉快な事を思い出し、左へ曲がる。

行き先は喫茶店『ラ・ムー』にてホットドッグモーニング。

2021/01/26 新大久保駅前 喫茶店ラ・ムー

バターロール二個じゃ、全然足りないなあ。
それに天使の囀りが聞こえないのも、何だか調子が出ない。

でも今日はシュベールに行くのはやめようと決めていたので、ランチまで大人しくウサギ小屋で過ごす。
たまには違う店を探索するかと、大明飯店から大久保駅南口辺りを歩いていると、ビジネスホテルの一階に面したところに喫茶店のようなものを発見。

2021/01/26 新大久保 喫茶店vivo daily stand

ビーボ デイリースタンド』?
変な名前の店だなあ……。

しかしテラス席もあり、洒落た感じに見えたので入ってみる事にした。

2021/01/26 新大久保 喫茶店vivo daily stand

店内は狭くカウンター席にテーブル席合わせて、十数名入れば満席になるような店だ。
ランチメニューの品数は少なく、カレーとキッシュプレート、デリプレートの三種類しかない。

2021/01/26 新大久保 喫茶店vivo daily stand

だが税別で六百円と良心的な値段の店だ。

2021/01/26 新大久保 喫茶店vivo daily stand

カレーライスを頼み、もの足りなかったのでキッシュプレートも追加で注文。

2021/01/26 新大久保 喫茶店vivo daily stand

酒も飲めるのか聞いてみたところ、もちろん出せるそうで、タバコは外のテラス席ならOK。

初めての来店だけど、中々良さげなところだ。
明後日久しぶりに再会する神田へ、待ち合わせ場所はここにしようと連絡した。

中学時代同じ部活の仲間。
数十年ぶりの交差は、一体何をもたらすのだろう。


二千二十一年一月二十八日、木曜日先負。

神田と会う為、今日は休みを取っていた。
しかし彼が仕事の予定が急遽入ってしまい、そうもゆっくりできないと事前に連絡があった。
それで朝に目が覚めてしまい、中途半端な睡眠だった。
今から寝たところで、約束の時間に起きられないんじゃ本末転倒だしな。

それに昼間の数時間だけという限定なので、そのあとを暇を持て余す。
休みを取った意味合いが薄くなってしまう。

先日ちかと会い、数時間で十万円の金を吐き出した。
それでもキス一つしていない。

今年になってから女を抱いていなかった。
たまには異性の身体を堪能したい。

仕事、シュベール、アスクルーム。
日々の日常を淡々と繰り返し、少しずつ貯めている金。
自制ばかりでなくたまには女を抱いてもいいんじゃないか?

でもどうする?
手っ取り早く風俗?
少し違う。
心を通わせながら女を抱きたいのだ。

「……」

実はこの部分が恋愛と性欲における最大の肝の部分。
一番難しいのは自覚していた。

ただ射精だけすればいいという簡易な目的の性欲なら、値段は安く済む。
ピンサロへ行けば数千円、店舗型ファッションヘルスで八千円程度。

本番までしたいならソープランド。
またはヘルスで風俗嬢を口説くか逝かせ、どさくさに紛れて入れるしかない。
ソープなら安くても二万。
ヘルスは一万掛からない。

しかしそこには愛も何もないのだ。
ただ身体を重ね合わせるだけ。

これまで覚えていないほどの女を抱いてきた。
しかし俺が我慢できずに射精したのは、過去たった一人だけ。

まだ俺が三十歳になったばかりの頃だったか?
もう二十年ほど前まで遡らないといけない。

可愛い系で胸の大きなマドカという子を指名する。
実際に見てみると写真より良い女である。
プレイの途中、マドカの股間へ俺のをつけた。
「だ、駄目だよ! 本番禁止だから」
「先っちょだけ」
そう言いながら近付くと、マドカは大きな声を出して感じだした。
俺は興奮しながら徐々に中へ入れる。
大きく揺れるマドカの胸。
気が付けば完全なセックスの形になっていた。
何も言わず俺を受け入れるマドカ。
五分もしない内に、俺は射精してしまう。
生まれて初めての事だった。
今までどれだけ女を抱いたのか自分でも覚えていないほど数を抱いたが、まともに逝けた事が無い。
俺はどうしてもこの女が欲しくなった。
「マドカ…、真面目に付き合ってくれないか? こんな仕事しなくても、俺が頑張って稼いでくるから」
真剣に真面目に気持ちを伝える。
マドカは少し考えてから口を開く。
「私ね…。ヤクザ者の女なんだ……」
「ヤクザじゃ、オマエを幸せにできない。だから別れろ。俺が幸せにしてやる」
その言葉に泣き出すマドカ。
俺は黙ったままセブンスターに火をつけて待った。

「……」

結局彼女の心が揺れ動いている最中、その店は警察の摘発に遭い、それ以来マドカとは音信不通のまま。

あの女以外、俺は正常なセックスをできていない……。

不能ではない。
普通にセックスはできる。
ただ、俺が自然と射精できないだけなのだ。

過去様々な方法を試した。
結果俺が逝けるのは相手が従順に言う事を聞き、それを見て征服感に満たされながら自分でマスターベーションをして、女に精液を掛ける。
そんな歪んだ方法だった。

最後に付き合った彼女、百合子。
あの頃からずっと俺はそうだった。
射精せずにずっとピストン運動をしていれば、女は必ず逝ってしまう。
もちろんこのシンプルな動作だけではないが、基本的に女の身体はそのように作られている。

変な理屈であるが、先に逝ったほうが負けというルールなら、勝負の判断は女が身体で感じて真っ白になるか、男は射精するかの違い。
男は精液が出るという明確な判断ができる。
しかし女は違う。
相手を気遣い逝ったふりをする女だっているのだ。

その真偽を見極めるには、相手の身体を丹念に観察しないと分からない。
自身の意思と違い、快楽による小刻みな痙攣。
そして比例するように漏れてしまう喘ぎ声。
逝ったあとの女の身体を隅々まで眺め、それを何人も見てきたからこそ分かったものだった。

完全に逝った女は、その快感にはあがらえない。
セックスの本当の良さを身体で理解した女は、どんな人間でも性欲に溺れる。

これは百合子にしても、教会の神父の妻だった清楚な望にしてもそう。
いくら清楚に生き、自身を取り繕うと、性欲の根底を知るとそちらへ狂う。

またあの快楽を求めるのがすべて。
だから従順になっていく。

逝った直後の女は、息も荒くなり力無く横たわる。
俺はそこへ敏感になっている秘部へ、優しく指を這わせてみた。
小さい喘ぎ声を漏らしながら、身を任せる女。
徐々に強弱をつけ、女の反応を見ながら調整していく。
波が何度も来るように、異性の性欲は再び波が押し寄せる。
また逝ったなと思った瞬間、相手の手首を掴み指先を秘部へ近付ける。
自分でこすりつけるように誘導すると、決まって女はそのまま自分で自分の身体を弄り出す。
半強制的なオナニーの誘導。

気持ち良さにあがらえない女。
そこへ俺は静かに声を掛けた。

「気持ちいいか?」
「うん……」

「俺のとのセックスは最高か?」
「うん……」

「もっと欲しいか?」
「うん……」

「じゃあ、まず自分で弄ってまた逝きな。そしたらまた入れてやる」
「あー……」

「想像しろ。今、目の前にいるのが俺でなく、小汚い醜い男がおまえの身体をジッと見て、チンコを弄っているぞ?」
「や、やだ……」

「駄目だ。股を開いてオナニーしているところをその男に見せつけろ。感じているおまえのありのままを見せろ。そして逝け。そしたらまた俺が入れて、逝かせてやる」

このように目の前でオナニーをさせ、卑猥な言葉を投げ掛ける。
そして次第に興奮した俺は、ようやく精液を女の身体へ掛けて終わるのが基本的な流れだった。

これは俺とのセックスの良さを知り、回数を重ねれば重ねた分だけ従順になっていく。
つまり初待遇、一回だけの相手には中々分かりづらいのだ。

では急に出てきたこの性欲の捌け口をどうするのがベストなのか?

風俗は逝けないから意味がない。
かといってちかのようなキャバ嬢を抱くには、時間も金もかなり掛かってしまう。

過去俺に夢中になり、ストーカーと化した女を振り返る。
二十代後半に付き合った女、室舘真紀。

男って非常に現金なもので、いくらスタイルのいい女でも数回抱けば飽きてしまう生き物である。
毎週のように抱いていた俺は、最初だけ義務のように腰を振り、あとは女にマスターベーションをやらせ、それを見物した。

俺が多方面の女と浮気をして、毛じらみを移すまでは上手くいっていたはず。

最近では九州のひろみがいい例だ。

彼女の手をどけ、一物を押し付けた。
右手で掴みながら上下に動かすと、大きな喘ぎ声が漏れる。
ひろみの濡れ具合いはどんどん激しくなっていく。
少しだけ中へ入れた。
「あっ! だ、駄目!」
「先っちょしか入れてないよ」
「……。そ、それなら……」
一センチも入れない状況で小刻みに腰を動かす。
彼女の声はどんどん大きくなっていく。
瞬間を見計らい、奥へ一度だけ入れてすぐ抜いた。
この一撃で逝ってしまうひろみ。
「だ…、駄目…。ふ、不倫になっちゃう……」
もはや口で言う台詞と貞操観念が反比例している状況。
「おまえがビチョビチョになり過ぎているから、一瞬滑っただけだろ」
「……」
再び一物を押し付けゆっくり動かすと、身体を細かく震わせる。
不規則に何度かに一度の割合で、奥へ押し込む。
その度大きな声が聞こえた。
「駄目……」
「入ってないって、ほら、俺のを触ってごらん」
押し付けた状態で止め、彼女の手を誘導する。
「本当だ……。あ!」
その瞬間奥へズブリと差し込み、大きく腰をスライドさせた。
もう何度逝ってしまったのか分からないぐらいだろう。
これまでの経験で一つ自覚している事がある。
女はセックスで何度も逝くと、自分の立場を忘れ、ただの雌と化す。
ひろみを部屋へ入れてから二時間以上の時間が過ぎていた。
何度も逝く彼女。
一度も射精できない俺。

そうか!
風俗は駄目。
飲み屋の女は無駄金。
それなら室舘真紀と会った時の手段、出会い系サイトを使えばいい。

二千年の頃から時代は進み、二十六年も経った。
久しぶりに見る出会い系サイトは、援助交際化していた。

『ホ別二』というのはホテル代は別で、抱くのに二万円は掛かるという意味だろう。
自分の顔をモザイク処理できる技術も無い為、手で目を隠した写真を使う女や、身体の一部だけを強調して載せている女。

三万近く掛かる遊びで、抱く相手の顔が見えないのは嫌だった。
自分好みの胸が大きく、顔が綺麗そうな女を色々検索してみる。

ん、ショートカットで茶髪だけど、そこそこいい感じの女がいるな……。

案外キャバ嬢のちかを連想して、俺も逝けるかもしれない。
微かな希望を頂きながら茶髪ショート女へ連絡をしてみた。

条件は池袋で落ち合い、ホテル代は俺持ち、料金は二万円。
自分でオナニーするよりは、こっちがいい。

確か神田って、今日夕方の五時までなら大丈夫って言っていたよな?
そうなると大久保から池袋まで三十分として、余裕をもって六時に会うのがちょうどいいか。

茶髪へ連絡すると、四時か七時ならいいと言う。
四時はまだ神田と会っている時間だから、七時にするか。
駅前のパチンコでも打って時間潰せばいいし。

昼になりシアリスを口に放り込むと、『ビーボ デイリースタンド』へ向かう。
距離にして徒歩二分。
先に到着してテラス席へ座ると、アイスコーヒーとスコッチ系のウイスキーのロックを注文。
カレーライスやキッシュプレートも頼み、先に一人で飲み出した。

駅から近いけど、少し奥まった場所だから神田の奴場所分かるかな?
地図は送っといたけど。

「おう、岩ヤン!」
「あ、神田? 老けたなあ! 久しぶり! 白髪凄いじゃん。いつ以来? 川越のつぼ八が最後でしょ、会ったの。あの時俺が確か全日のプロテスト受かったあとじゃなかったっけ?」

「いや、これからテスト受けるんだって言っていたよ。今は身体を大きくして鍛えているって。あの時は俺がバンドやっていた頃だから、二十歳だよ。だから二十九年ぶりって感じだな」

「そうか…、二十九年もあれから経ったんだな……。あ、神田、何飲む?」
「俺はとりあえずビールを」

「アイスコーヒーは?」
「変わった飲み方をしてんなー。まあいいよ、それももらうよ」

2021/01/28 新大久保 喫茶店vivo daily stand

本当に久しぶりの乾杯
中学のサッカー部時代の話。
好きだったクラスメイトの話。
過去の懐かしい話題は、尽きる事も無く延々と続く。

「俺は勝田と日暮が幼馴染でさ、幼馴染で男でいったら宏国と平さんだな」
「それって、ひろったんの事? 鎌田宏国でしょ? 俺、一年と三年同じクラス。勝田も三年だけ一緒か。ひろったんさ、いつだったっけかな…。そうだ! 俺がヤクザのゲーム屋で働いていた頃、そこの組長が二千万円使い込んで飛んだんだよ。それで一旦店閉めて、川越行った時に会って一緒に焼肉食べたよ。二千十五年の時」

岩上智一郎、地元川越に凱旋
本川越駅に到着して改札を出ると「あれ、岩ヤン?」と背後から声を掛けられる。
「ひろったん? 久しぶりー」
中学時代の同級生鎌田宏国ことひろったんと偶然的な再会。
岡部さんは目を細めながら「ほら、川越来て良かったろ? 俺はそろそろ帰るよ」と俺を残して行ってしまう。
何年ぶりの再会だろうか?
下手したら十数年ぶり。
「これから弟夫婦と月吉のほうにある焼肉屋行くんだけどさ、岩ヤンもよかったら来る?」
これも時流の流れに沿ってか……。
「うん、行く。でも俺が突然お邪魔しても大丈夫なの?」
「何言ってんだよ、岩ヤン。みんな、知っている奴らだから問題なんかないって」
焼肉屋で数年ぶりに懐かしい顔ぶれと会い、楽しい時間を過ごす。
携帯電話が鳴る。
客の飯島志穂からだった。
「ねえ、店長! 二階の店、ここ数日やってないでしょ? どうしたの? 何があったの?」
隠してもしょうがないので新庄が飛んだ事、それにより少なくとも再編成するのに今月一杯店を閉めている事を伝える。
俺の電話を聞いていた同級生らは、表情を曇らせ固まっていた。
それはそうだ。
普通に会話の中でヤクザだ組長だ、それが飛んだだの物騒な話しかしていないのだから。
楽しい空気を汚してしまったと感じ、俺は一万円札を置いて店を出た。

もう六年ぐらいあれから経ったんだな。
あの時電話してきた飯島志穂はくも膜下出血だかで、もうこの世にいない。

「宏国や、平さんに会いたいなあ……」

目を細める神田。
連絡を取ろうと思えば俺は取れる。
五十歳手前になった今だからこそ、音頭を取ってみんなを集めて旧交を温める時期に来たのかもしれない。

「ひろったんは会いたいけど、平さんって松口だろ? あいつ、性格悪いから、俺は嫌い。俺の幼馴染というか、同じ近所だと安達すみれと中野健次郎になるんだよね」
「おおっ! 中野健か! 懐かしいなあ…。今何をやってんだろ?」

「日本にはいないって聞いたぞ? アメリカだかに住んでいるって。兄ちゃんの真一郎は、川越ケーブルテレビで働いていたけど」
「何で岩ヤン、そんな事まで知ってんだよ?」

「俺が前に新宿クレッシェンドって本を出した時さ、川越ケーブルテレビが取材に来たんだよ。そのあとそこの女プロデューサーと寝んごろになってね。その時、真ちゃんがケーブルテレビにいるのを聞いたんだ」

「へー、今度本見せてくれよ」
「一冊ぐらい残っていたかな? まあ次会った時持っていくよ」

「ありがと。安達は?」
「あいつさー…、ちょっと自意識過剰って言うの? 俺、確かに安達とは幼馴染だよ。神田が勝田に久しぶりに会ったら飯ぐらい誘うだろ? それで何度か行ったんだけどさ。いきなり私と付き合ってるなんて、周りに言い触らさないでとか抜かしやがってさ。一度だっておまえの事好きになったり、口説いたりした事ねえよって!」

「そりゃ確かにウザいな。あと神山勝男にも会いてえよ」
「勝男は確か変わってなければ、父島ってあるじゃん。そこにいるはずだよ。俺が賞を取った時、当時のブログに書き込んでいたから。ミクシィにも一時いたけど、いつの間にか削除しちゃっていたな」

「今度時間作って父島行ってみるか!」
「嫌だよ。何で休み取って、わざわざあんな小さい島へ行かなきゃいけないんだよ。勝男が確実にいるかどうかも分からないんだぞ?」

「まあ、そりゃそうか。岩ヤン、中学の時誰が好きだったんだよ? 俺は吉敷って言ったぞ」
「ああ、月越小の吉敷ね。確かにあれは大人になったら、美人になっているだろうな。俺は最初内呂優美。次に太田夏子」

「何だよ、陸上部系かよ。あの時陸上部女子って、可愛いの多かったもんな―」
「内呂はまだ続けていれば、川越のサンロードのヤマハのピアノの先生やっているはずだぞ。でも最終的には月越の田村幸子が好きだった。中三の時告白してフラれたけど」

「お互い中坊の時はモテなかったもんなー」
「でもさ、二十代前半…、俺が全日で肘壊して駄目になり、新潟のグリーンプラザ上越ホテル行った時さ、綱川直美と偶然会ったんだよ。俺は仕事で、向こうはスキーを滑りに来た客で」

「へえ、あのチンチクリンで天パーだった綱川だろ?」
「でもさ、俺が中学の同級生で見た中で、綱川が一番美人だと思うぞ。あとは松本美紀かなあ」

「松本美紀は当時地味だったけど、絶対に綺麗になっているだろ」
「俺が二十歳になる前…、だからつぼ八で神田と会うちょっと前ぐらいかな? 一瞬だけいい感じになった頃あったんだよ。キスまではしたんだぜ? フラれたけど」

当時三年間同じ学校で過ごさないと分からない話題ばかり。
でもそれが同級生というものなのだろう。

「岩ヤン、悪い。これから仕事の打ち合わせあるからさ、そろそろ行くわ。また近い内会おうぜ!」
「ああ、今日は会えて本当に楽しかったよ。また会おう」

会計は二人で一万八千円。
こんな安い店で結構飲んだものだ。
俺は全額支払うと格好をつけた。

「うーん、じゃあ悪いから五千円だけ置いていくよ」
「じゃあまた今度」

「あのさ、篠ヤンの店あるじゃん。今度森昇が女も呼ぶから、あそこで集まろうって言っていたけど、日時決まったら岩ヤンにも伝えるよ」
「そう、俺、飯野君なら連絡つくよ。こっちはシフト次第だから、なるべく合わせたいけどね。じゃあ、また今度、神田」

フェイスブックを通じ二十九年ぶりの邂逅。
五時間程度だが、俺たちは童心に戻り昔を懐かしめた。

時刻は五時を少し回っている。
結構酔っているな。
でも、これから大人の時間か……。


池袋へ到着しても、まだ六時前。
俺は北口近くにあるパチンコ屋パーラーフジへ入り時間を潰す。
もちろん座る台はシンフォギア2

それにしても妙に眠い。
睡眠時間も少ない状態で、酒をあれだけガバガバ飲んだのだ。

九千五百円目で何とか揃うも単発。
気付くとハンドルを回しながら寝落ちしていた。
馬鹿タレ、シャキッとしろ。
これから茶髪女を抱くんだろうが……。

次もまた当たりが来るも単発。
茶髪女から連絡が入る。
池袋へついたらしい。

そうこうやり取りしている間に、また当たりが揃い連荘モード突入。
嬉しいけど場面が悪いな……。

時間を少し過ぎていたが、せめてこの連荘が途切れるまでは打ちたい。
十分ほど過ぎ、相手が会わないなら帰りますと連絡が来た。
性欲のほうが大事だろと、自分に言い聞かせ、シンフォギアを辞める。

結局約一万円が、二万五百円とセブンスター十個になった。
ただしこの店はボックスを扱ってなく、ソフトのセブンスターなのが不満である。

北口近くで待ち合わせ、実際に会うとそこそこいい女だった。
手慣れた感じで茶髪は西口繁華街にあるラブホテルへ入る。

目の前で裸になり、小ぶりのおっぱいが見えた。
俺が触ろうとすると「焦らないで」とヒステリックに声を出し、一人で勝手にシャワーを浴びに行った。
一緒に入ろうとするも、断られる。
何だか想像していたのと違うな……。

シアリスでギンギンに元気よくなっている息子。
早くコレをあの女へ突っ込みたい。

女が出てくると、シャワーを浴びベッドへ向かう。

「焦らないで」と俺の息子を咥える女。
大の字になっていたせいか、強烈な睡魔に襲われた。

気が付くと、目の前で茶髪が下着をつけている。

「おい、何やってんだよ?」
「寝ちゃってさ、反応もないし。もう私、帰るから。早く二万頂戴」

「はあ? おまえ、何言ってんの?」
「寝たのはそっちでしょ? 早くお金頂戴よ!」

何てがめつい女だろうか。
確かに裸も見たし、チンコも咥えた。
だが、俺は入れてなければ射精もしていない。
まあまけろとも言えないこの状況。
仕方なく財布から二万円を渡す。

「じゃあ私行くから」

「おい……」
「何よ?」

拳でホテルの壁を力いっぱい殴りつけ威嚇する。
傷つけるつもりはないが、この女の舐めた対応がムカついたのだ。
金を受け取っておいて、その偉そうな態度はないだろう。
少しだけビビらせようと思った。

「あんま男舐めてんじゃねえぞ? おい」

「な、何よ…。な、殴るつもり?」
「女なんて殴らねえよ! ただな、そのクソ生意気な態度、気をつけろ」

「そ、そっちもね……」

コイツ、こんな密室で何故まだ強気なんだ?
バックに暴力団でもいるのか?

「おい、おまえさ…、バックいるんなら、今ここへ呼んでもいいぞ? そんなのいても、まったく関係ねえって男がいるのを教えてやるだけだからよ」

「……」

自分で脅しておきながら、二万円も払って一体何をしているのか?
面倒になった俺は、女を追い払うように部屋から追い出した。

そして一人でエロビデオを観て、射精してからホテルを出る。

強烈な自己嫌悪の一日。
素直に神田と会ったあと、ウサギ小屋で大人しくしていればよかったのだ。

また明日から容赦なくいつもの日常が始まる。


二千二十一年一月二十九日、金曜日仏滅。

昼になり、出勤前に大明飯店へ行く。

2021/01/29 新大久保 大明飯店

酢豚定食を食べながら、昨夜の一件を思い出してしまう。

素直に風俗行けばよかったのかな……。

暗い気分のままレディへ出勤。
店長の斉木が誕生日だったようだ。
彼には日頃お世話になっているし、昨日パチンコで取ったセブンスターのソフトでも明日持っていこうかな。

どうしても茶髪女の事を思い出してしまい、悔しい気持ちになる。
明日の三十日は全員出勤になっていたので、斉木に休んでもいいか聞いてみた。

「え、岩上さん、昨日休んで一日だけ出てまた休みでいいんですか?」
「ええ、ちょっとリフレッシュしたい心境でして」

こうして急遽俺は明日を休みにした。


二千二十一年一月三十日、土曜日大安。

歌舞伎町も大久保の街も、俺を癒してなどくれない。
そんな訳で、夕方までゴロゴロしてから久しぶりに川越へ向かう。

本川越駅に到着し、中央通りを歩く。
閑散とした人が誰もいない道路。
まだ夕方の六時だぞ?

2021/01/30 川越 中央通り

うーん、川越も街が死んでいるなあ。
大久保より酷い。

当然営業している店も少なく、俺は実家の近くの二十四時間スーパーのマルエツで食材を買う。
一体何をしに地元へ戻って来たんだか……。

酒を飲み、冷たい弁当を食べながら、そのまま自分の部屋で寝た。


二千二十一年一月三十一日、日曜日赤口。

朝までゆっくりしてから大正浪漫通りのシマノコーヒー『大正館』へ顔を出す。

2021/01/31 大正浪漫通り シマノコーヒー大正館

ヤスのカガヤカフェができてから、この店もかなり行く回数が減ってしまったものだ。

2021/01/31 大正浪漫通り シマノコーヒー大正館

喫茶店としての完成度も料金的にも、断然こちらの大正館のほうがいいのに、申し訳ない気持ちになる。
ランチのヤキサンドセットを注文。

2021/01/31 大正浪漫通り シマノコーヒー大正館

まあこっちは最近テレビ取材なども増え、行列ができるようになったと聞く。
先輩として、暇な後輩の店を支援するつもりで選ぶのはしょうがないか。
それに加賀屋のおばさんの顔もある。

まだ昼前だったのでパチンコ屋パラッツォへ入り負け。
中央競馬に手を出すも負け。

イライラしながら店を出て、ゲームセンターでUFOキャッチャーをした。

2021/01/31 クレアモール ゲームセンター

タコ焼きキャッチャーという当たりゾーンに入れば景品をゲットという台があったので、早速やってみた。
ピンボールを拾い、タコ焼き機の穴目掛けて落とすが、当たり穴以外には山のようにボールが積み重なっているのに跳ねてしまい全然入らない。

2021/01/31 クレアモール ゲームセンター

本当に酷いな、この白い穴に入る確率……。

2021/01/31 クレアモール ゲームセンター

千円以上使わないと、景品をゲットできなかった。
やるんじゃなかった。

少し違う。
それを言うなら、競馬、パチンコ、UFOキャッチャーすべてやらなきゃよかったんだ。

そのまま新宿へ戻り、斉木へあげるセブンスターをアスクルームへ取りに帰り、出勤するとタバコをUFOキャッチャーで取った景品と一緒に「誕生日おめでとうございます」と手渡す。

「え、そんな気を使わないで下さいよ、岩上さん」
「バラですけど、ちゃんと十個ありますから。日頃からお世話になっているんで、ただの気持ちです」

こうして二千二十一年の一月は終わった。



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